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第11回 テレビ東京「てれとらんど」 ブログパーツ提供サイト制作レポート
「てれとらんど」を始めた経緯
テレビ東京のてれとらんどは、自社が放送する番組をゲーム化したブログパーツを多数公開しているポータルサイトだ。こうしたサイトを持とうと考えた経緯について、デジタルコンテンツ制作部の斉藤郁氏はこう語る。「元々は弊社の『TVチャンピオン』という番組のホームページに、番組の宣伝目的でゲームのブログパーツを置いていたんです。毎週毎週増やして行き、ゆくゆくはそこから収益も上げるということが目標でした。でも結果、ほとんど利用されないという有様で。」 テレビは自らのメディアパワーを使って認知度を上げるという点では、今でも大きな強味を持っていることは間違いない。しかし、Webというメディアは、テレビ局にとってなかなか思うように使い切れない難しさも存在するようだ。
「弊社にはフジテレビさんの『お台場ランド』のように、バーチャルとリアルを連動させるような楽しさをWebで展開するリソースも経費もない。そんな中で作るゲームサイトの目的と言えば、どうやったら番組を効率よく宣伝できるかという視点を取り込むことです。そのためにはやはりある程度の数がそろわないと、プラットフォームとしての機能は持ち得ないので、できるだけ同じ仕様で、バラエティに富んだものを用意しようと考え、このような形になりました。」
なぜゲームのブログパーツなのか
元々は「テレビのエンタテインメント性をWebの中で伝える」ためにゲームを選択したわけだが、「てれとらんど」では、これをブログパーツとして提供することにより、Webならではのユーザ参加型の仕組みをテレビに取り入れていくということも念頭にあったようだ。「テレビは基本的にプッシュ型でコンテンツを一方的に放送するというスタイルなので、これを変えるとするなら、ユーザが参加して楽しめる「ゲーム」という形だろうと考えました。またインターネット上のユーザ、特にブログを書いている/読んでいる何百万というユーザの方々にテレビの番組を宣伝していくには、少しでも番組の楽しさを味わってもらえるゲームで、しかもそれをブログに貼り付けたりして友だちに教えてあげることができるブログパーツという形で提供することが、われわれが目指している方向に最も即しているのではないかと。」
短期的には「てれとらんど」でゲームを提供してそれに熱中されてしまうと、逆にテレビを見る時間が減ってしまうという考え方もある。しかし、こうした危惧は、将来的なテレビとインターネットとの関係をどのようにしていくかという枠組みの中では、それほど大きな問題ではないという。
「われわれは番組の宣伝だけではなく、ネットユーザが楽しんでいるものを知ること、そしてそれをテレビの世界にフィードバックすることも目的としています。また、ゲームに熱中させてしまうようなテレビのままでは、結局のところ先はないというコンテンツプロバイダとしての自負もありますので、その点は問題ないと考えています。」
現状はテレビ局が「インターネットの世界に半歩踏み出す」という取り組みの中で、「まだまだこの程度のものじゃダメだ」という認識をしている段階であり、むしろもっと本気でコンテンツをインターネットに出していく考えもあるようだ。
「例えば『ポケットモンスター』のブログパーツなどを出せば、世界的にも大きな反響を得られるでしょうし、国内ならアナウンサー関連のコンテンツなどを出せれば、相当なアクセス数を獲得できると考えます。こうしたものを組み合わせることによって獲得したトラフィックを、他の番組の宣伝につなげることができればと考えています。ただし、コンテンツの二次利用に関するレギュレーションなどを整備する必要もあるので、一気には進められませんが。」
「てれとらんど」のこだわり
同じくデジタルコンテンツ制作部の中島漢氏は、提供しているゲームの中で「田舎に泊まろう!」を挙げ、「番組の内容に即した形で、ゲーム性の部分でも面白いものになった」と自信をのぞかせる。斉藤氏は「飛べ!アノマロくん」を挙げ、番組中で使われているキャラクターをそのまま使ったゲームの意義を強調した。どの程度のコンテンツまでを提供可能かは、現在のところ番組の制作形態やプロデューサーにより対応がまちまち。したがって、社内的な調整の部分も大きなポイントとなっているようだ。また、トップページから「English」を選択すると、すべてのゲームで英語の解説が表示されるようになっている。ここには大きなこだわりがあった。
「放送と違ってインターネットには垣根がないので、世界という視点を意識し、海外にもアピールするものをという戦略を持っています。日本の全世帯に対して、われわれテレビ東京系列の(放送)ネットワークのカバー率は67.4%と、他のキー局さんと比較して一番低い。これは逆に言えば、インターネットの世界に出て行くことが一番メリットになるということでもあります。また、弊社は世界的にも大きな影響力を持っている『アニメ』をコンテンツとしてたくさん持っているので、海外の方にサイトを訪問していただく機会も多いのではないかと。」 こうしたことを背景に、サイトのビジュアルも「ネオジャパネスク」をテーマとしたデザインを目指し、ランキングも地域別と世界番付という2本立てとなった。こだわりを実現する上で、苦労した点も尋ねてみた。 「まずランキングのサーバ負荷にはかなり気を遣いました。また、デザイン自体は考えていることの8割くらい実現できているかなと思いますが、動きが多いサイトなのでFlashが非常に重くなってしまい、ユーザビリティを確保するのにかなり苦労しています。」
