危険な新総理と金正日を繋いだ男【崔秀鎮氏】が実名で「媚朝外交」を暴露

「安倍晋三は拉致問題を食いものにしている」
−「週刊現代」10/21 柳在順と本紙取材班−



 「我々は核実験を断行する」──北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、ついに核実験宣言を行った。安倍首相の「対北朝鮮強硬外交」に期待がかかるが、新首相は水面下で「媚朝外交」を推進してきた政治家であることを忘れてはならない。

 「安倍晋三という政治家には、大変失望しています。北朝鮮問題について、虚心坦懐に私と話したことと、その後の言動は正反対と言ってもよい。首相に就任して以降は、拉致担当大臣(塩崎恭久官房長官が兼任)や拉致担当首相補佐官(中山恭子氏)のポストを設置したり、みずから本部長になって拉致問題対策本部を立ち上げたりしています。『北朝鮮の核実験は断じて容認できない』と国会で怒りをあらわしてもいます。しかし実際には、単に政治的パフォーマンスとして拉致問題及び北朝鮮問題を利用しているにすぎないのです」

 舌鋒鋭く安倍晋三首相(52歳)を批判するのは、「金正日(総書記)に一番近い外国人」と言われる、中国朝鮮族の大物実業家・崔秀鎮氏(56歳)だ。故・金日成主席の代から金父子とじっこんの仲で、2000年6月の金大中前大統領と金正日総書記との南北首脳会議、昨年10月の胡錦濤主席と金正日総書記との中朝首脳会談などは、崔氏の尽力なしには実現しなかったとさえ言われている。そんな大物ロビイストが、かつて安倍首相(当時は官房副長官)から極秘に依頼されたという北朝鮮との秘密交渉について暴露した。以下は、崔氏の告白である。






 2003年の夏に、ある旧知の人物から、膠着している日朝交渉を進展させるため、安倍氏に協力してやってほしいと頼まれました。その前年の9月に電撃訪朝した小泉純一郎前首相が、金正日総書記と日朝国交正常化を速やかに実現させることで合意しました。そして5人の拉致被害者が日本に帰国しましたが、その後、日本で拉致問題が沸騰し、国交正常化交渉が膠着状態に陥ってしまったのです。

 そんな中、当時官房副長官だった安倍氏は、小泉首相の特使として自分が平壌に赴き、帰国した拉致被害者の家族8人を連れて帰ろうと画策していました。安倍氏のねらいは、拉致問題で得点を稼ぐことで、“ポスト小泉”の地位を確実なものにすることのようでした。そしてそのために、私に白羽の矢が立ったのです。

 私は安倍氏側の申し出に、一肌脱ぐことにしました。それは朝鮮族の中国人実業家として、日朝国交正常化がもたらす東アジア地域の冷戦構造の緩和は、大歓迎だからです。


金正日(総書記)に謝罪した安倍首相


 私は安倍氏の招待を受けて、2003年8月16〜19日に訪日。東京都内は目立つということで、8月17日に、安倍氏の河口湖の別荘近くにあるホテルで極秘会合を持ちました。そこで安倍氏と2時間半近く、北朝鮮問題について突っ込んだ議論を交わしたのです。

 私がまず言及したのは、2002年9月の日朝首脳会議で、金正日総書記が小泉首相に対して、過去の日本人拉致について謝罪したことです。幼少期から帝王学を授けられて育った金総書記が他人に謝罪したのは、生涯ただ一度だけです。その重みを考えてほしいと言いました。

 安倍氏は何度もうなずきながら、次のように語りました。

 「日朝首脳会談には私も小泉総理に同行していましたが、拉致問題に対する北朝鮮側の真摯な態度は、ひしひしと感じました。あの時日本政府は当初、5人の拉致被害者を一時的に帰国させた後、また北朝鮮に戻すということで、北朝鮮側と合意していました。その約束を守らず、金総書記の体面をつぶしてしまったことは、本当に申し訳ありませんでした」

 安倍氏は続いて、本題に入りました。

 「私は今後、帰国した(蓮池薫さんら)5人の拉致被害者の家族8人を無事に帰国させたいのです。そのために力を貸してください」

 安倍氏は、8人を連れて変えるために自分が訪朝したいようでした。そこで私は、金総書記の謝罪の意味について、もう一度念を押しました。

 「金正日総書記が謝罪したということは、生存している拉致被害者、および家族は全員帰国させる決定を下したということです。だから、8人の帰国に関してはご安心ください。しかし8人を帰国させた時点で、これ以上生存している拉致被害者はいないのだから、北朝鮮と国交を正常化させるというお考えでよろしいのですね」

 それに対して安倍氏の回答は明快でした。

 「それは8人の家族さえ帰国させれば、北朝鮮としては、やることはすべてやったということでしょう」

 安倍氏は、「そんなこと当然だ」という口調で語ったのでした。だから私は、後に安倍氏が「北朝鮮政府が死亡したとした横田めぐみさんらの拉致被害者は生存している」「返還しないなら経済制裁を科す」などと主張しているのを聞いて驚いてしまったのです。

