労組や市民グループが昨年末、東京・日比谷公園に開設し、失職した派遣労働者らを支援してきた「年越し派遣村」が、30日で活動を終えることになった。28日に東京都墨田区で開かれた「『派遣村』全国シンポジウム」で「入村者の生活が安定してきた」として実行委員会が月内の解散を表明した。村長を務めた湯浅誠さん(40)は「今後も暮らしやすい社会に変える活動を続ける」と述べた。
シンポジウムには、派遣村の活動に賛同し、北海道から鹿児島まで全国各地で同様の課題に取り組む12の実行委員会の関係者ら約500人が参加した。東京以外の実行委は今後も活動を続ける予定。
湯浅さんはあいさつで、派遣労働者の大量失職など労働市場が劣化している実態を挙げ、「派遣村の活動で、労働問題と生活保護の共同が重要だと分かった。セーフティーネットが機能せず貧困のサイクルから抜けられない現実がいまだにある」と述べ、村の意義と社会的な取り組みの必要性を訴えた。
アルバイト先に解雇されて野宿生活に陥り、岐阜県のサポートセンターで支援を受けた20代の男性は「自立するための一歩を踏み出させてくれた。こうした支援の場所が全国に必要だ」と強調した。
東京の派遣村が今月実施した元村民260人へのアンケートによると、回答のあった108人の8割が生活保護を受けていた。就職できたのは13人にとどまっており、55人が就職活動を続けている。残りの40人は病気療養中などだった。多くが生活保護制度を利用して当面の生活を安定させつつも、相変わらず仕事探しに苦労している実態が浮かぶ。
東京の実行委は、年末年始の活動が一段落した後も、生活保護の受給申請や職探しなどの支援を行ってきた。5000万円を超えるカンパがあり、2000万円余りの残金については、弁護士や学識経験者5人で作る有識者会議に活用や管理を委任するという。【東海林智】
毎日新聞 2009年6月28日 20時10分(最終更新 6月28日 21時58分)