★Born without a Face★
ここ数日愚図ついたお天気が続いていた香港、朝の予報とはうって変わって
外は雲間の眩しい太陽光が降り注いでいるような陽気です。
夕べはローカルテレビ「Pearl TV」で放映された、アメリカのドキュメント番組を見たくて
早めに帰りました。
日本のほうがドキュメンタリーの情報量は多いと思うので、ひょっとしたら日本でも放映されていて、ご存知の方も多いかもしれません。
「Born without Face」という題名のその番組は、番組予告のスポットの段階で「ええ!?」と自分の目を疑ってしまう顔を持つ小さな女の子の映像が流れていました。
その女の子は、生まれる前は到って普通の赤ちゃんと同じ状態でした。
心音も、超音波から映し出される姿も、羊水の状態も・・・
お母さんもお父さんも生まれてくる新しい命を待ち望んで、満面の笑顔で写真に写っています。
その子の誕生の後、お父さんもお母さんも混乱しました。
その子は、肢体は何の異常も無いのに、頭が・・・頭蓋骨の形成上に問題を持って生まれてきてしまったのです。
具体的には・・・
頬骨とあごの骨を持たずして生まれてきてしまいました。
その所為で、耳と鼻の穴は塞がれ、眼球は飛び出た形状、口は大きく横に切り開かれた形相で誕生してしまったのです。
その子の生命維持が最優先だと考えた医師は、気道の確保と栄養の摂取の為に
肢体には不自由がないその子の喉と胃に穴を開け、そこから空気と食べ物を送ることにしました。
その子は生まれてから2年の間に数回の手術に耐えてきました。
2歳の誕生日を待たずに歩行も出来るようになり、お母さんやお姉ちゃんと一緒にどんどん外出もします。
お父さんに抱っこされるのが大好きで、寂しくなると手を伸ばしてお父さんに抱っこのおねだりをします。
2歳の誕生日を家で、近所の子供達も集めて、盛大にお祝いをした後、
6時間も離れたマイアミの子供病院に入院。
鎖骨を頭蓋骨後部に埋め込み後頭部の形成や、顎を形成などの大手術をしました。
顎は全く無い状態からの形成なので、ひとまず、現段階ある部分を切り離し、
その切り離した部分をボルトで固定し、数年かけて自己再生能力で顎の部分になる土台を形成しようという治療のようです。
ちっちゃいのに、こんな大きな手術に耐えて・・・と思うと涙が出てきました。
5歳の誕生日を迎える頃、鼻の部分を形成しそれと脳を繋ぐという、医師が言うには一番難しいという手術を予定しているそうです。
そうやって、この子は、20歳ぐらいまでに何十回という手術をし、現代の最先端技術を以ってして全く無い「顔」を形成していくのだそうです。
これを見て
「やっぱアメリカはいいなぁ・・・」
と思いました。
なぜかっていうと・・・
もし自分にこのような運命が降りかかってきたらどう振舞うのだろう・・・
ってまず考えました。
日本だったら(香港だったら更に数倍)外の人の目が気になって
外を歩けませんよね、きっと。そういう気分になっちゃいます。
周囲の環境が、そういう気分にさせてしまうのです・・・。
でも
アメリカではそんなこと気にせず、精力的に外出できます。
ハンディを持っている人も周囲の人たちも、それを弱み・劣っている、とは考えません。
アメリカ人から以前に聞いたことがあります。
「ハンディは神様がくれたチャームポイントなんだよ」って。
だから、ひとそれぞれチャームポイントがあるのは普通なことだと思っているので
ハンディを持った人が街を歩いていてもチラチラ見たり、変に避けたり、そんなことしません。
お互い積極的に「Hi!」なんて話しかけるし、特別視しません。
でも、理解はしているので、電車の座席では席を譲りますし、階段では手を貸します(でもそれはイヤミじゃなく自然にできるっていうのが素晴らしいところです)。
そういうことが自然に出来るっていうのが、心が成熟した文化なんだろうな・・・って思っちゃいます。
また、日本ならともかく、香港だったら、このような赤ちゃんが生まれてきた段階で、その子の生命維持を考えるかが疑問です。
「この子が大きくなっても明るい未来など無いかもしれないから」などと変な言い訳をつけて「その子の人権」さえも無いものにしてしまうかもしれません。
「人権」という見地の成熟度から見ても、アメリカはとても優れていると思います。
形成手術の技術も、アメリカは格段に秀でていると思います。
日本だったら「あるがままで耐えて生きていきなさい」のようになってしまうかもしれません。
整形をすることで「人」が、より、生き生きする、プライドを持てる、ということがあまり「良き事」とされていない風潮があるからです。
アメリカの形成手術の高技術は、そんな、「人」が「人らしく」生きていける手段として社会的に認知・奨励されているという風潮も手伝っているのかもしれません。
今回の番組内でも見られた情景だったのですが・・・
手術代が嵩む家族の為に、コミュニティで空手ワークショップを開いてくれたんですね、その時、その子やその家族も参加します。
で、参加した子供達が、お父さんに抱かれたその子の周りを囲むんです。
そしてその場は質問&コミュニケーションの場になります。
子供達はこう言います。
「彼女はかわいいね!」
お父さんはこういいます。
「ありがとう」
なんて素晴らしいんだろう・・・ってここでも涙が出てきちゃいました。
で、その「かわいいね」といった子が質問しました。
「彼女はなんでまぶたを半分閉じているの?」
素直に思ったことを、でも誰も傷つけない質問です。
お父さんは言います。
「外の太陽が眩しいでしょ?けど彼女は自分でうまくその眩しい光を調整できないからまぶたを半分閉じているんだよ。」
これもまた素晴らしいと思いました。
騙したり適当な事を言って誤魔化したりないんですものね。
赤ちゃんはコウノトリが運んでくる、とか言ってる人たちに聞かせてあげたいです。
子供に対してちゃんと、納得できる本当のことを教えてあげられる、このお父さんが素晴らしいと思いました。
そして、そんな素晴らしいお父さんと、そして
彼女を抱いて鏡を見ながら「あれ~?あそこにかわいい子がいるね~!」と指差し屈託なく笑う母さん、
そんな両親の愛に育まれて、彼女は心豊かな女性に成長するでしょう。
ここで乙武さんのお母さんの話を思い出しました。
乙武さんのお母さんは彼が誕生した時「なんてかわいい子!」と叫んだそうです。
その時、そんな風な深い愛を持った母親に私はなれるかな・・・と自問自答してしまいました。
今回の彼女のお母さんも、手術前、
表情はない彼女の不安の一切を包み込むように
キツく、固く、ハグしていた姿が印象的でした・・・。
彼女のストーリーは上にも書いたようにまだ途中段階です。
3年~4年後、彼女が鼻の手術を終えた時、また一つ発展があるでしょう。
私は彼女をいつまでも見守っていたいです。
なんか一人で熱く語っちゃってスミマセン・・・。
参考に・・・
昨日の番組(元はアメリカのテレビ局作成)に関するURLを載せておきます。
写真はショッキングなものだと思いますので、興味本位ではご覧にならない方が良いかもしれません・・・。
http://www.firstcoastnews.com/news/local/news-article.aspx?storyid=28372
http://www.firstcoastnews.com/news/local/news-article.aspx?storyid=32397
http://www.mymultiplesclerosis.co.uk/misc/juliannawetmore.html
http://www.dailymedication.com/modules.php?name=News&file=article&sid=912(動画)
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