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他人の不幸をメシの種とする狂信的市場原理主義過激派タレコミニスト
すべての事象は神の見えざる手に委ねられている。抵抗は無駄だ
von_yosukeyan[atmark]yahoo.co.jp
トヨタ自動車のメーンバンクは、東海銀行と三井銀行の並列メーンバンク制だった。かつては住友銀行もトヨタグループの取引銀行だったが、ドッジ不況時に関係を断って以来、絶縁状態だった
ドッジ不況とは、戦後の安本インフレの解消のため導入された、緊縮政によって引き起こされた猛烈なデフレ不況である。政府補助金の廃止と、財政均衡を優先したドッジ・ラインの導入が、営業力が脆弱だった当時のトヨタの経営を直撃し、倒産寸前に追い込まれた。この際に、銀行団の中心となって経営再建を推進したのが、東海銀行と帝国銀行(当時はすでに第一銀行を分離)で、工販分離や豊田喜一郎の退任などかなりドライなリストラ策を受け入れさせた
無借金主義や、内部保留の確保など、トヨタのパラノイア的な財務体質は、このドッジ不況時のトラウマによるところが大きいのだが、同時に銀行団に加わらず融資回収に走った住友銀行、融資団には加わったが最後まで渋りつづけた三菱銀行、支払いの繰延を拒否した川崎製鉄(当時はすでに川崎重工から分離)の三社に対して、長年取引関係がほとんどなかったのも、同じ理由からだった
これは、後に日本最大の企業となるトヨタという取引先を失っただけでなく、「住銀はいざというとき頼りにならない」という評判が広がり、中京・東海地区で住友が苦戦する原因となった。特に、融資を拒否し回収に走った当時の住銀審査担当常務は、後に住銀中興の祖と称えられ、長年にわたって院政を敷いた堀田庄三であったことも住銀出入禁止の要因ともなっている。従って、SMBC誕生までは名古屋支店ポストは、他の都銀では取締役支店長ポストであってもおかしくないのに、住銀では不毛な上がりポストと考えられていた
さらに住銀が苦戦したのは、バブル期である。元々、名古屋・中京地区は東海銀行のホームグランドであり、五摂家と呼ばれる地場大手企業との強力な関係を築いていた。新興住宅地や中小企業に足しげく通い、取引先を拡大していく住銀得意のドブ板営業も、中京東海地区には有力な地銀や信金が勢力を誇っており、惨敗に近かった。そもそも、中小企業そのものが、トヨタの財務に倣い無借金経営に徹したことも、住銀が苦戦する原因となった
追い討ちをかけたのが、イトマン事件である。イトマンへの不正融資の窓口になったのが名古屋支店で、イトマン事件処理をめぐって支店長が射殺される事件(未解決)まで発生したため、「頼りにならない」ばかりでなく「反社会的な銀行」というレッテルが貼られてしまった。住銀にとっては、中京地区はまったくの金融空白地域となってしまったのだ
トヨタが関係を断った三社と復縁したのは、世紀の変わり目の金融再編期である。海外取引で関係のあった東京銀行と合併した三菱銀行、大口取引先の日産から取引を打ち切られ危機にあった日本鋼管を救済した川崎製鉄(日本鋼管はトヨタの取引先でもあった)、そして三井家と血縁関係にあり、住専危機時には増資にも応じたさくら銀行を吸収した住友銀行といった具合に、業界再編によって自然に取引が再開される形になった
それでも、SMBCの中京圏の営業体制は他行と比べてそれほど厚くない。地場地銀や第二地銀は、それぞれ三和、東海、三菱との関係が強いが、SMBCは地場地銀との関係も薄かった。その状況に変化が現れたのは、肝心の東海銀行が三和銀行と合併した後の「緑化作戦」が影響している。緑化作戦とは、三和銀行のコーポレートカラーである緑から来ている俗称で、UFJ統合後に旧三和系の勢力が、旧東海系の勢力を一掃した凄惨な行内抗争を指す。単に、人事・内規・予算・システムだけでなく、関西・東京地区ばかりか中京・東海地区でも、あからさまに旧東海系支店を三和系支店に統合した上に、取引先を容赦なく切ったため、UFJは中京・東海地区で急激な営業力低下に見舞われた
緑化作戦によって、東海系を一掃した旧三和だったが、今度は三和系内の学閥抗争を要因とする内ゲバが原因で経営が大混乱に陥り、結局は東京三菱に吸収合併されることになった。ちょうど、この時期はデフレ不況の真っ只中で、中京地区の空白状態を埋めることになったのが、西川善文氏が退任して住友色が薄まったSMBCだった
数年前から、法人営業部の人員強化が続けられていたが、この数年で特にリテールにも力を入れている。中京・東海地区は、貯蓄率が高く流入人口も多いという特徴があり、また団塊世代の退職で資金運用ニーズも高まっている。そこで、郊外への新規出店に加えて、既存店舗のリニューアルを進めて既存顧客との関係を強化する方向に動いている。これまでは、単に採算が取れるギリギリの支店を維持しているに過ぎなかったが、中京・東海地区を一つの市場として面としてカバーする営業を展開していると思われる
こういったSMBCの営業攻勢によって影響を受けているのが、地場銀行だ。特に、信金や東海地区の有力地銀には、かねてからオーバーバンク気味で危機感があったが、メガバンクの復活と世界同時不況で肝心の自動車・航空産業の衰退という予想外の事態に直面している。西日本では、メガバンクや有力地銀主導で血なまぐさい地銀再編劇が進んでいるが、これまで好調だった分の反動として、今後中京・東海地区でもドライな金融再編が起こるかもしれない
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