構造なんてどうでも良いさ! 2009.07
土木、建築、住宅業界のために日経が行っている「ケンプラッツ」という業界人向けの情報サイトがあります。私も会員になって見ているのですが、そこにおもしろい調査が載っていました。
それは、住宅会社がどの程度の割合で図面を書いているのか。というものなのですが、平面図や立面図と言った建築主との打合せに必要なものは書くのが当然ですが、それ以外にも工事に必要なものであったり、耐震性の程度が分かる図面といったものがあります。
そういった図面の中で基礎伏図や構造図はどの程度まで作成しているのか。耐震性の分かる壁量計算という図面はどの程度まで作っているのかをアンケートで調べたところ、下の図のような結果だったそうです。
日経BP社ケンプラッツより
。回答者112人(記事閲覧は、会員登録が必要です)
■基礎伏図
基礎伏図というのは、右図のように基礎の形を表すだけでなく、アンカーボルトの位置やホールダウン用のボルトの位置を表すなど、構造的には大事な図面の一つなのですが、全く作らずに建物を建てる業者が、なんと7%も存在し、自社で書けずに、外注している会社が21%にも上っているのです。
非常に多くの建築主。というよりもまずほとんどの建築主は例外なく『基礎は大事・・』と思っています。それなのに、基礎の工事でもっとも大事な基礎伏図も書かない業者がまだまだ存在しているという実態を、この調査は物語っています。
■壁量計算書(へきりょうけいさんしょ)
これは、その建物の耐震性がどの程度かを計る図面で、たとえば、建築基準法ギリギリの耐震性なのか、建築基準法に決められた強さの1.3倍程度の余裕がある・・と言ったことが分かる図面です。
しかし、この図面も8%程度が作成せず、48%もの会社が外注しています。
これも多くの建築主が、耐震性ぐらいは、建てる側がちゃんとしてくれているんだろう、と思うのは当然なのですが、そんなことお構いなしに、壁量計算書という図面を作らないことはもちろん、筋交いがどう入ろうと、適当に設計事務所がついでに書いてくれているワイ。といった調子で丸投げの住宅会社も存在しています。
(建売に多いでしょう)

上の表は壁量計算の結果の一例ですが、壁余裕度といった項目を見ると、建築基準法の何倍程度の余裕を持って設計されているかが分かります。一般的には、壁余裕度が1.35倍程度を越えると、耐震等級2前後の実力。壁余裕度が1.6を超えると、耐震等級3前後の実力を持っていると推定出来ます。サポートサービスの事例では、軸組工法で1.3倍前後(耐震等級2を少し下回る程度)
、2X4工法では1.5倍程度(耐震等級3を少し下回る程度)の実力を持った設計をしている建物が多いです。
注:壁余裕度の1.25倍が耐震等級2。1.5倍が 耐震等級3と間違って覚えている業者も多いですが、耐震等級は建物の1.2階の面積比、地域地震係数によって変化します。
補足:「図面ってなあに」で図面の目的や見方を説明しています。
住宅会社はキチンとしてくれているんだ〜。なんて『勝手に』思っていると大きな間違い。
このサイトが行っているサポートサービスでも、年に1.2件は、基礎伏図は書いていません・・とうそぶく業者がいます。
実は、「書いていません」という返事では無いんですね。
こういう返事をするほとんどの業者は、「書きません」と断定的に言います。きっと「そんなムダで金のかかるものは書く気もない」「基礎なんて基礎屋に任せておけばいいんだ」と言うのが本音なので「書きません」と断定的な口調になるのでしょう。
「この建物の耐震性は同程度ですか」と尋ねても、「わからん」と外注先の設計事務所に尋ねる業者もいますし、「とにかく基準法はクリアさせているから大丈夫です」と訳の分からない説明をする業者もいます。(サポートサービスでの実際の話ですよ)
確かに多くの業者はキチンと設計や工事をしています。
でも、
図面も書かず、構造なんてどうでも良いさ。。。と考えている業者が7〜8%。
自社で説明も設計も出来ない業者が2.3割はいるかも知れないのが、住宅業界です。
みんなキチンと建ててくれているんだろう〜とお人好しに考えているのは買い主、建築主だけ??。。。。
そして最も怖い問題は・・・・
「基礎伏図」も「壁量計算書」も書いていない。必要ない。と平気で回答していること自体が恐ろしいことなのです。
「構造なんて金にもならないことなんか、どうでもいいのさ!!」
と思っているのか、いないのか????
住宅業界って、そんなアブナイ業界なんですね。
.
|