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修正重ね「義務」消えた 99年国旗国歌法草案 (1/3ページ)

2009年8月18日3時3分

写真:国旗国歌法の草案。「国民は」が線で消され、修正されている国旗国歌法の草案。「国民は」が線で消され、修正されている

 ちょうど10年前、99年に成立した国旗国歌法の政府草案が成案になるまでの経緯が情報公開法で入手した資料や関係者の証言から明らかになった。「国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」。そんな義務規定が国会に提案される前に削られていた。なぜか。

 東京都内で、当時の官房長官だった野中広務氏に、手に入れた国旗国歌法の草案を示した。A4判で20枚ほどだ。「こんな紙は初めて見る」と野中氏は言った。

 まず、99年3月26日の1次草案。1条と2条で日の丸・君が代を国旗・国歌と短く定めた後、こう続いている。

■3条 国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。 2 国及び地方公共団体は、政令の定めるところによりその管理する建造物において国旗を掲揚しなければならない。 3 国民は、祝日に国旗を掲揚するよう努めるものとする。

 約1カ月前、広島の県立高の校長が卒業式を前に自殺。式典で「日の丸掲揚・君が代斉唱」を求める県教委と反対する教師との板挟みになっていた。これを機に野中氏は法制化を決断。古川貞二郎官房副長官の下にチームが作られた。

 野中氏「こんなことで人を死なすのは不幸だと考えた。『総理、法制化させてもらえませんか』と言ったら、小渕総理は『おれ、やらないって言ったばかりだよ』と。法制化しないと1週間前の参院で発言したばかりだった。『(国会を)通るか、君』と言うので『大丈夫ですよ』と言うたんですよ」

 4月16日の第2次案。3条の1項だけが残っている。

■3条 国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。

 政府が国会に提出する法案は、各省庁と内閣法制局がやりとりを繰り返す中で固まっていく。国旗国歌法の担当だった法制局第2部の関裕行参事官は「例えば君が代の旋律を変えて演奏したら尊重しないことになるのか」などとチームに質問を投げた。そして「国民は」の文字に線を引き、修正を加えた。それが4月19日付の3次案となる。

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