5月16日付朝日新聞社説
http://www.asahi.com/paper/editorial20090516.html#Edit2
ミャンマー情勢―政府はもっと危機感を
ミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが訴追され、刑務所に勾留(こうりゅう)された。週明けからの公判で有罪判決が出れば最高5年の禁固刑が科せられる。
軍事政権は昨年採択した憲法に従って来年、総選挙を行う予定だ。スー・チーさんの自由が奪われることによって選挙後、軍の支配がさらに強まり、民主化と安定への道が遠ざかることにもなりかねない。
米国人観光客が湖を泳いで渡り、スー・チーさんの自宅に侵入した。その男の滞在を許し、当局に報告しなかったことが罪になるという。
これには首をかしげざるをえない。責任が問われるとすれば厳重な警戒網を破られた当局の方であって、過去6年にわたって自宅軟禁されているスー・チーさんではない。
健康状態の悪化が伝えられる人を獄につなぐのは人道上からも問題だ。
指導者の拘束によって民主化運動を封じ込め、選挙を有利に運べるとの思惑が軍事政権にあるとすれば、愚かなことである。スー・チーさんが書記長をつとめる国民民主連盟(NLD)が参加しない総選挙は、国際社会から茶番劇だとみなされよう。
ミャンマーには最近、国際社会から手を差し伸べる動きが相次いでいた。昨年のサイクロン襲来後、大規模な人道救援が行われ、オバマ米政権は制裁中心の外交の再検討を表明していた。
スー・チーさんの訴追は、こうした動きにも冷や水を浴びせるものだ。
軍事政権はスー・チーさんを即時に解放し、内外が認める新政権樹立に向けた政治対話を行わねばならない。
ミャンマーと関係が深い日本外交の実力が試されることにもなる。
政府は、タイに逃れたミャンマー難民の一部の国内定住を来年から認めるほか、在日ミャンマー人に在留特別許可も与え始めている。帰国すれば弾圧を受けるとの懸念からだ。許可数が少ないとはいえ、民主化を側面から支えるという点で評価ができる。
だが今回の事態に、外務省は駐日大使を呼んで「深い懸念」を示しただけだ。「根拠のない罪だ」などと非難する欧米諸国に比べて腰が引けている。
これからは対話と圧力を絡めて軍事政権を動かす戦略が問われる。政権の姿勢を見ながら、政府の途上国援助(ODA)を見直す。この国に大きな影響力を持つ中国やインドへの働きかけを強める。困難だが、そうした持続的な努力を重ねるしかあるまい。
麻生首相はかねて、ユーラシア大陸に「自由と繁栄の弧」をつくるべきだという外交理念を唱えている。その自由と繁栄がないのがミャンマーだ。
情勢の悪化は、隣国タイをはじめとする東南アジアにも影響する。麻生政権はもっと危機感を持つ必要がある。
やれやれ、朝日は以前こんな社説↓を書いてたはずですよ。
平成19年8月24日付朝日新聞社説
http://www.asahi.com/paper/editorial20070824.html#syasetu1(リンク切れ)
首相の訪印―価値観外交のすれ違い
米国とインド、それに豪州。自由と民主主義という価値観を共有するこれらの国と連携して事に当たる。それが安倍首相が唱える価値観外交である。
首相にとって、インド訪問はその実践と言えるものだった。だが、価値観を共にする相手であっても、国益の違いを乗り越えるのは容易でないことを思い知らされたのではないか。
「自然界に畏(おそ)れを抱く点にかけて、日本人とインド人には共通の何かがあると思わないではいられません」
安倍首相はインド国会での演説でこう述べ、自らが提唱する「美しい星50」への賛同を求めた。地球の温暖化を防ぐため、温室効果ガスの排出を2050年までに今の半分に減らす構想である。
温暖化防止が世界共通の課題であることには、インドも異論はない。シン首相は京都議定書後の枠組み作りへの参加を「真剣に考慮する」と応じた。
ただし、インドにとっては経済をさらに成長させて貧困層を減らすことが、温暖化防止と並ぶ重要課題である、と付け加えることも忘れなかった。
いま温室効果ガスの削減義務のないインドのような途上国に、今後どのような義務を負ってもらうのか。具体策に踏み込もうとすれば、難しい交渉になることを予感させる会談でもあった。
国益の違いをさらに強く印象づけたのは、米印の核協定問題である。
インドは核不拡散条約に未加盟のまま核実験を強行した。ところが、米国は査察を条件に民生用の原子力技術や核燃料を提供する協定に合意した。フランスやロシアも追随し、インドを核不拡散の例外扱いにする動きが広がっている。
首脳会談でインド側は米印協定への支持を求めた。これに対し、安倍首相は「唯一の被爆国として核不拡散体制への影響を注意深く検討する」と述べるにとどまり、態度を保留した。
理解しがたい対応である。被爆国の首相がこんなあいまいな態度を取っていいはずがない。大切な友人であっても、言うべきことは言う。核不拡散問題では譲歩できない、と明確に伝える。それが日本の役割ではないか。
そもそも安倍首相の価値観外交は、中国包囲という色彩を帯びている。
03年度以降、インドは中国に代わって円借款の最大の受け取り国になった。価値観外交の展開に伴って、援助額はさらに膨らんだ。
しかし、日本にとって中国が持つ重みは、インドとは比べものにならない。在留邦人でみれば、中国が10万人を上回るのに対し、インドは2000人ほどだ。相互依存の度合いが全く異なるのだ。
中国を牽制するテコにインドを使うような外交は見透かされる。インドにしても中国との交流を深めており、利用されることに甘んじるような国ではない。
価値観を声高に唱えるような一本調子の外交は考え直した方がいい。
ぶはは、相手が支那でなければ突如として「価値観を声高に唱えるような一本調子の」、いや、二枚舌の社説「は考え直した方がいい」と思いますよ、朝日新聞サン(嘲)。
by nekopon
エセ保守民主党支持者の馬鹿さ…