西日本新聞

外交・安保 ごまかさず明確に主張を

2009年8月21日 10:35 カテゴリー:コラム > 社説

 ■2009総選挙■

 国民の安全と平和な暮らしを守ることは、国家の要諦(ようてい)である。外交や安全保障政策はそれを実現するためにある。

 今回の衆院選は、次の政権を選択する選挙だといわれる。ましていま、隣の国では、核実験や弾道ミサイル発射といった物騒な動きが続いている。外交・安保の重みはいやが上にも増す。

 どのようにして国民を守り、平和国家として世界に貢献するのか。言い換えれば、これからの日本の針路はどうあるべきか、真剣に議論すべき時である。

 しかし、自民、民主二大政党のマニフェスト(政権公約)を見ると、国民生活に密着した経済や社会保障の施策は盛りだくさんだが、外交・安保分野は抽象論にとどまり、世論を二分する論点はあいまいにしている印象を否めない。

 自民党は、北朝鮮の核・ミサイル問題を踏まえ「米国に向かう弾道ミサイルの迎撃や、ミサイル防衛で連携する米国艦艇の防護などが可能となるよう、必要な手当を行う」と公約した。

 自衛隊が外国に向かうミサイルを撃ち落としたり、外国軍の艦艇を守ったりすることは、憲法上許されない集団的自衛権の行使に当たる恐れがある。それが現在の政府の解釈である。

 自民党の公約は、この憲法解釈を変えようという意図がうかがえる。だが、ことは戦争放棄、戦力不保持を掲げた平和憲法の根幹にかかわる話だ。憲法解釈を見直すのならば、マニフェストにそう明記し、きちんと説明すべきであろう。

 また、政府の有識者会議が今月、集団的自衛権の解釈変更や武器輸出三原則の緩和、敵基地攻撃能力保有の検討などを提言した。自民党の意向を踏まえた内容で、年内に改定する「防衛計画の大綱」に反映させる方針だ。

 いずれも極めて重要な問題である。総選挙の公約とし、国民的な論議を深めるべきではないのか。北朝鮮の脅威に対抗するという形をとりながら、なし崩し的に安全保障政策の大転換や自衛隊の役割拡大を図ろうというやり方は、ごまかしと言われても仕方なかろう。

 一方、民主党が公約で示した外交・安保政策は、不十分、不明瞭(めいりょう)と言わざるを得ない。「緊密で対等な日米同盟関係をつくる」とするが、従来の自民党外交とどう違うのかよく分からない。

 民主党はインド洋での給油活動に反対し、安倍、福田内閣を追い詰めた。しかし、マニフェストには何の言及もない。鳩山由紀夫代表は、政権交代後も給油活動を続けるとしていたが、連立を想定する社民党の反対で、来年1月の特措法期限切れで終了すると表明した。

 小沢一郎代表代行は代表当時、給油活動を違憲とし、対案として国連決議に基づいて自衛官のアフガニスタン派遣を提唱した。それはどうなったのか。

 自衛隊の海外派遣、国際貢献のあり方について、党としての理念や戦略を描き切れていないのではないか。

 抜本的見直しを主張してきた日米地位協定も、米国への配慮からか、「改定を提起する」にトーンダウンした。

 政権運営を視野に入れた「現実路線」と言えば聞こえはいいが、やっかいな問題は先送りしたとしか思えない。

 繰り返すが、外交・安保は国の要諦である。ごまかしや先送りは許されない。総選挙で堂々と主張し、国民の審判を仰がねばならない。

=2009/08/21付 西日本新聞朝刊=

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