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平成19年12月8日
確かな学力は安定した家庭に

家庭再建は教育再生の要

英智塾塾長増木 重夫氏に聞く

 子供の学力と家庭の安定にはどのような関係があるのか。大阪・吹田市で塾経営三十六年、約三万人の子供たちを指導し、教育改革運動にも精力的に取り組む増木重夫・英智塾塾長に聞いた。
(聞き手・鴨野 守)

家庭が守る「子供の安定」 

勤勉を可能にする環境が大切

picture  ますき・しげお 昭和27年、福井県生まれ。英知大学英文科卒。在学中から、塾の教師を務め、卒業後「英智塾」を開業。「教育再生地方議員百人と市民の会」事務局長。著書に『「しつけ」の成績表』。
 ――社民・共産党系の教職員組合が強い地域が学力が低下している、と言われるが、組合加盟率よりも、家庭の安定度の方が、子供への影響は大きいとみますか。

 これは力比べだと思います。学力の良しあしは勉強したかしないか。「我慢」して机に向かったか否かの問題です。そして、落ち着いて机に向かうには「家庭の安定」という環境が絶対必要だと思います。

 批判があるのは百も承知ですが、学校の成績はもちろん知能指数もある程度は影響しますが、基本的には努力の有無にかかっており、反復、復習。習ったことをどれだけ覚え込むかにかかっています。極端に言うと、成績の向上は習ったことをいかに忘れないように保持するかということで、もしあなたが小学校の一年生から習ったことをすべて覚えていたら、今ごろほとんどの人が東大、いやケンブリッジかオクスフォード大学も夢ではないでしょう。

 さらに言わせていただくならば、物質資源のない日本にとって、優秀な人的資源こそが国家の興亡を握るカギです。故に勤勉こそ最高の価値であり、勤勉に対する批判や、因数分解が生活に役に立つのかなどという批判は全く的外れだと思います。

 さて、この「勤勉」「努力」、つまり、頑張ることが子供の学力には肝要ですが、教職員組合は「頑張れ、などと子供への過度の期待や、我慢させたことがストレスになって自殺につながる」とか、訳の分からないことを言う。

 そして、昔ながらの勤勉を否定的にとらえ、「本人の意思を尊重しよう」などと、結局は子供の向上心の芽を摘み取ることに加担しています。大黒柱がしっかりしていれば少々シロアリがかじっても、びくともしない。家庭の安定という大黒柱と、組合というシロアリのどちらの力が強いか。最初に、力比べだと思うと言いましたのは、そういうことです。

 ――片親家庭でも優秀な子はいますが、県別で見れば、確かに離婚率と学力には深い関係があります。その理由をどう分析していますか。

 もちろん片親でも優秀な子はいっぱいいます。私の塾にも大勢います。また両親がそろっていても「もうちょっと何とかしろよ」という生徒もいます。総じての話です。さて、子供にとって安定した家庭というものを考えてみた場合、両親ともいないよりは、片親でもいた方がいい。祖父母もいないよりいた方がいい。なぜ、いないよりいた方がいいのでしょうか。これが、子供の「心の落ち着き」「安定」に深く関係してきます。「安定」とは安易な変化を嫌い、不必要、無意味、過重なストレスの存在しない状態だと思います。

 こう言うと、中には、それなら親父がいない方がいいとか、おじいちゃんもいない方がいい。だって、いつもガミガミうるさいから―と言う子供もいるかもしれない。でも、これが本当のストレスでしょうか。ガミガミ言われても三日や四日も子供はクヨクヨしますか。そもそも叱(しか)られる大半の原因は自分でつくっているのですから。一晩寝たらケロリと忘れて、またいたずらの続行ではないですか。

 子供は子供なりに外へ出れば敵.がいます。いじめっ子。いつも怖い目でにらむクラブの先輩。いつ危害を加えてくるか分かりません。そういったとき誰に助けを求めますか。親であり、おじいちゃんであるわけです。弱いより強い方がいい。また、サークルの代表になれと頼まれた。どうしようか。私に勤まるだろうか。大なり小なり荷が重いことを決断しなければならない時が子供の成長過程にはしばしばあります。こういったとき誰に相談しますか。

離婚推奨は健全育成阻む

教組・左翼強い県は問題

picture 健全な金銭感覚を養ってもらおうと「金融教育公開授業in石川」が実施された石川県白山市の吉野谷小・中学校。同県も学力テストの結果は上位を占めた(中学4位、小学校11 位)=日下一彦撮影

 常日ごろは口うるさいけど、ここ一番という時に相談できる、助けてくれる。助けてくれる知恵と力を持った能力ある人が周囲にいるということ。これこそが安心感です。そのような応援団は多ければ多いほど子供の安心感は増すのではないでしょうか。こうしたストレスをカバーし、子供が心から安心して「守ってくれる大人がいる」と思える場所が家庭だと思います。

 ――県内の市町村別などで、学力テストの結果の公表を避ける地域もある。表面的には、序列が競争を煽(あお)る結果になるという言い分だが、本音は、自分たちの地域のレベルが保護者に分かることを嫌ってのことか。

 私は序列をはっきりし、成績の悪い生徒にそのことを認識させお尻をたたくのは正しい競争だと思います。ところが地域単位でこれをやるとまったく別の経済問題を引き起こす可能性が十分あり得ます。

