女優の酒井法子容疑者ら芸能人が覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕される中、警察庁がまとめた今年上半期(1?6月)の薬物情勢は、大麻や覚せい剤による薬物汚染が日本社会に深く根を広げている実態を浮き彫りにした。
大麻の密売や所持などで摘発された人数は、前年同期を約2割上回る1446人で、上半期として統計の残る1991年以降で最多。このうち20代以下が6割以上を占めた。
大麻には強力な精神毒性があり、覚せい剤など依存性の強い薬物への入り口となる。安易に手を出す風潮が若者に広がっているとしたら問題だ。
インターネットで大麻種子が簡単に入手でき、栽培方法などの情報も得られることが若者が安易に手を出す原因だろう。ネット取引の監視を強化し、規制の在り方を検討すべきだ。
一方、覚せい剤で摘発されたのは前年同期より13・1%減の5384人で、合成麻薬MDMAは55・9%減の52人だった。摘発は減ったが、覚せい剤の末端価格が下がっており、実際の供給量は増えていると警察庁はみている。
芸能界関係者の覚せい剤使用への罪悪感が希薄なことも大いに問題がある。特に青少年への悪影響が懸念されるだけに、その責任は重い。芸能界は薬物汚染の一掃と再発防止に真剣に取り組まねばならない。
岡山県で今年1?7月に覚せい剤がらみで摘発されたのは90人で、前年同期を3割余り上回った。大麻、MDMAの乱用も依然として後を絶たない。一層の啓発活動強化とともに、学校などで薬物中毒の恐ろしさを教える機会を増やすことも求められる。厳罰化も視野に、社会全体で薬物は許さないという姿勢を示すことが重要である。