あをによし 万葉の歌ジャズにのせ CD発売今盛りなり
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万葉の昔をイメージした衣装を着て、「やまとより」を熱唱する芝山真知子さん。後ろはテナーサックスの尾田悟さん |
奈良市大宮町4丁目の芝山真知子さん(55)が、万葉集の歌をジャズ風に歌いあげた曲を含むCDアルバム「Song from YAMATO」を発売した。子育てを終えた46歳からジャズを習い始め、今回が初のアルバム。4日夜には記念ライブを開き、古代人の歌と現代のジャズのコラボレーション(協調)を披露した。(高橋友佳理)
♪あをによし 奈良の都にたなびける 天の白雲 見れと飽かぬかも―。
同市角振町のライブハウス「Y2(ワイワイ)」に、ピアノとベース、サックスのゆったりしたメロディーに合わせた伸びのある柔らかい声が響いた。CDのメーン曲「やまとより」は、日本ジャズ界の重鎮といわれる尾田悟さんが作曲し、サックスの演奏にも参加した。
4500首余りある万葉集から、前述の作者不明の「あをによし」や小野老の「あをによし」、柿本人麻呂の「天の海に」、「磯城島の」でそれぞれ始まる4首を選び、歌詞に引用した。毎朝のように平城宮跡で太極拳に参加しながら、仰ぎ見る空や景色とピッタリきた歌がこの4首だったという。アルバムは、漫画家の里中満智子さんが選んだ万葉集の歌でつくった「恋歌」や、「テネシーワルツ」などスタンダードナンバーも含む全6曲構成だ。
幼い頃から、母親の買った童謡のレコードに合わせて歌うのが好きだった。大学卒業後、結婚したが、娘2人を抱えて5年で離婚。生計を立てるため、生命保険の外交員から会社の営業まで働き通しで、歌手の夢を追う余裕はなかった。
転機は46歳の時。20歳を迎えた次女を遊びに誘ったところ、「お母さん、一緒に行く友達おらへんの?」と聞かれた。「もう自分のやりたいことをやっていいんだ」と気づき、会社のそばのジャズボーカル教室の門をたたいた。
教室で専門的なボイストレーニングを受け、めきめき上達。ライブハウスやパーティーなどで歌うようになった。3年後には米・ニューヨークで黒人街ハーレムでのセッションに参加するなど、本場のジャズも体験した。
奈良市には3年前、音楽プロモーターの山脇豊さんとの結婚を機に大阪府豊中市から移り住んだ。万葉集の研究をしている大学の同級生に触発され、その感性の豊かさに魅了されたという。芝山さんは「花を見て美しいと思う、その自然な感性は今の世の中に必要なもの。このCDを聴いて、日本のよさを見直してほしい」と話している。
(朝日新聞・文化欄 2008年5月5日)
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