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きょうの社説 2009年8月22日
◎新型インフル拡大 過度に恐れず秋冬の備えを
新型インフルエンザの感染拡大で、特に注意すべきは慢性呼吸器疾患や慢性心疾患など
の持病がある患者と、妊婦・乳幼児である。感染した場合、重症化する危険性が高く、せきなどの自覚症状がある場合は、即座に診察を受けてほしい。厚生労働省はこのところの感染拡大について「新型インフルエンザの病原性が強毒化し たものではない」との見解を示している。予想外の夏場の流行は、感染力の強さを物語るものであっても、ウイルスの毒性の強さを示しているわけではない。季節性インフルエンザでも毎年1万人前後の死者が出ていることを考えれば、健康な人は新型インフルエンザを過度に恐れる必要はないといえる。 新型であっても、季節性インフルエンザと同じように、通常は早期にインフルエンザ治 療薬の投与を受ければ短期間で回復する。世界的な感染の広がりを見ると、ウイルスを完全に封じ込め、患者ゼロを目指すのは現実的ではない。過剰反応せずに、上手に付き合っていく必要がある。 これから重要になるのは秋冬の流行への備えだ。新型は季節性インフルエンザ用ワクチ ンでは効果が期待できない。厚労省は新型対応の5300万人分のワクチンを準備する方針だが、国内生産量は年内で1400万〜1700万人程度しかなく、足りない分は輸入するとしている。 だが、ワクチン不足は日本だけでなく、国家間で調達競争が起きる可能性がある。自国 民の保護を優先するか、国際秩序に配慮するかの難しい選択を迫られる場面も想定しておかねばならない。 十分な量が確保できない場合、糖尿病やぜんそくなどの病気を持つ人、妊婦、乳幼児、 高齢者、医療従事者を優先しなくてならないだろう。集団感染が小中高校で発生しやすいことを考えると、小中高生の優先順位を高める必要があるのではないか。 新型インフルエンザに特別神経質になる必要はないが、季節性インフルエンザと同様に 、自覚症状があったら速やかに治療薬の投与を受け、外出を控えて他人に感染させない配慮を徹底したい。
◎茶屋街ビアホール 「金沢おどり」の粋な前奏曲
金沢園遊会のメーン行事「金沢おどり」を1カ月後に控え、金沢市のにし茶屋街で「ビ
アホール」が開設された。三茶屋街の芸妓衆が競演する「金沢おどり」は今や、金沢を代表する催しとなり、このような粋なプレイベントは本番へ向けての盛り上げに大いに役立つだろう。富山市でも八尾の「おわら風の盆」前夜祭が始まり、9月の本番に合わせ輪踊りが披露 されている。クライマックスも心ときめかせて待ちわびる前奏があってこそ感動が高まるだろう。花街のビアホールはホテルやビル屋上と違って和の風情満点で、城下町の夏の風物詩としても定着させたい。 西料亭組合が実施するビアホールは、通常は稽古などが行われる検番の座敷を開放して オープンした。8日間の期間限定で、芸妓がテーブルを回り、踊りや三味線などを披露する。花街のビアガーデンとしては、京都の上七軒(かみしちけん)が歌舞練場の庭園で毎年夏に開設するイベントが有名だが、にし茶屋街の検番は大正建築の様式を残す建物として登録文化財に指定されており、京都に劣らぬ金沢独自の花街文化の発信が可能だろう。 今年の「金沢おどり」は9月19日から22日まで県立音楽堂邦楽ホールで開催され、 昨年より1公演多い6公演となる。2004年から始まったこの舞台は、大和楽や総踊り曲「金沢風雅(ふうが)」も新たに加わり、京都や東京など各地の芸妓も会場に足を運ぶなど、全国的な注目度が年々高まっている。「金沢おどり」をみて芸妓になる女性も相次いでおり、その道を志す人にとってはあこがれの舞台になっているようだ。 「金沢おどり」は、ひがし、にし、主計町の三茶屋街が芸を競い合う真剣勝負の場であ る。本番が近づくにつれ、各茶屋街では師匠を招くなどして稽古漬けの日々となり、各検番では三味線や鼓の音が響き渡る。三茶屋街の店先には「金沢おどり」の提灯も飾られ、開幕ムードが一気に盛り上がってきた。ビアホールは一般の人もそうした雰囲気に触れられる一つの場であり、今後さらに高まる熱気や情緒を街全体で共有したい。
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