韓国・キーワード 「韓国人の姓氏」
韓国人の姓といえば、金、李、朴、崔、鄭などがすぐに思い浮かぶ。
統計庁が最近発表した2000年の国勢調査(同年11月上旬実施)に基づく「姓氏・本貫集計結果」によると、韓国の固有姓は285しかなく、先の5大姓を持つ人が全人口の54%(約2480万人)に達することが判明した。 また、20大姓を持つ人が78.2%を占めるなど、特定「姓」への偏りが著しく、このような傾向は、前回の集計(85年)とほとんど変わっていない。
韓国で姓の使用が普遍化され始めたのは、科挙制度が発達していた高麗文宗(1047年)以後。しかし、常民と奴碑を含め、実際に国民みなが雌を持ったのは、棚餅朝末湖の改革政治が始まってからで、100年にもならないと言われている。
15世紀に刊行された東国輿地勝覧など姓氏の由来と考証資料が収録された文献によると、中国との往来とともに、部族社会である古朝鮮時.代の王族らが、ほかの氏族との区別や政治的身分を表示するために使用したものと伝えられ、それ以降にも王族、貴族や臣下、帰化人らに住んでいる地域、川、山の名称により賜姓をし、次第に拡大され始めたものと伝えられている。
韓国経済企画院調査統計局が発表した「韓国姓および本貫案計」は、1985年の人口センサス時、姓氏を漢字記入させ、珍しい姓や本貫は直接現地調査をし、確認するなど比較的信ぴょう性が高く、価値ある統計といえる。(韓国における姓の調査は、1930年・60年・75年・そして85年に行われた。)
韓国人の姓は、金、李、朴の3大姓が、全人口の45%を占め。過去10年間に25の姓が新しく生まれ、本貫(ホングァン)数も大きく増えた点を、この調査結果の中で注目される変化や特徴としている。本貫は、[一名、貫郷(クァニャン)とも言い、また、略して単に「本・ボン」とだけ言うこともある。族譜(チョクホ)の意味で、文字通り一族や一家の系譜、系図である。別途、会報「あんてな・」にて掲載予定]。
姓氏別の人口(ベスト10)
順位 | 姓 | 人口 |
1 | 金 (キム) | 8.785.554 |
2 | 李 (イ) | 5.985.037 |
3 | 朴 (パク) | 3.435.640 |
4 | 崔 (チェ) | 1.913.322 |
5 | 鄭 (チョン) | 1.780.648 |
6 | 姜 (カン) | 958.163 |
7 | 趙 (チョ) | 877.050 |
8 | 尹 (ユン) | 834.081 |
9 | 張 (チャン) | 810.231 |
10 | 林 (イム) | 672.755 |
新たに確認された姓は候(フ)、斎(チエ)、頭(トウ)、桓(ファン)、栄・(ヨン)、橋(キョ)、邸(チョ)、榑(チ)、椰(ハク)、辻(シフ)、鏑(ホ)、諏(タム)、楽(ナン)、苗(ミヨ)、楼(ヌ)、岡田(カンジョン)、小峰(ソボン)、細切(マルジョル)、長谷(チヤンゴク)、丞(ヒ)、椿(チュン)興(フン)、初(チョ)、文(エ)、芸(ウン)など、このうち岡田、小峰、長谷、細切、橋、辻は日本から、丞、交、樂、薔、詞は中国から、興はベトナムから帰化した姓と分かった。
これら25の新しい姓のうち全国でただ一人だけの姓が6もあり、当代や先代につくられた本貫中心に全国に一世帯しかない本貫もあった。全州森氏、壬辰宗氏、開城友氏、芳山米氏、隠川伊氏、星川楚氏などがそれだ。
また、地域別姓分布も興味深い。全国の市道人口の姓がみな金、李、朴の順で、全国的大姓となっているが、高、梁、夫の三姓がよく知られた済州道は高氏が金、李氏の次で、梁氏が5位、康氏が8位、文民が9位、玄氏が10位を占めるなど異色的な姓分布を見せた。
洛国の首露王の子孫で3,435の本貫のうち単一姓として韓国で最も人口が多い金海金氏はその居住地域分布がソウルの22,2%を除いて、全南12,9%、慶州11,3%、釜山10,3%の順で南部海岸地域に多い。一方、韓国第一の大姓である金氏の本貫は285で全体本貫数の8,3%を占めており、十大姓が占める本貫数の比重は34,6%にもなる。
最近、ハングルで名前をつける人たちが増えているが、この調査では純粋なハングル姓は一人もいなかった。
固有の姓より多い帰化人の姓(韓国)
今度の集計(2000年11月上旬実施)では、韓国に帰化した外国人の姓が442になり、韓国固有の姓の数を上回ったことが判明した。
韓国に帰化した外国人は90年には37人だったが、2000年は278人、01年は661人と最近、急増している。
これは国際結婚が増えているためで、帰化の96.2%は婚姻によるものだという。
ところで、外国人が帰化する際に戸籍に記載する姓は、自分の姓を使っても、韓国式の姓を使っても、これとは別に独創的な姓を作っても構わない。
例えば、2000年に帰化したロシアのサッカー選手サリチェフは、その鉄壁守備をたたえるニックネーム「神の手」(韓国語でシン・ウィ・ソン)を借用して、申宜孫(シン・ウィソン)という名前を作って登録した。
日本人の場合は原田、吉岡など姓をそのまま書く場合が多いが、金や李などメジャーの姓で登録する場合もある。
韓国人の姓(と本貫)は血統と直結しているので、その分布が急激に変化することは元来、あり得ない。しかし、数100年から1000年のスパンで見ると、繁殖力の強い帰化人を始祖に持つ姓が韓国の5大姓に仲間入りする可能性もあるわけだ。
会報「あんてな」第43号 1991年11月20日発行 P2から一部転載。