元ひきこもり少女と訪ねる死体博物館



数年前に尊師をお連れした時は大変だった。プラピンクラオ橋を渡り、臭くてスラムチックな線路沿いの市場を抜け、バンコクノイ駅へと回り込む。その傍らのしょぼい門からシリラート病院へ入るのだが、何の看板も案内もない迷路のような構内で、バカの一つ覚えみたく、「ピピタパン、ティーナイカッ(博物館どこですか)?」と、すれ違う人に片っ端から訊きまくったものだ。広い解剖学博物館はまだしも、地味な法医学博物館なんか、信じられないほど分りにくい場所にあり、よほどの情熱と根性がなければ辿り着くことすらできない。まるで極点を目指すアムンゼンのような心境で、ぐずる尊師をなだめつつ汗だくで歩き回ったのが忘れられない。



ところが今日(2001年4月23日)、ビーマンバングラディッシュ航空でやってきた「元・引きこもり少女」にせがまれて訪ねて行ったところ…。な、なんと、日本語表記までついてる親切な看板が。いつの間に…。そんなに大勢の日本人がここを訪れるのだろうか?





解剖学博物館と法医学博物館がワンフロアに統合され、つまらないほど整然とした陳列になっている。油断していた。一体いつ、リニューアルしたんだろう?

エアコンもよく効いてて、窓からは明るい陽光が。以前の「ヤマシイモノをこそこそ見てる」といった感じは微塵もない。お子様訪問者も、うじゃうじゃ。サンリオピューロランドなみに無邪気な雰囲気だ。


「キャハハ」、明るい笑い声の絶えないさわやかな見学者。そんなもん食い入るように見てるとシーウィに食べられちゃうぞ。

というわけで、手前の電話ボックスみたいのに入った蝋漬けおじさんが有名人シーウィだ。今から50年ほど前、7人(5人の説もあり)の幼児を誘拐して食べちゃったというワガママおやじ。両隣には、同じく蝋で固められた強姦魔が運慶快慶のように控えているし…。制服の君達、ここがどういう場所か本当に分ってるのか?


懐かしい顔とも再会。いや、正確には懐かしい「頭」だ。とはいうものの、縦割り後で半分しか残ってないけど。

金髪だから西洋人だと言った人がいたが、違うと思う。薬液のせいでタイ人の黒髪がブリーチされたと考える方が自然だ。

前回の訪問で尊師に最も喜んで頂いた「人体の輪切り」と「男女一対まるごとパックリ」の展示がなくなっている。そう言えばフクスケみたいな「バルーンヘッド坊や」の姿もない。なぜだ?やはり、コレはちょっとマズいんじゃないのって事になったんだろうか?

だったら、コレはマズくないのか?女性被害者の血染めの衣服の側に、さりげなく置かれた電動○○○。いくら証拠品とはいえ、このアイテムはあんまりだ。屈託のない制服の女子高生達には、できることなら見せたくない展示ではある。



ふと気がつくと、同行の「元・引きこもり少女」は弾痕のある頭蓋骨を写ルンですしてる。こだわりのある被写体選択だ。

「頭蓋骨って、撃たれても粉々に割れないんですね?」

うん、そうだね。良い所に気がついたね。シャレコウベには丸い穴がきれいに開いて、グチャグチャになるのは中のミソだけなんだね。

帰りがけ、線路沿いのスラムチックな市場で旬のフルーツを買う。縦割りされてホルマリンに漬けられたら、フルーツだってもう食べられないのだ。マンゴスチンはB25/kg、ランブータンはB15/kgだった。合掌。



【追記 2001.5.11】

このページをUPした直後に、いきなり以下のようなメールを頂いた。淡々とした文章ながら、一般観光客とは思えないほどのディープなツッコミ。あんた一体何者だ?あそこを半日散策するというだけでも、タダモノとは思えない。 転載許可頂いたのでメールの一部掲載。私など、まだまだ詰めが甘いという事がよくわかった。6つもコーナーがあるなんて全然気がつかなかったぞ。

> 私もこのGW中にバンコクを訪れ、2度目のシリラート見物をしました。
> 2年振りです。親切な看板(日本語付)ができていたのには私も驚きました。
> 「人間胴体輪切り」「頭デッカチの赤ちゃん」「体のくっついた双生児」
> のホルマリン漬けは別館に展示されてます。
> 建物はシーウィ−館の裏(南側になるのでしょうか)で3階に展示されてます。
> 観光地のパンフレット調(4ツ折の縦長のヤツ)にまとめられた案内
> リーフレットによりますと(青と白の2色刷りで英語・タイ語併記)
> 博物館は全部で6つのコーナーに分かれております。
> 
> ちなみに私が行った生物進化館(原始時代から現代までの人や動物の進化の
> 過程を展示してます。こじんまりとした理科室のような1室に、正に極普通の
> 理科の教材のように展示されてました。最初鍵がかかっていて休館かと思った
> のですが、ドアを揺すった時のガタッっという音に気付いて中にいた
> ヤル気のなさそうな職員のオバさんが鍵を開けてくれました。)
> の前には「お骨引取り場」なる窓口があり病院で亡くなった方のお骨
> (日本では火葬場ですよね)を遺族の方が引き取りに来ていました。
> 病院で遺体を火葬して、お骨を渡すなんてビックリでした。
> 
> 私も変わり者なんでしょう、日本でも東大病院、自治医大病院、独協大病院等
> デカイ病院に入るとなぜかむしょうに中を散策したくなります。
> このシリラートもご多分に漏れず、私の散策意欲を掻き立てます。
> 病院内を半日かけて歩いてまわるとけっこうおもしろい発見がありました。
> 銀行のATMコーナーは複数箇所あるし(しかも行列、お昼時だっからか?)
> 郵便局、食堂、はてはお坊さんのお説教(ウィサカブチャーとか何とか書いてあ
> りました)まで本当に色々と発見できて有意義(なのか?)な1日となりました。
> 
> タイだなぁ〜っと感じたのは、明らかに末期患者(AIDSか?)と思われる方々が
> 1階のホールで、保健室にあるような布製簡易型パーティションのブースで
> 家族らしき人達と面会していたり、その横では空いているベットでお昼寝を
> 決め込んでいる子供はいるし...う〜んまさにタイ。
> (中略)
> シリラート病院博物館パンフの写真を添付します。





【追記 2004.12.5】


はりはりBBSに、最新のパンフやチケットをUPしてくれた人がいた。
あまりに人気があるためか、博物館が有料になったらしい。入場料40バーツとのこと。





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(おまけ)タイの死体パン屋