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北の偽ドル札「スーパーノート」元FBI捜査官 実態語る (2/2ページ)
ヘイマー氏は振り返る。
「リュー被告はしばしば北朝鮮に行くなど、北朝鮮と直接的な結びつきがあったようだ」
05年4月、ヘイマー氏が指定先の銀行口座に代金を送金すると、15枚の新型のスーパーノート入り小包が送られてきた。品質はこれまでになく精巧だった。
その後、布の巻物を装った中に、スーパーノートが入っている箱が何回か送られてきた。リュー被告はさらに多くのスーパーノートを送る、と約束した。
ヘイマー氏のすぐ目の前に、スーパーノート流通の暗い闇が広がっていた。
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そんなとき、おとり捜査の幕引きを告げる出来事が突然、起きた。ロンドンの同時爆破テロ事件。05年7月のことだ。FBIは密輸業者が取り締まり強化を恐れて取引をやめてしまい、地下に潜ることを懸念し、一斉摘発を決めた。
ヘイマー氏は8月ごろ、東海岸で架空の「洋上結婚式」を開き、密輸業者らを集めることを計画。結局、「結婚式」に出席した42人の密輸業者らは、そのまま拘置所に運ばれた。
一連の摘発で、ウー、リュー両被告ら59人が逮捕されるに至った。
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この年、米政府は北朝鮮の違法な金融活動への取り締まりを強めていた。
9月には、北朝鮮の資金洗浄(マネーロンダリング)に関与した疑いで、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に対し米金融機関との取引を禁じる措置を打ち出している。
米司法当局は翌10月、北アイルランドの過激派アイルランド共和軍(IRA)幹部がスーパーノート流通に関与したと発表した。起訴状では、偽造紙幣が北朝鮮で製造され、北朝鮮政府の保護のもと各国に持ち込まれていると断定、北朝鮮政府の関与を司法手続きの中で初めて認めた。
今年6月の米議会調査局の報告によると、スーパーノートは、これまでに少なくとも4500万ドル(約42億円)相当が流通したことが確認されている。北朝鮮は年間1500万ドルから2500万ドルの利益を得たと推定されるという。
ヘイマー氏は捜査を振り返ってこう語る。
「北朝鮮が国際的な締め付けが強まっても偽ドル札流通などをやめるとは考えづらい。何しろ犯罪事業に頼っている国だからね」