 安倍氏はまた、私との極秘会談の中で、北朝鮮と国交正常化を果たした後のビジョンについても、饒舌に語っていました。

 「これからは、東アジア経済が一体化していく時代です。それには北朝鮮と早く国交正常化し、北朝鮮も仲間に入れてあげることが大事です。北朝鮮は地下資源が豊富なすばらしい国で、日本の経済界も大いに注目しています。国交正常化を果たせば、日本の経済協力で、鉄道建設や鉱山開発など、北朝鮮のインフラ整備を進めていくことが可能なのです」

 私は安倍氏に、核問題が国交正常化の障害になるのではないかとの懸念をぶつけました。すると安倍氏は、次のように答えました。

 「核問題は、6カ国協議で議論することであって、日朝交渉とは関係ないし、アメリカの顔色をうかがう必要もありません。それに小泉首相はブッシュ大統領から絶大な信頼を得ているので、小泉首相が北朝鮮と国交正常化を果たすと言えば、ブッシュ大統領は受け入れます」

 北朝鮮が核実験を挙行すると宣言した今となって、随分と安易に考えていたものです。

 私はさらに、今後日本が北朝鮮に経済制裁を科すことはないのかとも確認しました。それについても安倍氏は、「アメリカが北朝鮮に経済制裁を科しても、日本は同意しません」と明確に答えました。経済制裁についても、後に日朝間を結ぶ「万景峰号」の入港を禁止したり、日本の金融機関と一部北朝鮮企業との取引を禁止したりといった措置を安倍氏が主導したことに、私は驚きを禁じ得ませんでした。

 全体的に安倍氏は、北朝鮮に対して極めて友好的な発言に終始し、金正日総書記を非難することもありませんでした。そして最後に、「どうか私の良き友達になってください」と頭を下げてきたのです。

 私は別れ際に、今後話を持ち込む北朝鮮の幹部にあてて、一筆書いてほしいと頼みました。そこで安倍氏側は次のように書きました。

 [○○先生(編集部注・崔氏が指定した人物名が書かれていた)
 前略 挨拶は後回しいたします。今般、崔秀鎮氏が来日し、お会いしました。多角的に多くの建設的な話を交わしました。今後の相互の意見交換について、崔氏に伝達しましたので、よろしくご検討のほど、お願い申し上げます。  早々
 日本政府内閣官房副長官
安倍晋三拝上  2003年8月18日]


“拉致の安倍”正体見たり


 安倍氏側は私が帰国した直後にも、再び面会したいと言ってきました。そこで8月25日、26日の両日、急遽訪中した安倍氏側近の飯塚洋政策秘書と北京で会いました。飯塚秘書は、次のように強調しました。

 「外務省の官僚たちと交渉しても、彼らには決裁権がありません。その点、安倍は小泉首相に直結していますので、安倍と北朝鮮の高官との会談を、至急セッティングしてください。そして安倍と北朝鮮高官との会談の結果、8人の拉致被害者家族が帰国できるようにしてほしいのです。安倍が会議する相手は、安倍の地位にふさわしい張成沢(金正日総書記の妹婿で元ナンバー2)がいい」

 この時の安倍氏側の意思は、平壌に行って北朝鮮の幹部に伝えました。私が面談した幹部は、金正日総書記から対日政策を一手に委任されている実力者です。

 しかしこの幹部は、安倍氏を交渉の窓口には選びませんでした。年が明けて、2004年5月に小泉前首相の再訪朝を機に、拉致被害者家族の8人が無事、日本へ帰国しました。結局、安倍氏と北朝鮮高官との会談は、幻に終わったのです。

 今にして思えば、安倍氏を相手にしなかった北朝鮮側の判断は正しかったと言えます。安倍氏の目的は、東アジアの冷戦を終結させることではなく、拉致問題を食いものにして、首相の座に上り詰めることだったからです。そして、今また、北朝鮮問題を利用して内閣支持率を上げようとしている。安倍首相は本当に、空虚な政治家です。





 以上が、崔秀鎮氏の証言だ。崔氏の話を聞く限り、安倍首相が行おうとしたのは、ひそかに北朝鮮に擦り寄る「媚朝外交」以外の何物でもない。「拉致の安倍」とたたえられた男の正体見たりである。

 安倍首相が拉致問題を利用してきたと見られる証言は、ほかにもある。安倍首相は、最大のライバルだった福田康夫元官房長官が辞任する直前の2004年春には、周囲に次のように本音を漏らしている。

 「私にとって拉致問題というのは、福田さんから身を守るためのパフォーマンス的要素があるのは事実だ。福田さんが私をつぶそうとしにくるので、私に自己防衛本能が働いて拉致問題を声高に叫ぶ。すると福田さんも私を無視できなくなる、という図式だ」

 安倍首相は前述のように、拉致担当大臣や補佐官を置いたり、拉致対策本部を立ち上げたり、首相就任4日目に拉致被害者家族と面会したりしている。だが拉致問題を解決するための、何ら具体的計画があるわけでもない。10月8日の日中首脳会談、9日の日韓首脳会談でも、拉致問題に関して両国に協力を要請するとしているが、会談の大半は北朝鮮の核実験問題に割かれるのは必至だ。

 安倍首相の北朝鮮に対する取り組みが、支持率を上げるためのパフォーマンスにすぎないことが、白日のもとにさらされつつある。
2006年10月21日号「週刊現代」2398 講談社


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