「「台湾に全く無関心な日本国民?」について」について にたいして、罵愚氏より次のようなコメントが寄せられた。貴重なご意見として拝聴したい。 ひとつ事実関係だけを確認させていただきたいのですが、キッシンジャーの罵倒発言のニュースソースはどちらでしょうか?というのも、田中角栄の失敗の原因こそ、キッシンジャーの隠密外交であって、キッシンジャーが事前に田中に耳打ちしておいてくれれば、日中共同声明は、相当、色あいのちがった仕上がりになっていたと思われる。キッシンジャーには、それを言う資格がないと思うのですが… 罵愚 2007/04/06 04:48 以下はこのコメントに対する返答である。 キッシンジャー氏の発言のニュースソースについては、 (1)06年5月28日朝日新聞朝刊の記事および (2)ネット上の記事「1972年キッシンジャー、日中正常化を蔑称で非難」 http://www007.upp.so-net.ne.jp/snakayam/topics_48.html を参照されたい。 キッシンジャー氏が隠密外交をしたかどうかは、よくは知らないが、1972年当時の日米間の双方の話し合いが余り緊密でなかったように思われる。1953年に朝鮮戦争が終わり、東西冷戦は1990年頃まで続いた。1972年と言えば、東西冷戦の最中である。こういうう時代的背景もあって、当時、米国の外交は秘密外交の気味があったのではないか。それに外交を預かる人物の個性と言うものがある。当時、米国の外交の担当であったキッシンジャヤー氏は日本の担当者にとって近づきにくい存在であったのかもしれない。 さらに考えられるのは、日本側の語学力の問題がある。最近は、首脳外交が盛んに行われるが、当時はそうではなかった。田中首相や大平外相の語学力はどの程度のものだったのであろうか。日米両国間の風通しが悪かったのは語学力のせいであったのではないかとも疑われる。キッシンジャー氏も後で気がついて怒りを表す前に、日本ともっと風通しを良くしておくべきであった。 なお、ここで参考までに、上記(1)の内容を紹介する。 ニクソン米大統領の中国訪問など1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官が1972年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り、「Jap(ジャップ)」との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難したことが、2006年5月26日に解禁された米公文書で判明した。<中略> ハワイで日米首脳会談が行われた時の、米国部内協議メモ((1972年8月31日付極秘メモ))によると、キッシンジャー氏は、部内協議の冒頭で、「裏切り者の中でも、Jap が最悪の裏切り者だ」と酷評した。 続いて、中国との国交正常化を伝えて来た日本の外交方針を「品のない拙速さ」と批判し、日中共同声明調印のために田中首相が中国の建国記念日に合わせて訪中する計画を非難し、首相訪中に関する日本からの高官協議の申し入れを拒否した とのことである。 1972年に行われた日中共同声明に対し、キッシンジャー氏で代表される米国が、いかに衝撃を受けたか、よく分かる。 なお、筆者は、この件に関連して、日中共同声明がいかに失敗であったかを何度となく、このブログ記事で主張してきた。下記はその一部である。関心のある方はご一読願いたい(なお ITUKYUU氏の記事が1件含まれる。同氏のご了解を得たい)。 (ア)自由の翼ITUKYUU 「日中共同声明とは何だったのか?」についてhttp://itukyuu-wb.at.webry.info/200607/article_100.html (イ)日中共同宣言の台湾条項解釈を修正せよ http://mikitogo.at.webry.info/200605/article_15.html (ウ)日中共同声明とは何だったのか?http://mikitogo.at.webry.info/200607/article_17.html 長文の記事を最後までお読み頂き、有難うございました。 「日中共同声明」問題理解のために―資料と解説 (1975年)
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陳水扁・台湾前総統の逮捕は何を意味するか?
陳水扁・台湾前総統の逮捕(注) 陳水扁・台湾前総統の逮捕は、国民党政権の民進党への圧力と見るよりも、馬政権の中国政府への接近ではないかと考える見方ができるかもしれません。裏に中国の画策があり、中台合併の伏線であるとの見方ができるような気がします。そうでないかもしれませんが、そうであるかもしれません。 ...続きを見る |
東郷 幹夫の思いつくまま日記 2008/11/13 05:28 |
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米国、尖閣諸島を日本領土として認識済み!
筆者は先の記事 『オバマ政権は日米同盟と領土問題をどう考えるのか? ( 作成日時 : 2009/02/27 20:40 )』 で、米国務省は、これまで「日米安保条約は日本の施政下にある領域に適用され、尖閣諸島にも適用される」との見解を発表していた。にもかかわらず米国務省に対し、日本政府が、この考えを再確認したところ、昨年の12月以来、明確な返答が返ってきていない。<中略>竹島と言い、尖閣諸島と言い、米国は日本にたいして、完全に禁反語則を犯している。韓国や中国のことを慮ってのことであろうが、... ...続きを見る |
東郷 幹夫の思いつくまま日記 2009/03/08 17:54 |
内 容 | ニックネーム/日時 |
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『ニュースソースはどちらでしょうか?』との罵愚氏の問いに対し、東郷先生の確かな情報源には驚きました。その上、詳細な解説付きで解りやすく述べる姿勢には人間性と共に誠実さを感じました。 |
桜草 2007/04/07 09:59 |
桜草 様 |
東郷 幹夫 2007/04/07 17:25 |
もと記事のコメント欄しか読んでいなかったので、TBをいただいたのを知らずにおりました。失礼をお詫びいたします。 |
罵愚 2007/04/10 06:30 |
議論の本題は、キッシンジャー氏が外交的手腕、特にアジア外交に対して手腕があったか否かを論じているのではなく、1972年の日中共同声明が、特に台湾問題について、半ば中国に屈服したと取られかねない内容を含んでいる点にあると思います。 |
東郷 幹夫 2007/04/10 21:37 |
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