8月18日更新
FMCの旗揚げ戦は驚愕の事態が続出! 選手大量欠場で国際法廷闘争の可能性も!? 秋山がUFCでのワセリン問題に言及!!
韓国では先週、8月16日、新しいMMAイベントであるFMCの旗揚げ大会が開催された。しかし、このFMCの旗揚げ戦は史上稀に見る大混乱の大会となった。主催者側と日本の選手団はギャランティの未支払い問題などでおおいに揉め、最終的には日本から出場するはずだった10選手のうち7選手が大会直前で欠場。3選手のみが試合に出場するという韓国格闘技史上に残るズンドコな大会となった。今週はそのFMCの詳細情報を中心にお伝えします。
■選手の大量欠場、出国禁止の脅迫……FMC旗揚げ戦は驚愕のズンドコ大会に
韓国の新生MMAイベント『FMC1〜譲れない勝負〜』は、低迷する韓国格闘技界において8月16日に10 vs 10 日韓対抗戦を開催するとブチ上げ、新たなメジャーイベントしての地位を確立すべく、大会の準備を続けていた。この大会には和術慧舟會ルートで7人の選手、日本のCMA&韓国のカイザーというルートで3人、合わせて10選手が14日に韓国入り。筆者は和術慧舟會からの依頼により、通訳&現地案内として和術慧舟會組とともに全行程に同行した。慧舟會側からの許可を得て、韓国での主催者との交渉過程や舞台裏などをここに紹介する。CMA&カイザールートで出場した選手は慧舟會とは別契約のものであるため、ここでは割愛する。
14日、日本人全選手は無事韓国入りしたものの、すでに主催者が大会7日前に支払うべき前金を支払っていなかったことが問題となっていた。出国前になっても支払いがなかったため、慧舟會側は選手の出国を取りやめる予定だったが、韓国の主催者が「大会前日の15日までには支払う。その期日までに支払えなければ、大会に出場しなくてもいいから出国だけでもさせてくれ」と懇願したため、慧舟會側は了承して韓国入りしたが、結局、主催者は15日にも約束の金額を支払わず。だが主催者は、さらに大会当日の昼12時までに期日を延ばすことを提案。大会出場に備えてきた選手のことを考え、慧舟會側はさらに譲歩し、翌日の12時まで待つことにした。しかし、大会当日の午前中には主催者が発注したリング屋がお金を持ち逃げするズンドコ事件も発覚し、大会中止が濃厚となる。なんとかFMCは別の団体からリングを借り入れて準備を進めたものの、慧舟會側には約束の昼の12時に金額を払うことができなかった。この時点で慧舟會側は主催者が契約を履行しなかったとして選手の欠場を決定した。
なおも主催者側は「会場に来ればギャランティの全額を支払う」としたものの、開始時間が過ぎてもこれは支払われなかった。大会の開催時間が大幅に遅れた状況で、主催者はようやく全額を用意し、慧舟會側の選手に出場する意志があるか問うたが、ギャラ問題に加え、アップする時間、リングチェック、メディカルチェックすらない状況などの問題があったことから、多くの選手は出場の意思がないことを主催者に伝えた。その後、試合する意志のある慧舟會の数名の選手が主催者の再交渉を行なったが、これも不調に終わり、和術慧舟會がブッキングした選手団は試合をせず会場をあとにした。主催者は仕方なく、当初10試合の予定を、梅田恒介 vs チョン・ドゥジェ、松下直樹 vs イム・ジャンヨン、中村“アイアン”浩士 vs キム・ジョンマンとオープニングファイトの計4試合に変更して大会開催を強行したものの、韓国人は日本人に全敗という結果に終わり、大会を中継するはずだったMBCも放送をキャンセルした。
大会後、主催者は本来レフェリーを務めるために選手団に同行していた和術慧舟會のスタッフを呼び出し、契約を破って試合に出場しなかったのは日本側に責任があると強硬に主張し、ギャランティの全額没収、契約金の10倍の賠償を含む多額の損害賠償を請求。ギャラを返還しない場合はホテルから追い出し、関係者全員に出国禁止の申請をすると一方的に通告した。拘束される選手やセコンドの安全を考え、慧舟會側はその場でギャランティの全額を返却したが、主催者はなおも「今回の航空機代、ホテル代、食費をすべての経費を慧舟會が負担するという書類にサインしないとチケットを取り消す」という無理な要求を突きつけたため、慧舟會側は韓国の日本大使館と相談したうえで、今後は弁護士を通して対応することに決め、送迎を拒否された全選手を連れて空港に移動。実際にキャンセルされた数名のチケットを空港で買い直し、なんとか17日に全員帰国した。
