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きょうのコラム「時鐘」 2009年8月23日
剣豪・宮本武蔵が二刀流を編み出したのは、祭りの夜だった。映画か小説で、そんな場面の記憶がある。2本のばちで太鼓を打つのを見て、ひらめいた
1本のばちの音は力強いが、2本のばちさばきの方が自在な響きが生まれる。政治家の宣伝文句も、いまは「短い一言」がはやりだが、以前は「二刀流」が多かった。「寛容と忍耐」や「信頼と合意」など。「決断と実行」を掲げた列島改造内閣は、時に強引なやり方が目立ち、「独断と暴走」と、からかわれもした 二刀流の武蔵が、巌流島の決闘では舟のかい1本だけを手にして勝った。もっとも、わざと遅刻をして佐々木小次郎をいらつかせたそうだから、もう1本は心理戦という二刀流ともいえる 「責任力」「政権交代」などと声高に叫ばれる選挙である。責任力で何をし、政権交代で何が生まれるのか。もう1本の刀が、はっきりしないようでもある。政権公約には、勇ましい刀が並ぶが、なまくら刀があるかもしれぬ。切れ味までは分からない 「責任力と不満」「政権交代と不安」。そんな二刀流も、いまの政治の世界にはあるのだろうか。 |