2009総選挙
衆院選が公示された。政権選択を賭けたホットな戦いが全国各地で始まった
【社会】背水 大物サバイバル2009年8月18日 夕刊 「政権選択」が最大争点となる衆院選が十八日公示され、候補者は一斉に街に飛び出した。子育て、雇用、医療、年金…。生活の難題が山積する中、各党のマニフェストに、かつてないほど有権者の関心は高まる。自公政権の継続か政権交代か。投票まであと十二日。生き残りを懸けた最後の戦いが始まった。 ◆東京17区 風を読み合い訴え必死東京17区の自民前職平沢勝栄さん(63)は、葛飾区宝町の選挙事務所で第一声。全国区の知名度を持つ一方、地元の会合などに小まめに顔を出し、前回は民主候補に二倍以上の票差で勝った。だが、党への逆風を肌身で感じる今回、応援要請も断り選挙区を駆け回る。 平沢さんは約五百人の支援者を前に、「自民党にとって大逆風の中での選挙。個人対個人の選挙ではなく、党対党の戦いとなり厳しいが、選挙区に張り付いて全力で頑張りたい」と声を張り上げた。 民主新人の早川久美子さん(38)は、スタッフとそろいのピンクのポロシャツ姿でJR亀有駅前に立ち、戦いの火ぶたを切った。葛飾で生まれ育った“地元っ子”をアピールし、駅頭などで「生活を守るために政権交代を」と訴え続けてきた。 早川さんは「私が挑む相手は、めちゃくちゃ強い選挙の怪物、選挙の横綱。しかし、この一カ月で風が変わってきた」と強調。「政権交代の準備は完了。実現するのはみなさん方の気持ちです」と支持を呼び掛けた。 共産新人の新井杉生さん(50)は、葛飾区立石の事務所前で第一声。「暮らしや雇用を破壊してきた自公政権を終わらせた後、どの方向にかじ取りをしていくのかを選択する選挙。憲法を守り、消費税増税には反対する」と、他党との違いを訴えた。 ◆東京12区 自公の壁『刺客』どこまで自民、公明の選挙協力を象徴する東京12区は、自民が後押しする公明代表の前職太田昭宏さん(63)に、民主の小沢一郎代表代行が「刺客」として送り込んだまな弟子の前参院議員青木愛さん(44)が挑む。 太田さんは与党への厳しい逆風の中、他候補の応援にも奔走しなければならない立場。今回は横浜市の公明候補の街頭演説で第一声を上げた。「政権選択と言われるが、中身が大事。政策の一貫性や実行力が問われます」 医療、介護、子育て支援、若者の雇用を選挙戦の柱にすると訴え、「政治は行動しなければ意味がない。民主は仕事をしていない」と批判した。 この日が誕生日という青木さん。北区の選挙事務所前で第一声に臨んだ。民主大物の応援はなく、地元議員や支持者が見守る中、「大変厳しい選挙区ですが、あと一歩のところまで来ていると思います」と力を込める。 「ここ東京12区で民主の一議席を勝ち取ることが私の役目。政権交代で国民の暮らしを守る政治をみなさんと一緒に実現したいと思います」と訴えた。 共産新人の池内沙織さん(26)も届け出を終えるや事務所前で出陣式。若さを前面に出し若者の雇用問題や格差解消などを訴えた。 ◆北海道11区 第一声、おわびから「わたし自身のこと、党のこと、いろんなことがあった。支援していただいた方にご迷惑ご心配を掛け心からおわびと感謝をしたい」 北海道11区で九選を目指す自民の前財務相中川昭一さん(56)は、帯広市の選挙事務所前で行った第一声で冒頭、二月のローマでの「もうろう会見」などについて謝罪した。民主の政策も批判。「頑張っている人が報われる十勝、日本をつくっていかなければならない」とも呼び掛けた。 中川さんと二度目の対決となる民主前職の石川知裕さん(36)も同市内で街頭演説。「小手先の改革では地域の疲弊を変えることはできない。政権交代し大きな枠組みを変えることが必要」と訴えた。共産新人の渡辺紫さん(60)も「国民が主人公の政治を実現するため全力を挙げていく」と述べた。 ◆長崎2区 『どぶ板』VS『変化』「変化を恐れないでください」。長崎2区で自民前職の元防衛相久間章生さん(68)に挑む民主新人の福田衣里子さん(28)は午前十時すぎ、長崎県諫早市で第一声を上げた。 白いポロシャツに七分丈のパンツ姿で若さをアピール。「今は強い者のための政治。弱い立場の人は軽んじられ、声が届かない。今変えなければ間に合わない」と約五百人に訴えた。 薬害肝炎訴訟の元九州原告団長。実名を公表し、国と対峙(たいじ)する姿が象徴的存在となり、民主の小沢一郎代表代行から出馬を口説かれた。 一方の久間さん。同県時津町で約四百人に「自分の選挙でたすきを掛けたのは十四年ぶり。逆風を痛切に感じている」。議員生活二十九年の経験と実績を強調。「(福田氏は)2区のことをあまり分かっていない方」と自負をにじませた。 二〇〇七年に米国の原爆投下について「しょうがない」と発言。強い反発を招いた。これまではほとんど地元に戻らなかったが昨秋からは毎週のように選挙区へ。当選九回を重ね閣僚や党の要職を歴任した大物が地域の集まりを小まめに回る「どぶ板選挙」に徹する。 ◆石川2区 逆風には『実績』で石川2区では、十四期連続当選を目指す自民前職の元首相森喜朗さん(72)が「えたいの知れない風や雲が、自民党と私を追い込んでくる。厳しい選挙。経験と実績で頑張りたい」と逆風に触れながら第一声。 大物に挑む「刺客」候補で民主新人の田中美絵子さん(33)は「石川から日本を変えていきたい」と訴え、自転車に乗って選挙戦をスタートした。 森さんは石川県小松市内の神社で必勝祈願祭と出陣式に出席。終始硬い表情を崩さなかった。陣営は、派遣社員だった田中さんの経歴を取り上げ「素人」「派遣で国会議員の資質が備わるのか」などとネガティブキャンペーンを展開。田中陣営が「森を伐採する」と攻勢を強めるのに対抗し、「もりあげ隊」と書かれた緑ののぼりを持った支援者の姿も見られた。 田中さんは、小松市内の神社で祈願祭と出陣式を行い、イメージカラーのピンクのシャツと白のパンツルックで登場。「地方の疲弊は自民党政治の責任」「政権交代を」などと力説した。自転車で街頭に出ると、沿道では家から出てきて手を振る住民もいた。
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