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黒川文雄のサブカル黙示録:コミコン視察・後編 「日本コンテンツなしには生きていけない」

「コミコン2009」のブースに登場した「ガッチャマン」
「コミコン2009」のブースに登場した「ガッチャマン」

 アメリカ最大のオタク系イベント「コミコン2009」の来場者は25万人。午前中に並んでも、入館できるのは午後なんてこともあります。会場の入り口から列が3キロくらい続きます。とにかく待ちます。しかし、そんな待ち時間もフレンドリーな国民性を持つアメリカ人ならではの社交の場として、知らぬ同士でも会話に花が咲きます。

 列の中で、一番目立つのはコスプレのコミュニティーです。中でも根強いのは「スター・ウォーズ」関連で、実際にコミコン出展者の中には、スター・ウォーズだけのコスプレ・コミュニティーがあります。一番人気は「ストームトルーパー」で、かなりの数を見かけます。他にもアメリカらしいのは「スタートレック」ですが、びっくりするのはクリンゴン星人のグループが目立ちます。カーク船長のコスプレは格が違うためか、見掛けませんでした。ほかには新旧バットマン、ちょっと太めなワンダーウーマンなどがそろいます。

 開催期間中、アメリカの会社のスタッフや関係者と面談する機会に恵まれました。彼らは一様に自分たちの国が生み出したコンテンツやキャラクターに自信を持っています。展示でも一番スペースを持つのは、いまだアメコミのキャラクターたちです。しかし、会場内ですれ違うコスプレーヤーたちを見ていると、明らかに日本のキャラクターが多いことに気が付きます。

 「ナルト」「ファイナルファンタジー7」「ストリートファイター2」「バイオハザード」「涼宮ハルヒ」……。肌の色こそ違えど、日本作品のコスプレが再現されています。展示に関しても、アメリカ玩具業界の最大手「ハズブロ」社のイチオシは「トランスフォーマー」です。アメリカで進化を遂げたキャラではありますが、オリジナルは日本です。また会場を沸かせる映画ゾーンの注目のコンテンツは「鉄腕アトム」を元にした「ATOM」(2009年公開)であり、タツノコプロ原作の「ガッチャマン」のCGムービーの予告編でした。日本人が独自に創造したマンガやアニメの主人公たちが、アメリカの地で、新しいクリエーターたちによってリメークされていることに感動を覚えました。

 最終日前夜、とあるレストランでのことです。隣に大人数の「スター・ウォーズ」のコスプレグループがいました。中にはレイア姫までいます。会食中、知人である現地のコンテンツ系プロデューサーは僕にこう言いました。「アメリカは数多くのキャラクターを生み出してきた。その多くはアメリカが独立した国家を維持し、そして、世界警察を標ぼうした結果生み出されたものが多い。しかし、もはや時代は大きく変わった。僕らアメリカ人は、既にキミたちの国(日本)のコンテンツなしには商売は成り立たないし、生きてはいけないのだよ」と……。

 確かに、今回のコミコンで出展されているハリウッド映画やトイ(玩具)業界を見る限りその傾向は顕著です。しかし、アメコミ第3世代とも言うべき、日本のアニメやコミックの影響を受けた世代が登場するころには、かつて、日本人がアメリカのコミックやテレビアニメを模倣して自分たちのコンテンツを作り上げたように。またアメリカで新しいエンターテインメントが生まれてくるのではないかと思います。

 ◇プロフィル

 くろかわ・ふみお=1960年、東京都生まれ。84年アポロン音楽工業(バンダイ・ミュージック)入社。ギャガ・コミュニケーションズ、セガ・エンタープライゼス(現セガ)、デジキューブを経て、03年にデックスエンタテインメントを設立、社長に就任した。08年5月に退任。現在はブシロード副社長。音楽、映画、ゲーム業界などの表と裏を知り尽くす。

2009年8月16日

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