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2006年 06月 03日
ワシントン・古森義久 「東アジア共同体」構想という妖怪がアジアを徘徊(はいかい)している-。 やや陳腐な形容かもしれないが、マルクスの「共産党宣言」の表現がつい連想されてしまう。いまや日本の外交課題として浮上したようにみえる東アジア共同体という言葉はその実態を知ろうとすればするほど、奇々怪々な側面が影を広げる。実態がどうにもつかめない。だから妖怪などという形容が頭に浮かぶのである。 ワシントンで最近、東アジア共同体なる構想についていやでも真剣に考えさせられる機会があった。十一月中旬に開かれた米国民間のアジア研究機関主催のセミナーでこの構想に米側の学者らから鋭い批判が浴びせられたからだ。 「東アジア共同体というのが当面、貿易や投資など経済面での地域統合を目指すのならば、なぜアジア太平洋経済協力会議(APEC)ではいけないのか。背後に米国やオーストラリアをアジアから排除する意図があるからではないのか」 (ジョージワシントン大のハリー・ハーディング教授) 「いまの構想では米国、オーストラリア、ニュージーランド、台湾を排除し、排他的方向に動いており、このままだとその『共同体』は中国のパワーに圧倒されてしまう恐れが強く、米国としては座視できない」 (外交評議会のエドワード・リンカーン上級研究員) では東アジア共同体とは何なのか。明確な定義はその構想を推進する中国や日本の当事者たちの発表をみても出てこない。文字どおりに解釈すれば、東アジアの諸国が一つの国のように統合しての共同社会ということになろう。日本での東アジア共同体評議会の第一回会合に外務省を代表して加わった田中均外務審議官らの説明では、中国、韓国、日本に東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国などが国家間の垣根を下げて、経済、社会、文化、ソフトな安全保障などを共通にする東アジア地域社会を共同体としてつくることだという。 アジアではすでに日本がシンガポールとの間で結んだ自由貿易協定(FTA)の拡大が始まった。その延長としての東アジア自由貿易圏という構想も考えられる。さらには経済の交流をもっと進める東アジア経済地域統合も目標としてはありうる。だが「共同体」となると、単に国家間の物と人の流れを自由にする経済統合を超えて、参加各国がもっと単一性を強める、つまり一つの国家のようにさえなる状態が当然、意味される。 東アジア共同体の構想を唱える側がよく類似例にあげるのは欧州連合(EU)である。周知のように西欧諸国は国家の主権を大幅に削り、国境をなくし、単一のコミュニティー(共同体)をつくり、通貨の統合から外交、安全保障の統合にまで進み、連合を結成した。 東アジア共同体の構想も理論的な目標としてはこの欧州連合と同じだと思える側面が多々ある。違うのだと明確に否定する当事者も少ない。まして中国がこの構想を「東亜共同体」と記すのをみると、日本を中国などと単一の国家連合にすることが最終目標のようにみえてくる。日本と中国が一つの国家ふうの共同体となるというのなら、これは大変な事態である。日本という国家の在り方の根幹にかかわってくる。 現に欧州をみても各国が共同体や連合へと進むには、国をあげての議論に徹し、議会で審議し、表決し、さらに国民投票までを経た末だった。いわずもがな、各国はみな民主主義や法の統治を確立し、文化や宗教を共有し、領土紛争がない。だが日本ではいま国論と呼べる議論さえないまま、中国と同じ国になるにも等しい重大な構想が前進し始めているのだ。そもそも世界貿易機関(WTO)から市場経済の認定も得られない中国とは自由貿易協定さえ困難である。発展段階のまるで異なる複数の経済地域がどう一つになれるのか。自国内で移住の自由がない中国からの人の流れを日本はどんな理屈で自由に受け入れるのか。米国との経済のきずなはどうなるのか。 さらに重要なのは安全保障である。核兵器を保有する中国との共同体は日本にとって軍事大国へ吸収されるに等しい。日本を守る最大手段となってきた日米同盟はどうなるのか。そして尖閣諸島の領有権での日中両国の衝突、靖国問題に象徴される両国間の価値観や世界観の天と地ほどの断層、その背後にある中国側の国民にしみついた反日の思考と感情はどうするのか。この種の疑問は共同体構想をまじめに考えれば考えるほど数が増えていくようなのだ。 ※全く関心がなかったが、この文章を読んでぞっとした。1993年、中国の李鵬首相はオーストラリアの首相との会談の中で、「日本などという国は20年たったら消えてなくなっている」と揚言していた事を改めて思い出した。この言葉はずっと頭にこびりついていて、中国や韓国との関係を考える時、常にこれを意識しながら眺めていたが、上記の記事を読んで、背中に冷たいものが走った。獅子身中の虫として国内には在日問題があるし、中国とは国民のほとんどが全く知らない構想が着々と進んでいたのだ。鼻で笑って済む事ではなくなってきたぞ。 Tags:我が国の情けなさ
by sakura4987 | 2006-06-03 10:21 | ■東アジア共同体
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