2009年8月16日8時58分
海軍が作った小型の風船爆弾(下半球部分)
太平洋戦争中、潜水艦で米国本土に近づいて発射するために開発された日本海軍の小型風船爆弾の残骸(ざんがい)が、福島県で見つかった。太平洋岸の茨城県や福島県などから飛ばされた陸軍の風船爆弾の4分の1ほどの大きさ。21日まで同県会津若松市の県立博物館で展示されている。
見つかったのは、風船の下半球部分で、直径約2.5メートル。美濃紙をこんにゃくノリで張り合わせ、防水用の合成樹脂が吹き付けられている。水素を注入するためのゴム栓や、爆弾をつるすための組みひもが付いていた。
同県いわき市にある呉羽化学工業に勤務していた鷺(さぎ)栄一郎さん(62)の父・昇さんが戦後、工場で廃棄されていたのを見つけ、持ち帰った。同社の敷地内には戦中、相模海軍工廠(こうしょう)の作業所があった。
陸軍の風船爆弾は1944年秋から打ち上げが始まったが、春になるとジェット気流が弱まって中断。このため、海軍が潜水艦で小型の風船を米国本土の近くまで運び、発射する計画が持ち上がったという。実戦に使われる前に終戦を迎えたようだ。県立博物館の佐藤洋一専門学芸員は「海軍製造では唯一、残った可能性がある」という。(田玉恵美)