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世界記録の伸び加速? 歴史変えたボルトの激走

8月17日16時42分配信 産経新聞

 世界陸上男子100メートルで世界新記録となる9秒58をたたき出したウサイン・ボルト(ジャマイカ)。人類初の9秒5台というこの快挙に、専門家からも「規格外」との声が上がった。

 100メートルの記録について、世界記録の変遷などを集計して「2050年までに9秒55」と予測していたのはバイオメカニクスを専門とする早稲田大学人間科学部の鈴木秀次教授。今回で残り0秒03にまで迫られた鈴木教授は「今回のレースは追い風0・9メートル。もし公認ぎりぎりの追い風2メートルだったら9秒55は出ていたでしょう」と話す。今回の世界新は、歴史の流れを40年も早める快挙だった。

 鈴木教授は世界記録更新の条件として、(1)瞬発力が高い速筋の割合が多い(2)小柄な体格(3)動物的本能で無心で走る、の3点を挙げていた。196センチ、86キロのボルトの出現は(2)の条件を覆すものとなったが、鈴木教授は(3)を重く見る。

 「空気抵抗やスタートへの反応などで大型選手は短距離に不向きとされていました。ボルトの場合、この不利な条件を野生動物の本能のような走りでカバーした。『膝から下の筋肉で加速する』という従来の走りでなく、『腰まわりで体を動かして長い足で加速する』という走りがそうです」

 短距離走の場合、走り始めは太ももの前後の筋肉が交互に収縮することでスピードを増していくが、トップスピードに乗ると「もっと早く」の意識から両方の筋肉が同時に収縮する「共縮」現象が起こってしまうという。ボルトの驚異的な加速はこの共縮を本能的に回避していることで実現していると思われ、鈴木教授は「あの朗らかで物怖じしない性格が動物的な集中力を高めているのでは」と想像する。

 人類の限界についてはこれまで、「9秒3」(筑波大の阿江通良教授)、「9秒25」(明海大の岡野進教授)、「9秒48」(スタンフォード大のマーク・デニー教授)など、数々の予測が上げられてきた。いずれも記録の伸びを統計的に加味して算出した結果だが、鈴木教授は「今回の記録で上昇曲線が少し上向いたことは間違いないでしょう」としている。(大野正利)

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最終更新:8月17日21時34分

産経新聞

 

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