比例名簿 どれもこれも「小沢銘柄」と不満も
8月19日21時2分配信 産経新聞
衆院選公示日の18日。大阪・難波で第一声を上げた民主党の鳩山由紀夫代表は、京都、愛知など5府県を精力的に駆け足で回った後、この日最後の遊説先となった東京・四谷でも、頬(ほほ)を紅潮させながら熱弁をふるった。
「みなさんの暮らしのため、未来のために、政権交代をしなければこの国がもたない。民主党に力を貸してください」
衆院選で民主党の優勢が伝えられる中、「鳩山首相」誕生の現実味は日ごとに高まっている。だが、金看板の政治主導による政権運営に、どこまで実効性があるのか。連立相手と目される社民、国民新両党と、溝の深い外交・安保政策などをめぐり、不協和音が生じないのか…。政権の輪郭はあいまいなまま、「政権交代」の言葉だけが先走っている。
民主党の比例代表名簿登載の最終調整がもめにもめた17日夜。小沢一郎代表代行は、党愛知県連から提出された候補の推薦リストに名前があった前田雄吉前衆院議員に電話を入れた。
「次があるから、今回は出るな」
前田氏は昨年10月、マルチ商法業界から献金を受け取った責任をとり、民主党離党を余儀なくされ、衆院選への不出馬を表明していた。在籍中は、小沢グループ「一新会」事務局長を務め、小沢氏の腹心として、党内外に知られた存在だ。
名簿登載順位の調整が難航したのは、選挙情勢が民主党にとって好調に推移し、通常なら当選しそうにない名簿下位の比例単独候補にも議席獲得の可能性が高まってきたからだ。はじめから当選が不可能と分かっていれば、あきらめもつくが、当選可能性があるだけに、下位の順位争いは熾烈(しれつ)をきわめた。
「剛腕でもめ事を解決できるのは小沢氏だけ」(党関係者)
調整は小沢氏に一任された。その結果、18日午前に発表された名簿には「小沢の影」がちらつく。
実際、小沢氏に近い、名簿登載が決まった候補者は「寝耳に水だ。今から選挙運動の準備をしないと」と、思わぬ朗報に驚き、名簿作成が小沢氏主導で進められたことをうかがわせた。北陸・信越ブロックのある参院議員は「順位に差がついた理由がわからない」と地元支持者への釈明を余儀なくされた。
南関東ブロックの選挙区候補は不満を隠さない。 「名簿は不可解なことだらけだ。どれもこれも『小沢銘柄』じゃないのか」
「県内全選挙区で民主候補が当選する」「『民主党政権』になったら私は入閣する」−。
3日、党本部で開かれた鳩山氏や岡田克也幹事長らによる三役懇談会では、選挙戦でこんな発言を繰り返していた幹部が、名指しで批判された。出席者のひとりは、「選挙戦が緩んでいないか」と警鐘を鳴らした。この幹部が憂慮するように、民主党の選挙態勢が緩みつつあるのは事実だ。
しかし、民主党の未来は、楽勝ムードに酔っていられるほど安定しているわけではない。鳩山氏だけでなく小沢氏の政治資金問題をはじめ、多くの落とし穴が待ち構えているのだ。
「鳩山氏は考え込んでしまうタイプなので、変な情報を入れるな」
小沢氏は今月中旬、党関係者にこう指示した。鳩山氏が自身の政治金収支報告書の虚偽記載問題で悩み込んでしまうことを心配したらしい。だが、選挙期間中は、頭から追い出せたとしても、虚偽記載問題は衆院選後も民主党につきまとう。政権交代が実現しても、今秋に召集予定の臨時国会で、「野党・自民党」が矛先を向けるのは間違いないからだ。
「政権をとり、政治に対する信頼を取り戻したい」
鳩山氏は19日、青森県八戸市の遊説で、こう訴えた。だが、自身の「政治とカネ」問題でつまずけば、「民主党政権」に対する世論の期待は一気にしぼむ。(松本浩史)
