2009年8月20日5時0分
北朝鮮が昨年8月の日朝実務者協議の合意に基づき、日本人拉致問題を再調査する委員会を翌9月初頭に立ち上げる方針を固めていたことがわかった。具体的な発足日も日本側との調整の上で決めていた。しかし、直前の9月1日、当時の福田首相が辞意を表明したため、北朝鮮側は委員会の立ち上げを中止した。日本政府内には、福田氏が辞任しなければ再調査が始まった可能性もあったとの見方もある。
中国・瀋陽で昨年8月11、12両日に行われた日朝実務者協議で、北朝鮮側は「権限が与えられた調査委員会」を発足させて同年秋までに再調査終了をめざすことを約束。見返りとして日本側は、調査着手と同時に人の往来と航空チャーター便の規制を解除することで合意していた。
政府関係者によると、その後の日朝間の調整で委員会の発足日などを固めた。外務省から報告を受けた福田首相も了承していたという。
ところが、発足を目前に福田氏が退陣を表明。北朝鮮側は9月4日、「新政権が実務者協議の合意事項にどう対応するかを見極めるまで、調査開始は見合わせる」と日本政府に通告した。政府関係者は「調査委は発足寸前だった」と話す。北朝鮮側には、日朝国交正常化に意欲を示す福田政権への強い期待があったと見られる。
麻生政権の発足後、政府は「合意を実施する方針に変わりはない」として、調査の早期開始を北朝鮮に繰り返し求めてきた。北朝鮮側は昨年8月の合意を否定する見解は示していないものの、これまで具体的な回答はないという。
クリントン元米大統領は先の訪朝で、日本側の事前の要請を受け、金正日(キム・ジョンイル)総書記に再調査への着手を働きかけた。金総書記は特段の反応を示さなかったが、政府は拉致問題打開に向けて、再調査委員会発足を引き続き働きかけている。
日本政府内では「北朝鮮側は少なくとも総選挙後の新政権の北朝鮮政策を見極めるまで着手しない」との見方が支配的だ。今後、北朝鮮問題が米朝を軸に展開するとみられる中、新政権は拉致問題の解決に向け、米国との連携強化も課題となる。(東岡徹)