70年の第1回の開催から40回目を迎えるアメリカ最大のオタク系イベントで、「コミコン」の略称で知られる「コミックコンベンション2009」を見てきました。
会場は米カリフォルニア州のサンディエゴ。ロサンゼルスから車で約3時間、風光明媚(めいび)で気候の変動が少ないため、リタイアしたら住みたい土地のナンバーワンにも挙げられています。開催当初は、ホテルのボールルームで開かれていましたが、年々規模を拡大し、現在は世界各国からパブリッシャーやディーラー、バイヤー、セラー、個人マニアまで多様な人々が集まるイベントになりました。会場はサンディエゴ・コンベンションセンター。幕張メッセの2倍ほどの規模です。
日本の「コミケ」の1回目が75年といわれています。コミコンは開催回数は少ないもののコミケより古く、歴史のあるイベントと言っていいでしょう。「コミコン」の名前が示すとおり、開催当初はアメコミの販売会兼アマチュア作家とプロ作家の発表、交流の場であり、新しい才能を発見するための場であったようです。なかでも80年代には「マーベル」や「DCコミックス」の再評価と、その隆盛に伴って開催規模を拡大していきました。そして90年代に入り、今度は劇場向け映画をイベントの出展として取り込むことに成功しました。そして現在は、ゲームソフトをはじめとした日本のコンテンツを多様に取り入れて、さらに発展を遂げています。
会場内で大きな出展スペースを確保しているのは「マーベル」「DCコミックス」「マテル」「ハズブロ」「LEGO」などおなじみのメーカーです。各社ともに豊富なライブラリーコンテンツを焼き直したり、新たな取り組みを行っています。今回は、取り立てて新しいものはありませんが、アメリカ人のDNAのなかには各社が作り上げてきたキャラクターが刻み込まれているように思えます。それはアメリカという国が持つ、新しい国を作り上げてきたという部分に重なり合うようなキャラクターが多いからではないでしょうか。
日本からは、「スクウェア・エニックス」「カプコン」「コナミ」「ハドソン」「壽屋(コトブキヤ)」などが出展。それぞれに趣向を凝らし、海外限定のアイテムを販売するなど日本との差別化を図っている会社もあります。
しかし、会場内で一番目立った展開や、にぎやかなエリアといえば、ゲートEからGあたりに位置する映画製作配給会社、テレビシリーズのブースです。昨年は「ウォッチメン」のプレミア記者発表会や上映イベントが行われ盛況を博しました。初日は「プレミアナイト」と呼ばれ午後9時30分まで会場を見学できます。しかし、話題のブースには閉館間際でも大勢の人だかりが続きます。さて、光あふれるサンディエゴですが、光もあれば闇もあるわけです。次回は個人的な視点からリポートします。特に、NHKで1969年から放送された「プリズナーNo.6」のリメーク「THE PRISONER」の発表が気になりました。(後編へ続く)
くろかわ・ふみお=1960年、東京都生まれ。84年アポロン音楽工業(バンダイミュージック)入社。ギャガコミュニケーションズ、セガエンタープライゼス(現セガ)、デジキューブを経て、03年にデックスエンタテインメントを設立、社長に就任した。08年5月に退任。現在はブシロード副社長。音楽、映画、ゲーム業界などの表と裏を知りつくす。
2009年8月3日