17日に韓国の格闘技ニュースサイト『MFIGHT』が報じたところによると、FMCのキム・ジョンミン代表は「契約金を定められた日に入金できなかった過ちは認める」としたものの、試合カードが大幅に縮小された結果、MBCの中継が中止になった損害額、さらには大会のスポンサーを務めた10数社からの被害額、日本人の対戦相手のギャランティを含めた国際訴訟を和術慧舟會側相手に行なうことを発表している。一方、和術慧舟會側も在日韓国大使館に今回の被害を訴えるなど、問題の対処に乗り出している。なお、現時点で主催者が慧舟會側への賠償請求の項目に入れている韓国人選手のギャランティは、日本人選手と同様に一切支払われていなかったことが判明しているほか、前日の公開計量では数百グラムの誤差がある不正確な体重計でそのまま計量を強行したこと、直前のルール変更、契約書に明記してあったメディカルチェックの不履行など、大会開催の不備があまりに多かったことが確認されている。FMCの旗揚げ戦は、主催者のずさんな大会進行により、舞台裏も含めて文字どおり“譲れない勝負”となり、日韓の選手・関係者のみならず、チケットを購入した格闘技ファンも大きな被害を受ける皮肉な結果となった。

■秋山成勲が韓国で勝利報告会見を実施!
14日、秋山成勲が韓国でキム・ドンヒョンとともに記者会見に臨み、UFCの勝利報告を行なった。まず秋山はUFCでのデビュー戦について「初めての試合だったので足りない点が多かったが、いま考えると非常におもしろい試合だったと思う。UFCでは自分より優れた実力の選手が多い。勝つには勝ったが簡単な試合ではなかった」と振り返った。判定勝ちしたアラン・ベルチャーについて「体格が大きくて圧力を感じた」と評した秋山は、「ミドル級では身体が小さいという話を聞くが、自分にとって現在のミドル級は技術を発揮するのに最適な階級だと思う。ウェルター級に減量することはできるが、そこでどれぐらいの力が出せるかわからない」と今後もミドル級で試合をすると明言。そのミドル級には『UFC101』で一階級上のフォレスト・グリフィンに圧勝した王者アンデウソン・シウバがいるが、秋山成勲は「いまの自分の実力ではアンデウソンには絶対勝てない。まずはもっとトレーニングを積むことだけを考えている」と謙虚にコメント。『UFC100』出場後に病院に見舞いにきたキム・ドンヒョンについて質問が出ると、「わざわざ見舞いに来てくれて驚いた。一緒の大会に出場したが、自分は病院で横になっているのに、キム選手はしっかりと歩いているので『自分は試合もまともにできなかったのか』と思ったりもした。ただ、もともとキム選手とは顔見知りで一緒にトレーニングをしたこともあるので、すぐに気分は楽になった。もし次の試合が組まれたらチーム・クラウドで一緒に練習しようと話した」とコメント。今後は共同戦線を組む予定もあるとした。
会見では、ここから厳しい質問が相次いだ。ある記者は「ジョルジュ・サンピエール(GSP)が以前、試合でワセリンを塗って問題になったが、過去にクリーム塗布で懲戒を受けた人物として、試合中にそのことが気にならなかったか?」と質問。すると秋山は「試合に集中していただけなのでほかのことは考えていなかった。ワセリンのことについてはUFC側が判断する問題であって、自分は話す立場にない」と受け流す。さらに記者が「最近は韓国で批判する世論が多くなっているが、それについてどう思うか?」と質問すると、秋山は「プロだったらさまざまなことをしなければなければならない。ファイターの姿を見せることも重要だが、また違った姿を見せることも大切だと思う。これからはもっと変化が必要だと思うし、批判は自分が責任をもって甘受する。人生においてお金が大切なのは誰もが知っていることだし、昔、自分も失敗して大金を失なったことがある。これからも多様な活動でお金をもらえるなら、それはいいことだと思うし、何に対しても一生懸命やって両親に立派な家を買って上げたい」と回答した。秋山成勲のUFC次戦は「手術したばかりだし、まだわからない。とりあえず結果を待たなければ」と答え、未定であるとした。FMCの大会前後、秋山成勲は韓国に滞在しながら自伝の発売記念サイン会やテレビ出演など、多くのプロモーション活動を行ない、現在は日本に帰国している。
以上、今週の韓国格闘技情報でした。来週もお楽しみに!