 例えば、ある県で、県の東側が成績がよく、西側が悪いとします。他府県から転入したり県内移転をする場合、誰が好んで西側にいきますか。そうすると西側はさびれ、地価も下がる。市町村教委が迂闊(うかつ)に成績を発表し、それが原因で地価が下がったら、やっぱり私なら「どうしてくれるんだ!」と怒鳴り込みたくもなります。

 私の故郷は今回、学力がトップレベルの福井ですが、常識的に考えて、大阪のある会社で福井か沖縄かどちらかに転勤しろといわれたら、児童を持つ社員ならどちらを選びますか。極端なことを言えば、沖縄に優秀な社員は赴任しなくなり、そのため優秀な企業は進出を控えるかもしれません。そのくらい影響の大きいものだと思います。

 ――今、増木氏が住んでいる大阪は、沖縄に次いで学力が低いが、府内の地域でも、離婚率と学力には比例関係があると言えるか。

 たまたま先日、ある元教員の方から聞いた話です。その方は今大阪市内のある学校で学童保育のボランティアをされています。「私がここに来てびっくりしたのは両親率が40%なのよ。離婚率じゃないわよ。離婚率は60%なのよ。世の中多数派が常識なら、ここでは両親がそろっているほうが『ヘンな家』なのよ。言葉遣いや躾(しつけ)がなってないのでそのことを子供たちに注意したら、『余計なことをするな』って学校から言われたの」とプリプリ。この学校の学力レベルは、確認するまでもないと思います。

 今回の調査問題から若干、逸脱しますが、今回の調査は生活水準の調査でもあると思います。生活水準が低いのはもちろん収入の面もありますが、それだけではなく支出面も問題があります。つまり、収入以上の無理な生活にも原因があるのではないでしょうか。生活水準を上げようとすれば共働きになります。両親とも日々の仕事で疲れる。ついつい心の余裕を欠くこともある。子供の話を聞いてやれない日もある。子供はストレスがたまる。また、生活の疲れから離婚にも発展する。

 大阪府の場合、現実問題として、地価や税収を見ても分かるように北部(吹田、豊中、箕面など)と南部(泉州)では生活水準に差があり、また離婚率もおのずと北低南高になっているようです。そしてそれがそのまま学力に反映されています。

 今回の学力調査を見るまでもなく、大学の進学率等をみれば明らかな話です。また、沖縄は全国一離婚率が高いことで有名です。幸か不幸か私の故郷、福井県は離婚率は低く、離婚は泥棒と同じくらい悪いことと考える県です。その理由は、「亭主がしっかりしているから離婚が少ない」のか「嫁が我慢しているから離婚が少ない」のか、夫婦間で意見の分かれるところですが、極めて保守的な地域であり、最近流行の男女共同参画の話をしても、「なによ、おバカな話」で一笑に付されるでしょう。

 福井はまた共働きの県です。専業主婦は「怠慢」のレッテルを張られ居づらくもあります。前文と論理が逆転しています。ところがそうではなく、お母さんが働いていて子供と接する時間が少なくともそれを祖父母が十分以上にカバーしているのです。お母さんが働くにしても目先の贅沢(ぜいたく)、華美な生活のためではなく、「娘の嫁入り道具をそろえてやりたい」「将来の学費に備えて」「勉強部屋を作ってやりたい」……。もちろん一例ですが、バカがつくほど子供中心なのです。子供を甘やかすのではなく、子供と一緒に頑張っているわけです。

 沖縄と大阪。共通しているのは組合、左翼が強いということです。また、福井、富山、秋田等上位県に共通しているのは質実剛健。大した企業があるわけでもなく、決して収入の多い地域ではありません。しかし無駄なお金は使わない、足が地に着いた生活をしていると思います。豊かな自然と人情にあふれ、個より群れを大事に思い、みんなで協力し助け合い、人に頼ることを恥と思い、親子の絆(きずな)を大事にした、心豊かな「日本人の原風景」のある県だ、ということではないでしょうか。

 ――教育再生の前に、家庭再建ということがキーワードのように思えますが、これは教育委員会や学校も口出しできない分野。ただ、今後も離婚率が減少することはないことを考えれば放置できない課題です。この問題について、どのようなアプローチをしていけばよいか。

 文部科学省なり、教委がどのくらいハッキリ物を言えるかがポイントだと思います。今回は、学力調査という大義名分で、生活水準と左翼度・離婚度が比例することを立証した、といったら言い過ぎでしょうか。本当にどうしようもなく、誰が考えても離婚以外に道はない。そのような場合はやむを得ないと思います。しかし、離婚が百組あったら、このようなケースは何組あるでしょう。話し合いが大好きな左翼の皆さんは、こと離婚に関してはなぜか積極的に勧めているありさまです。話し合いというのは、離婚問題が出たときこそ必要なのではないかと思います。

 家庭再建ができない限り、学校の先生の数を倍にしようが、予算を倍にしようが教育再生はあり得ません。逆に言えば、家庭再建さえできれば放っておいても教育再生はできると思います。離婚と学力の関係をより本格的に調査して、子供にとって家庭がどれほど重要であるかという認識を親自身、学校関係者が深く認識すべきです。

 子供は両親そろって子供らしく育つもの。離婚を推奨したり、子供と母親を時間的に引き裂く、本人中心の安易な女性の社会進出を推進する男女共同参画推進は子供の健全な発育を阻害するだけです。資源のない日本において、人的資源をなくしたら、日本の将来はどうなるのでしょうか。「男女共同参画バンザーイ!」ならぬ、「男女共同参画フンサーイ!」「子供はシゴケー」と叫んだら過激でしょうか。


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