韓国の「奇跡の歴史」を振り返る(下)
本書は、大韓民国建国史に関する最近の研究を総合したものとなっている。わけても、「建国勢力」に対する歪曲を是正する必要性に共感を抱いた政治学者と歴史学者が「温故知新」の知恵をもって21世紀の韓国の姿を思い描き、共同で掘り起こした成果だ。これらを通じ、大韓民国の実際の成就を粗末な「根のない歴史」だと批判してきたこれまでの韓国現代史研究およびその記述を補完し、克服に向けた意気込みを刺激することができるというわけだ。本書に載っている研究は、李承晩博士が「権力に飢えた人物(power-hunger)」に過ぎなかったとか、李元大統領を取り巻く政治的勢力に対する極端な罵倒を克服することに寄与する。そして、解放政局における国際関係面からの脈絡を強調することで、国内的観点にかたよっていた既存の研究傾向のバランスを取ろうとした。
筆者は、こうした試みを高く評価すると共に、今後の韓国現代史研究がさらに気に留めるべき点を2つ指摘しようと思う。
第一に、光復(日本の植民地支配からの解放)後の3年間は、「解放」と「建国」の価値と行動が混じり合いしのぎを削る中で未来のビジョンと方略が披露された「百花斉放」の時期だった。「左派」と「右派」の間に敵対的対立だけが存在していた時期だと単純に規定してはならず、マクロな視点からの統合を念頭に置いた多次元的なアプローチと研究を志向しなければならない。
第二に、「建国勢力」の歴史的な根を精密に明らかにする作業が補完されなければならない。特に、韓末と日帝時代の民族運動との精神史的・人的・政治的つながりに関する研究が真摯に行なわれなければならない。なぜかと言うと、「内在的力量に対する認識がないまま韓国の近・現代史を皮相的に見れば、建国が偶然の要因だけで説明されたり、決定論的な悲観論に陥ることになる」(169ページ)からだ。
鄭允在(チョン・ユンジェ)韓国学中央研究院教授(政治学)
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