ここから本文エリア 【医療】医師不在 住民に重く2009年08月22日
紫波町の特別養護老人ホーム「にいやま荘」で6月下旬、入所者の女性が亡くなった。だが、夜間は医師がいないため、死亡の確認ができない。「遺体」は死亡診断書もないまま、個室のベッドに寝かされて夜明けを待った。脇や背中の下には、葬祭業者の用意したドライアイスがあてがわれた。 にいやま荘は、県立紫波地域診療センターと廊下でつながっている。施設では今年3月まで、夜間・休日もセンター当直医の診察を受けることができた。 ところが4月、センターの入院ベッドが休止されて診察も平日の日中だけになり、24時間の医療体制は失われた。にいやま荘は、2人だった介護職員の夜間当直を、救急車の付き添いのため3人に増やした。医師の負担軽減が施設に転嫁された形だ。 中でも懸案は、老衰などで施設で最期を迎える「看取り」患者だ。「家族と静かに最期を迎えるのが看取りの趣旨。センターの嘱託医の不在時には、救急搬送するべきなのか悩む」と畠山泰事務長は言う。 「夜間・休日は、民間の開業医に嘱託医をお願いしたい」。にいやま荘の高橋恒行所長は、県医療局、紫波郡医師会と交渉を始めている。「公立病院が縮小した今、急場の対策として開業医の協力が不可欠だ」 ◇ 花泉地域診療センターのある一関市花泉町では、入院の必要な患者は約20キロ離れた県立磐井病院に運ばれることになった。 ここでも介護施設から「地元の開業医とセンターの連携体制を作って欲しい」との声が上がる。だが、花泉で医院を開業して40年になる佐藤誠之医師(75)は「地域医療を開業医で支えるのも限界がある」と話す。「開業医も過疎と高齢化が進んでいる」 花泉地区の内科開業医は、佐藤さんを含め4人だけ。いずれも60歳以上だ。約200床ある介護病床の嘱託医を分担して務め、夜間・休日に施設から診察を頼まれることもあり、疲労感は強い。 「勤務医はもっと大変なのでしょうが、私も『後期高齢者』と呼ばれる年。若い人々と同じ仕事を期待されても厳しい」 県保健福祉部のまとめでは、県内では盛岡圏域を除く8圏域で、人口10万人あたりの医師数は全国平均(217人)を下回る。二戸では124人、気仙では143人しかいない。勤務医が引き揚げられた地域は、連携できる開業医すら少ないのが実情だ。 医師不足の一因には、80年代からの医学部定員の抑制がある。開業医中心で自民党を支持してきた日本医師会も、医師の過剰は医療の質の低下や医師の失業を招くとして、数年前まで定員抑制を求める立場だった。 今回は、各党が医師数増加を訴える。県医師会の役員でもある佐藤医師は「診療報酬の改定、医学部定員の増加、医師の育成のあり方、すべて変えていかないと」と言う。 今年3月末、474人いた県立病院の常勤医は6月には20人減。医師不足に歯止めはかかっていない。 ◇ <主要政党のマニフェスト概要> ●自民党 ●民主党 ●公明党 ●共産党 ●社民党
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