特にテレビの視聴者層がターゲットなので、サイト構築の上ではインターネットのライトユーザ層の利用が大前提となる。リッチなコンテンツを目指しつつも、サイトのわかりやすさやページの軽さとのバランスを考えねばならず、これは大きな課題のひとつとなっているようだ。
「てれとらんど」の現状と展望
「てれとらんど」の企画がまとまったのは2007年の12月。現状ではアクセス数もまだまだで、まずとにかく認知を広げていくことが急務となっている。しかし、元々魅力的なコンテンツを多数抱えているテレビ局だけに、今後の展開次第で大きな影響力を発揮する可能性は十二分に持っていると言える。「現状のてれとらんどは番宣を目的としているが、実はまだ『開運! なんでも鑑定団』や『出没!アド街ック天国』といった、弊社の看板番組のコンテンツが入っていない状態です。これらが一通りそろったところで、もう一度全体的なデザインや使い勝手などをソフィスティケートさせた上で、大々的に展開していきたいと考えています。また、テレビ東京はアナログ放送では12チャンネルですが、地上デジタル放送では7チャンネルです。そこで今後、毎月7日をフィーチャーして認知度アップのキャンペーンを行なう予定がありまして、この『てれとらんど』が宣伝に使われるようなことも想定しています。せっかくランキングもありますので、賞金や賞品を出してトーナメントみたいなこともできればと。」
将来的には番組そのものを視聴できるウィジェットの提供なども視野に入れているという。
「気に入った番組を確実に視聴者に見てもらえるというのは大きなことですし、その上で制作費を回収できるような新しいビジネススキームを作っていくことも、当然考えていかなければならないと思います。例えば、テレビではコンテンツにならないカメリハなんかも公開すれば、それがコンテンツになってしまうようなこともあり得ますよね。また『どうせこんな時間じゃ誰も見てくれない』なんて思っている深夜番組のプロデューサーにとっても、制作のモチベーションも上がるという良いフィードバックがあるかもしれない。」
こうしたビジョンを実現するためにも、やはりテレビ放送とネット配信の権利処理の問題は、解決していかなければならない問題だ。新しい取り組みに向けて、テレビ局自体も積極的に大きな変化を遂げようとしている。 「われわれデジタルコンテンツ制作部としては、テレビとWebは限りなく連携していくだろうと感じているんですが、まだまだ全体としてはそうした認識には至っていない部分もあるので、社内的な周知も重要になると思います。ただ、弊社は他局さんと比較すると守るべきものは少ないですし、常に新しいものにチャレンジしていかなければならないという意識は社内全体にありますから。」
テストケースではあるが、かなり先進的な試みも貪欲に行っている。
「先日、世界卓球2008を放送した際に、168時間連続で卓球をやるというイベントを開催しまして。Microsoftさんの『Silverlight』を使って、同時にこのイベントの168時間ストリーミング配信をやったんです。実はその時に配信映像をデスクトップで再生できるガジェットも作っていたんです。ところが、それは結局間に合いませんでした(笑)。」
試行錯誤の中、「てれとらんど」で新しいインターネットというメディアとの関係を模索するテレビ東京。あらためて、その目指すところを尋ねてみた。
「やはり究極の目標は、インターネット上にマルチチャンネルを持つこと。しかもライブ配信も可能にして。放送がウインドウになり、ネットでじっくり見る。そんな番組もどんどん出して行きたい。とにかくインターネットを上手に使っていけるテレビ局になっていければと思います。」
彼らの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
プロフィール:
斉藤 郁
株式会社 テレビ東京
メディア事業推進本部 デジタル事業推進局 デジタルコンテンツ制作部 副部長 ホームページ編集長
兼務 経営戦略局 新規事業担当
営業、番組・アニメ制作を経験し、コンテンツ事業部で「遊戯王」等のアニメ番組の海外展開及び出資ドラマを担当した後、デジタルメディア開発に異動。社内のデジタル関連業務を整備し、07年7月からテレビ東京及びBSジャパンのホームページ編集長。「くさらないコンテンツの開発」をテーマに「アナウンサーブログ」「日本一の腹筋コンテスト」「柔道奥義全55技」「てれとらんど」「168時間卓球リレー」を企画。只今「デジタル7チャンネル」の認知度アップと収益性を目的とした本格的「ゴルフゲーム」を準備中。
中島 漢
株式会社 テレビ東京
メディア事業推進本部 メディア事業推進局 デジタルコンテンツ制作部 HP編集員
番組制作現場をアシスタントディレクターとして経験後、テレビ局のメディア事業を推進する現職場へ異動。テレビ東京HPのWEBディレクター業務をメインとしながら、『世界卓球応援イベント168時間卓球リレー』などのイベント業務・ギネス申請から、番組公式ゲームサイト『てれとらんど』の制作・PR運営など、WEBコンテンツ開発を行う。2011年の地上デジタル化に向け、次の一手を模索中。
斉藤 郁
株式会社 テレビ東京
メディア事業推進本部 デジタル事業推進局 デジタルコンテンツ制作部 副部長 ホームページ編集長
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