「世界陸上第6日」(20日、ベルリン)
男子200メートル決勝はウサイン・ボルト(23)=ジャマイカ=が北京五輪で出した19秒30の世界記録を0秒11更新する19秒19の世界新記録で圧勝した。ボルトは9秒58の世界新で制した16日の100メートルと合わせ、同五輪に続く個人種目での短距離2冠。2位はアロンソ・エドワード(パナマ)の19秒81で、0秒62の大差。史上初めて5選手が19秒台で走った。女子走り高跳びはブランカ・ブラシッチ(クロアチア)が2メートル04で2連覇し、同400メートル障害は北京五輪女王のメレーン・ウォーカー(ジャマイカ)が52秒42の大会新で優勝。男子110メートル障害はライアン・ブラスウェイト(バルバドス)が13秒14で制した。
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196センチの長身を利した平均240センチのストライドでコーナーを抜けると、人類最速男の記録への挑戦が始まった。男子200メートル決勝にライバルはいない。歯を食いしばり、全力で直線を走る姿は1年前の北京五輪と同じだ。「北京の世界新記録がジョークじゃなかったことを証明できた」。ゴールした瞬間、速報掲示を左手で指し、誇らしげに胸をたたいた。
「19秒19」。またしても驚異的な世界新だ。向かい風0・3メートルを切り裂き、9秒58の世界新を出した100メートルと同じ0秒11の大幅更新。「自分でも驚くほどいい走りができた。こんなに速いとは思わなかった」。レース後、五輪に続く世界新での個人種目2冠に「疲れてジョギングするのも難しかった」とあおむけになって歓喜に浸った。
1回目のスタートはフライングの揺さぶりがあった。だが、ボルトは微動だにしない。ミルズ・コーチと「全身で音を聞いて出る」という猛練習で課題を克服してきた。2回目のスタートは反応時間0秒133でトップ。「完ぺきなレースだったね。努力を続ければ何でも可能だ」と誇った。
コーナーの走りにも進化の跡があった。今季は上半身と腰回りの筋力が一段と増し、快挙に立ち会った日本記録保持者の伊東浩司氏は「レーン外側ぎりぎりを走った北京に対し、今回はコーナーで遠心力に巨体が振られず、レーン内側の最短距離を走っていた」と驚いた。自身の世界記録を縮めた大きな要因だろう。
21日に誕生日を迎えるボルトは22歳の最後の夜を「最も美しい種目」と形容する200メートルの世界新で自ら祝った。「今はとにかくたくさん眠りたい」。夢の18秒台への期待も膨らむ中、稲妻ボルトの限界は誰にも見えない。