楽天問題 |
ちょっと沖縄の話題から離れます。 みなさんは今、楽天トラベルと全国の旅館・ホテルの間で大変な争いが起こっていることをご存じですか?(争いと言うとちょっと語弊がありますが) 楽天トラベルはご存じあの「楽天」の子会社で、ネットで宿泊予約が出来るサービスを提供している会社です。 事の発端は5月中頃に突然楽天トラベルが「新契約説明会」を開くと言ってきたことに始まります。 「新契約ってなに?聞いてないよ。」というのが施設側の最初の素朴な感想です。いざ蓋を開けてみれば、手数料率の値上げと客室のブロック提供を要求する内容の契約に切り替えるという話でした。 用語について順番に説明します。 まず手数料率についてです。楽天トラベルは楽天トラベルを通じて宿泊予約を行った場合に、成約した宿泊料金に対して一定の率で手数料を得ることで利益としています。 楽天トラベルに限らず、じゃらんネット、一休、宿ぷらざ、ベストリザーブと言った宿泊予約サイトのほとんどは同じようなシステムとなっています。 普段お客様の方ではほとんど意識されていないと思いますが、例えば手数料率8%のサイトを通して10,000円で予約した場合、お客様が旅館・ホテルで支払った10,000円のうち8%にあたる800円を旅館・ホテルはその予約サイトに支払っています。ですから、おなじ10,000円のご宿泊でも電話や自社サイトから受けた予約と、宿泊予約サイトを通してお受けしたご予約では手数料分、利益に差が出ます。ですから宿泊施設はこういったサイトを通しての予約よりお電話かオフィシャルの予約サイトからのご予約の方がうれしいのです。 その上、こういった予約サイトはポイント割引の制度を設けている場合があり、宿泊料金に応じて貯まったポイントで宿泊料金の割引が出来ます。しかしながらこの割り引かれた金額は旅館・ホテル側の負担になり、手数料とあわせると利益が激減することがあります。 では、手数料や割り引かれる分、予約サイトの料金は少し高めに設定すればいいじゃないかと思われるかもしれません。 ・・・そんなこと許してくれますか? ネットの方が割高なんて通用しないですよね。何故だか分かりませんが、むかしからネットの方が割安に設定することが慣習のようになっていますよね。すでに今の時代、ネットが利用できないと困るのは消費者の方ですから、場合によってはネットの方が割高でもおかしくないと思います。 ネットで買い物や宿泊の予約をするのは、仕事をしている人間にとっては(そうでない人にとっても)非常に便利ですよね。 次にブロック提供について説明します。客室のブロック提供とは1日あたり何室と決めて、その室数は必ず確保しておく約束をすることです。例えば楽天トラベルに1日5室ブロック提供をする場合、毎日5室は楽天トラベル用に確保しておかなくてはなりません。楽天トラベルから予約が入っても「入らなくても」です。このブロック提供についてはJTB等のリアルエージェントとは昔から契約を交わしています。しかし、これも長年に渡って宿泊施設の販売機会を阻害する要因となっており、大きな問題の一つとして争われいます。 不思議なことに日本ではこのブロック提供がまかり通ってしまっているのです。アメリカなどではまず、旅行業者が宿泊施設から部屋を買い取り、それを好きな価格で販売するのです。とても分かりやすい方法です。 日本では業者が施設に客室を安価な料金設定で提供させ、売れなかったら売れなかったよと返されるだけで何の保証もありません。 施設の方で売る機会があったとしても、ブロック提供している分は販売できず、お客様を逃します。 で、楽天トラベルはこれら宿泊施設の利益に関わる重大な2点の変更を唐突に突きつけてきたのです。これに全国の旅館、ホテルが猛反発しているわけです。今回これほどの反発があったのには伏線もあります。楽天のやりかたの問題です。いつも性急で一方的なのです。まったく施設側の心情を理解しようと言う気配がありません。 まず動いたのは全国旅館衛生同業組合連合、略して全旅連(ぜんりょれん)の近畿支部です。関西の支部だけあっていつも「いちゃもん」をつけるのは速攻です。 当館の社長も近畿支部の理事として、動きに加わり、全国で新契約説明会が始まってすぐに楽天トラベルの副社長と面談しています(社長は説明会のため出席せず)。 ネットエージェント(宿泊予約サイト)の良さは、手数料率の低さと、客室提供の利便性(ネット上でいつでも提供客室数の管理が出来る)にありました。今回の契約変更ではこの2点ともが失われ、リアルエージェントと何ら変わらない業者になってしまいます。 その後この問題は全旅連でも全国まで話が行き渡り、結論として楽天トラベルに対抗するため、全旅連は(株)リクルートの「じゃらんネット」とライブドア傘下のベストリザーブと業務提携をすることとなりました(正式にはリクルートとはまだ)。先日ベストリザーブとの業務提携については新聞等でも報じられ、楽天トラベルの株価は下がり、ライブドアの株価は上がると言った現象もおきました。 楽天トラベルとは今後とも社長および副社長と全旅連の役員レベルで話し合いが続けられます。 なんて事をしていたところで、またとんでもない問題が発覚しました。 楽天トラベルが各施設の日本語ドメインを勝手に取得し(しかも登録者の名義はその施設)、すべて楽天内のページへリンクするようにしていたのです。 楽天はあほじゃないでしょうか? 例えば、当館も「鴻臚.jp」で勝手に登録されています。登録者は旅館鴻臚(こうろ)となっています。うちがそんな登録をしたかと言うと、していません。 これについては法的に許されるのかどうか、全旅連の顧問弁護士に相談中のようです。 |
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