「ヤクルト1-4阪神」(18日、神宮)
クライマックスシリーズ(CS)進出へ、奇跡を起こすぞ!!阪神のクレイグ・ブラゼル内野手(29)が、2戦連続V打にダメ押し11号ソロ。昨年から5連敗中だった鬼門・神宮での快勝劇で4位浮上。7月28日には最大13・5ゲーム差あった3位ヤクルトとの差は8・5に。空気が変わってきた。
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ゆっくりとダイヤモンドを一周した。本塁打を放った選手だけに許される球場でのひとり旅。ブラゼルの至福のひとときには特別の意味がある。
「ホームランを打てばホームにかえるまで、走る必要がない。英語では歩くという意味でトロット(Trot)という言葉を使うんだけどね。実はそれが生まれてくる息子の名前なんだ。彼が大きくなって、僕が引退していたとしても、父がどんな選手だったのか分かってもらいたいからね」
この一歩、一歩が未来につながる。まだ見ぬ息子がいつか知るであろう1発は、2点リードの八回に飛び出した。1死から萩原の初球、149キロの直球をフルスイングではじき返した。「ストライクがきたら思い切っていくつもりでいた」。打球は美しい放物線を描き、右翼席中段に達するダメ押し11号ソロとなった。
五回裏には300発の花火が神宮球場の右翼席後方の上空に打ち上げられた。2万1644人の観衆が夜空の大輪に歓声を上げたが、ブラゼルの特大花火には黄色い虎党が歓喜した。「敵地なのにほんとに阪神のファンはすごいよ」。初見参の神宮で、アウェーを感じさせない環境に心が躍らないわけはなかった。
大技だけではない。同点の四回には技ありの打撃で決勝点をたたき出した。無死一、二塁の場面、カウント2-2からの石川の5球目だ。見逃せばボールという外角へのカットボールに食らい付いた。「ああいうボールを最初から予測していた。追い込まれてからうまく打てた」。長いリーチを生かし、左線へ適時二塁打を放ち勝ち越しに成功した。
ミスもばん回した。一回に鳥谷からの送球を後逸。二回は無死一塁から武内のゴロをそらし、失点につながった。「2打点と2エラー。ほんとはこういう結果は残したくなかった」。そう反省したが最大13・5あったヤクルトとのゲーム差は8・5に縮小したのも事実。CS出場が遠い夢でなくなったのもブラゼルの力によるところも大きい。
「この3連戦は大きな戦いだと思ってた。この勝利は大きい」。Brazが本塁打の後の「トロット」を見せるたび、奇跡は近づくに違いない。