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「みなさんの暮らしのため、未来のために、政権交代をしなければこの国がもたない。民主党に力を貸してください」
衆院選で民主党の優勢が伝えられる中、「鳩山首相」誕生の現実味は日ごとに高まっている。だが、金看板の政治主導による政権運営に、どこまで実効性があるのか。連立相手と目される社民、国民新両党と、溝の深い外交・安保政策などをめぐり、不協和音が生じないのか…。政権の輪郭はあいまいなまま、「政権交代」の言葉だけが先走っている。
民主党の比例代表名簿登載の最終調整がもめにもめた17日夜。小沢一郎代表代行は、党愛知県連から提出された候補の推薦リストに名前があった前田雄吉前衆院議員に電話を入れた。
「次があるから、今回は出るな」
前田氏は昨年10月、マルチ商法業界から献金を受け取った責任をとり、民主党離党を余儀なくされ、衆院選への不出馬を表明していた。在籍中は、小沢グループ「一新会」事務局長を務め、小沢氏の腹心として、党内外に知られた存在だ。
名簿登載順位の調整が難航したのは、選挙情勢が民主党にとって好調に推移し、通常なら当選しそうにない名簿下位の比例単独候補にも議席獲得の可能性が高まってきたからだ。はじめから当選が不可能と分かっていれば、あきらめもつくが、当選可能性があるだけに、下位の順位争いは熾烈(しれつ)をきわめた。
「剛腕でもめ事を解決できるのは小沢氏だけ」(党関係者)
調整は小沢氏に一任された。その結果、18日午前に発表された名簿には「小沢の影」がちらつく。
実際、小沢氏に近い、名簿登載が決まった候補者は「寝耳に水だ。今から選挙運動の準備をしないと」と、思わぬ朗報に驚き、名簿作成が小沢氏主導で進められたことをうかがわせた。北陸・信越ブロックのある参院議員は「順位に差がついた理由がわからない」と地元支持者への釈明を余儀なくされた。
南関東ブロックの選挙区候補は不満を隠さない。 「名簿は不可解なことだらけだ。どれもこれも『小沢銘柄』じゃないのか」
「県内全選挙区で民主候補が当選する」「『民主党政権』になったら私は入閣する」−。
3日、党本部で開かれた鳩山氏や岡田克也幹事長らによる三役懇談会では、選挙戦でこんな発言を繰り返していた幹部が、名指しで批判された。出席者のひとりは、「選挙戦が緩んでいないか」と警鐘を鳴らした。この幹部が憂慮するように、民主党の選挙態勢が緩みつつあるのは事実だ。
しかし、民主党の未来は、楽勝ムードに酔っていられるほど安定しているわけではない。鳩山氏だけでなく小沢氏の政治資金問題をはじめ、多くの落とし穴が待ち構えているのだ。
「鳩山氏は考え込んでしまうタイプなので、変な情報を入れるな」
小沢氏は今月中旬、党関係者にこう指示した。鳩山氏が自身の政治金収支報告書の虚偽記載問題で悩み込んでしまうことを心配したらしい。だが、選挙期間中は、頭から追い出せたとしても、虚偽記載問題は衆院選後も民主党につきまとう。政権交代が実現しても、今秋に召集予定の臨時国会で、「野党・自民党」が矛先を向けるのは間違いないからだ。
「政権をとり、政治に対する信頼を取り戻したい」
鳩山氏は19日、青森県八戸市の遊説で、こう訴えた。だが、自身の「政治とカネ」問題でつまずけば、「民主党政権」に対する世論の期待は一気にしぼむ。(松本浩史)
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最終更新:8月19日21時2分
- 鳩山由紀夫(はとやまゆきお)
-
- 所属院 選挙区 政党:
- 衆議院 北海道第9区 民主党
- プロフィール:
- 1947年2月11日生 初当選/1986年 当選回数/7回
- (写真提供:時事通信社)