2009年8月14日 14時17分 更新:8月14日 15時46分
警視庁新宿署は6月以降、新宿・新大久保地区周辺で外国人が経営する無許可営業の宿泊施設の摘発に力を入れている。アジア料理店が多く集まるなど、多国籍街として知られる同地区。母国語が通じる気安さやアジアでも有数の歓楽街・歌舞伎町まで徒歩約15分というアクセスの良さから外国人観光客に人気の「民宿」だが、観光客からは「安くて便利だから選んだが、違法とは知らなかった」と戸惑いの声が漏れる。【町田徳丈】
新宿署は6~7月、保健所に無許可で宿泊施設を営業したとして、旅館業法違反容疑で10軒を摘発し、韓国籍と台湾籍の経営者ら計5人を逮捕した。
7月15日に逮捕された台湾籍の58歳の夫婦は木造2階建てアパートを改築し、03年ごろから「民宿」を営業していた。部屋数は10室。1泊5000~8000円で月120万~150万円の売り上げがあったとみられている。
夫婦は保健所の警告に従わずに営業を続けていた。調べに対し「民宿はもうかる。違法だと思わなかった」と話したという。
同様の宿泊施設は、円安・ウォン高で韓国からの観光客が多くなった2~3年前に急増。新宿区保健所によると、看板を出している店舗だけでも20軒前後、確認されている。担当者は「購入したり借り上げたアパートに素泊まりさせているだけなので収益性が高いのだろう。雨後のたけのこのように増えた」と話す。ライバル店同士が「あそこは無許可」と通報する告発合戦もあったという。
観光客に人気の秘密は宿泊料の安さだ。1泊2000~3000円の「民宿」もある。韓国人が経営する民宿にインターネット予約で宿泊したという韓国の会社員女性(22)は「何といっても安い。歌舞伎町まで徒歩15分の近さで1泊3000円なんて旅館やホテルでは無理。宿の人も親切だし」と笑顔で話したが、無許可営業と知ると「違法だとは知らなかった」と驚いた。
新宿署の取り締まり強化の背景には、地元住民から「宿泊客が深夜まで騒いでうるさい」「宿のごみの出し方が汚い」といった苦情が増えている事情もある。
新宿署幹部は「大半は観光客が利用していると思うが、オーバーステイの外国人が潜伏場所にする可能性もある」と警戒。今後も指導に従わない宿泊施設の摘発を続ける方針という。