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一票に願いを:09衆院選/2 切実「母子加算復活を」 心むしばむ生活切り詰め

 月1度の回転ずしがささやかなぜいたくだった。生活保護を受ける京都市山科区の辰井絹恵さん(46)は長男(18)と2人暮らし。向き合って座り、積み上がった40枚以上の皿を見る時だけは、貧しさを忘れられた。毎月約2万3000円の「母子加算」は、06年度から減らされ、翌年度に打ち切られた。回転ずしはあきらめた。

 6年前に乳がんの手術を受けた。夫とは手術を機に折り合いが悪くなり、退院後に離婚した。後遺症で右手を動かすのがつらく、働けない。長男は当時、中学1年。生活保護に頼るしかなかった。

 「テレビを見るだけの生活でいいのか」。働けない自分を責め、うつ病に。高血圧なども重なり、服用する薬は15種類ほど。来春、定時制高校を卒業する長男に、就職活動用のスーツを買ってあげる金もない。

   ■  ■

 07年度に生活保護を受けた母子家庭は9万2910世帯。5年間で1万694世帯増えた。額は地域や家族構成で異なる。東京23区では、30歳の母と4、2歳の子供の3人なら、生活扶助は月15万7800円。子供が18歳以下の一人親世帯には母子加算が上積みされていた。構造改革路線の下で05年度から段階的削減が始まり、今年度全廃された。

 就労世帯などに最高月1万円支給する「ひとり親世帯就労促進費」が創設されたが、働けなければ対象外。母子加算復活は多くの母の願いだ。

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 「母子家庭はぜいたくをしているから加算は必要ない」。生活保護を受けながら東京の下町で8歳から12歳の子供3人を育てる女性(33)は、打ち切りを知った時、そう言われたような気がした。

 自営業で借金を抱えた夫と離婚後も病気の次男(10)につきっきり。うつ病を発症して働けなくなった。夜は家族4人が一つの部屋に集まり電気代を節約するなど、少しでも切りつめるのに懸命だ。母子加算廃止後は、さらに生活費を削った。

 「公約を実現できなかった場合の罰則を設けて」。主要政党が打ち出す子育て支援策は歓迎だが、心に受けた傷がいえないうちは、政治も信用できない。

 子供への毎月の小遣いは300~500円。「お母さん、最近厳しくなったね」。そう言われるのがつらい。【沢田石洋史】=つづく

毎日新聞 2009年8月21日 東京朝刊

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