2009年8月18日3時3分
国旗国歌法の草案。「国民は」が線で消され、修正されている
■3条 国旗及び国歌は、尊重されなければならない。
関氏「誰の何に対する義務なのかと宿題を出しても答えがなかった。条文を残しておきたいならと、とりあえず主語を消して仮置きしたのではなかったか」
このころ、古川副長官は三つの柱を示していた。(1)1条と2条でいくのが基本(2)3条の検討は続ける(3)議員提案ではなく、政府提案の法律にする――第3次案にそんなメモが書かれている。
古川氏「3条のようなものが必要だという議論はあり、草案は幅広めにつくったように思う。私自身は早くから、国旗国歌とはこういうものだと示せば十分ではないかと考えていた。尊重義務などを書けば、罰則がなくても『義務を守らないのは、けしからん』などと言い出す人がいるかもしれない。そうした余地はないほうがいい」
野中氏「3条について古川君から相談を受けたことがある。『残した方がいいですかね』と言うので、『残さん方がいいでしょう』と答えた。3条は火種になる。政争の具にすべきではないと思ったからだ」
4月27日付の第4次案はこうなっている。
■3条 国旗及び国歌は、尊厳が保たれるように扱われなければならない。
この後はもう議論は交わされなかった。翌28日付の5次案では3条の尊重義務は姿を消す。5月10日、これがそのまま法案となり、8月9日成立した。
大森政輔・元内閣法制局長官「成立直後の8月15日、政府主催の全国戦没者追悼式で『国歌斉唱、ご唱和願います』と放送が流れた。国会で『義務を課すものではない』と言っていたのに非常に違和感を持った。君が代を歌わないととやかく言われたり、国旗に敬礼しなければいけなかったりする社会は窮屈だ。歌いたくなければ歌わずに済む社会が私はいい」