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《地殻変動:12》「地の人」コンビニに秋波

2009年8月5日

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写真設立大会では、コンビニ店主が民主党の小沢一郎・代表代行と記念撮影した。左端は姫井由美子参院議員=4日、岡山市北区、星賀亨弘撮影

 4日、岡山市で開かれた「コンビニ加盟店ユニオン」の設立大会。特別ゲストとして登壇した民主党の小沢一郎代表代行(67)は「コンビニは今や地域の顔としてなくてはならない存在。健全な経営を続けていけるように、民主党としては法律を整備したい」と力をこめた。

 小沢氏を引っ張り出したのは、地元選出の姫井由美子参院議員(50)。コンビニ加盟店は本部とフランチャイズ契約を結び、本部の意向によって値引き販売さえ自由にできない。その弱い立場を何とかしたいと、小沢氏に訴えたのは先月15日。店主らが組合結成に動き出していることを知らされると、小沢氏はひと言つぶやいた。「コンビニってのは地の人なんだよな」

 コンビニは全国に4万2千店。その店主らは地元で暮らし、自治会の役員や民生委員として地域に根付いている。従業員や客とその家族も含めると、数百万人に影響するともいわれる。

 地域の小売店や酒店の経営者らは、商工会など既存の組織に入っていて自民党など政党とのかかわりもある人が多い。しかし、本部から店舗を借り、夫婦とアルバイトでやりくりするような多くのコンビニ店主はそうした枠に入らない。どの政党もまだ手を伸ばしていない層だった。

 小沢氏の決断は早かった。その日のうちに組合結成に動く店主たちと会い、衆院解散の直後には、岡山の設立総会を日程に入れるよう党職員に指示した。

 ユニオン設立にこぎつけたものの、組合員の多くがセブン―イレブンの店主たちで、まだ約260人。支持組織としての足元はおぼつかない。それだけに加盟店ユニオンの藪木裕之・副委員長(46)は、実際に小沢氏がやってくるとは大会直前まで信じられなかった。

 大手スーパーなどで働き、01年に独立して岡山県内でセブン―イレブンを営む。06年の年間売上高は2億7千万円にのぼったが、利益の多くは本部が吸い上げ、手元に残ったのは740万円。廃棄する弁当などの原価を加盟店が負担するという契約のためだ。消費期限の迫った商品を値引きして販売すると、損失は抑えられ、捨てる弁当も大幅に減った。だが、本部の担当者は「店のイメージが壊れる」「利益が減る」と値引きをやめるよう圧力をかけてきた。

 各党の政治家たちには数年前から働きかけていたが、風向きが変わったのは2月。セブン―イレブン・ジャパンへの公正取引委員会の調査が発覚し、姫井氏が国会の委員会でこの問題を取り上げた。

 ユニオンが政治に期待するのは、本部に対して弱い立場の加盟店を守るためのフランチャイズ法の制定だ。特定の政党の支持は掲げないが、民主支持は「暗黙の了解」だ。

 民主党はマニフェストに「中小企業いじめ防止法」を盛り込んだ。大会で小沢氏は「大企業による不公正な取引を禁止することをマニフェストでも明確にうたっている。本部とコンビニ各店舗の契約もこの法律の適用対象にする」と明言した。

 藪木副委員長らは窮状を訴える要望書を小沢氏に手渡し、握手をかわした。「これでフランチャイズ法ができるような気がした」

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