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【コラム】金大中元大統領の死と羅老号(下)

 金元大統領の在任中に宇宙開発事業が始まった当時、最初の予算は10億ウォン(約7600万円)にすぎなかった。それが今や、8000億ウォン(約604億6000万円)を投じた羅老号の発射へとつながった。さらに今後、韓国独自の技術によるロケットを発射する際には、数倍、数十倍の予算や人材を必要とする巨大プロジェクトになる。これは南北統一や地域対立の解消のためにも、たとえ微々たるものであっても重要な第一歩とならなければならない。

 宇宙開発は成功する可能性が十分にあるとは言えない。羅老号の発射に隠された意味の一つは、われわれにとって未知なる経験を、一度は試してみることにした、という事実だ。われわれにはこれまでなかったDNAだ。われわれにとってはなじみがないものの、強大国の国民にとっては当たり前となっているこのDNAは、あらゆる物事を否定的に見て、簡単に放棄してきたこれまでの韓国人の習性とは正反対の特性を持っている。

 羅老号の打ち上げをめぐっても、「果たして大丈夫なのか」「われわれの宇宙開発は何を意図したものなのか」といった懸念の声が上がっていた。南北統一や地域対立の解消も、「果たしてできるのか」といった理由で手をこまねいていては絶対に実現しない。羅老号のような取り組みを進めていくべきだ。その取り組みの内容が、すべて最善のものだとは言えない。だが、新たな取り組みを進めるということについては、羅老号に対する声援に等しい国民の支持がなければならない。そうでなければ、新たな取り組みを始めることもできず、挫折に追い込まれてしまう。

 10年前、宇宙開発に関する最初の予算を成立させたキム国会議長が今や、韓国社会の対立の解消のため、憲法改正を推進している。李明博(イ・ミョンバク)大統領は行政区域や選挙制度の再編を提案した。こうした取り組みが果たして最善の方策と言えるかどうかは、自信を持って断言することはできない。だが、何も手を打たず、黙って見ていることはできない。それこそが、金元大統領の死がわれわれに求めたものであり、羅老号の発射が示す教訓だ。

 金元大統領に対する愛憎の感情は、韓国社会における対立の根源の一つだ。きょう打ち上げられる羅老号が、この積年の対立を宇宙へ持ち去ってくれることを望みつつ、羅老号の成功を心から願ってやまない。

楊相勲(ヤン・サンフン)論説委員

【ニュース特集】金大中元大統領死去

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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