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ブナの実「凶作」でクマ出没減? 県が豊凶予測まとめる

2008年09月26日 09:26
トラップに落ちたブナの雄花序や葉などを一つ一つ分類していく県環境科学研究センターの伊藤聡主任専門研究員=村山市・同センター
トラップに落ちたブナの雄花序や葉などを一つ一つ分類していく県環境科学研究センターの伊藤聡主任専門研究員=村山市・同センター
 県は2008年度のブナの実の豊凶予測をまとめた。県内の今秋の実は15調査個所すべてで「凶作」だった。ブナ林は県の森林面積の約3割を占め、多くの野生生物の生息地となり、餌の供給源として大きな役割を果たしている。ブナの実の豊凶はクマの出没とも密接な関係があるとされ、県の担当者はこれまでの傾向などから「今秋から来春にかけてのクマの出没はそれほど多くないのではないか」としている。

 県は03年度から試験的に予測調査を始め、07年度からは「やまがた緑環境税」を活用し本格的な調査を行っている。森林の生態系の変化を把握するのが主な目的。クマの出没との因果関係にも注目し、「クマの出没警報などに活用し、被害軽減に役立てたい」(県の担当者)との狙いもある。県環境科学研究センターが中心となって調査に当たっている。

 調査は4月から7月にかけて県内15カ所で実施した。ブナの木の根元付近にトラップを設置し、落ちてきた雄花序(雄花の集合したもの)を数え、同センターが開発した方式で今年の雌花の数を推定。さらに、北海道立林業試験場が開発した方法で今秋の豊凶を予測している。

 ブナの実は5−7年に1度大豊作となるといわれるが、県内では03、04年とも凶作で、05年はほぼ豊作、06年は凶作、07年は凶作だが一部で並作という結果だった。クマの出没との関係についてこれまでの傾向などから、県は「その年が凶作で、前年が凶作でなかった場合に秋からのクマの出没数が増える可能性があるのではないか」とする。前年の実のなりが良いためにクマの個体数が増え、凶作の年に餌不足に陥ることが要因とみられる。

 クマが食べるのはブナの実だけではないため、実のなりとクマの出没傾向との関係はまだ研究段階。県は今後も調査を継続し、生態系の変化などを把握していく必要があるとしている。県環境科学研究センターの伊藤聡主任専門研究員も「餌となるブナなど木の実の豊凶が生き物に影響を与えているのは間違いない。地道な調査を通して現状を把握していないと生態系の異変を察知できない」とし、継続的な調査の必要性を指摘している。



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