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歌舞伎:石川五右衛門(新橋演舞場)

 ◇見せ場次々、海老蔵の魅力存分に

 安土桃山時代の大盗賊を主人公にした新作歌舞伎。樹林伸の作、川崎哲男と松岡亮の脚本、奈河彰輔の監修、藤間勘十郎の振り付け・演出。

 伊賀で忍術を会得した五右衛門(海老蔵)は、聚楽第(じゅらくだい)に忍び入ってお茶々(七之助)と恋仲になる。そして豊臣秀吉(團十郎)を呼び出し、南禅寺で対決する。

 「南禅寺山門」で五右衛門が見えをしての「絶景かな」や、宙乗りで葛籠(つづら)から姿を現す「葛籠抜け」など、既存の歌舞伎の「五右衛門物」でおなじみの名場面も登場する。

 「大坂城天守閣大屋根」では、生きるかのごとくに暴れる金の鯱(しゃち)と格闘する「鯉(こい)つかみ」さながらのくだりもあるなど、娯楽性に富む。百地三太夫(猿弥)からの術譲り、霧隠才蔵(市川右近)との対決、お茶々との色模様など、各場に見せ場が用意されている。

 筋を追うよりも、次々に提示される変化に富んだ場面を楽しむべき作品だ。話の流れが分かりづらい面はあるが、整合性やつじつま合わせではなく、場面ごとのおもしろさを重視している。その点では、新作ながら古典歌舞伎的な構えを持った作品とも言える。

 海老蔵がほとんどの場面に登場し、魅力を存分に打ち出している。柄が大きく目が利き、見えがよく決まり、大泥棒の雰囲気が表現された。「南禅寺山門楼上内陣」での秀吉との対面では、両者のかかわりが明らかにされる。團十郎が天下人にふさわしい一枚上の老獪(ろうかい)さを示した。27日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2009年8月19日 東京夕刊

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