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（7631）マクニカ／神山治貴社長
２００３年８月４日（月）

マクニカを訪問しました。第１四半期業績を中心に経営企画室の浅野さんにお話を伺いました。

神山治貴社長

２００４年３月期第１四半期業績概況　
「全般に上げ基調。計画を上回るペースで推移」

（単位：１００万円）
	売上高	営業利益	経常利益	当期純利益
今期第１四半期（参考）	23,906	1,078	1,013	572
平成１５年３月期	85,509	3,036	2,545	771

特別に中心的な牽引役はないものの、全般的にゆるやかながら上げ基調とのことです。従来、仕入先別の売上高でトップ５に入る仕入先であったLinear　Technology社との取引を昨年８月に解消しましたが、新規商材の立ち上がりでカバーするなど、売上、利益ともに期初計画からは上ブレの状況です。

業界全般としては、液晶テレビ、ＰＤＰ（プラズマディスプレーパネル）、デジカメなどデジタル情報家電が好調。携帯電話も依然として堅調に推移しています。停滞を続けていた通信設備分野も、少しずつ受注が再開されるなど緩やかな回復が見られています。
同社においてもデジカメ、台湾の液晶パネルメーカー向けのＡＳＩＣ、カメラ付携帯電話向けカスタムＩＣが好調でした。

粗利率を見ると、昨年度通期の１５．３％に対し、この四半期は１６．３％と１ポイント上昇しています。
これは半導体の用途別売上高のうち比較的利益率の高い通信インフラ及びICテスタや放送設備などの産業機器向けにPLDやASSPの受注が回復し、それぞれ16.0％→16.4％、16.1％→17.2％と構成比が上昇したことによるものです。また利益率の高いネットワーク関連事業がソフトウェアを中心に好調であったことも貢献しています。
通信インフラでは、中国のPHS基地局向けPLD、国内のADSL、FTTH及び光伝送装置向けにDSP・ASSPなどが動き始めました。また、ネットワーク関連では、e-ラーニング・ソフトが、教育用に加えて社内会議用として大型受注がありました。

足元の状況が好調なことは確かですが、顧客であるメーカーからの発注が益々短納期化しており、先が読みにくいのも事実で、同社としては通期の業績予想を今のところは変更していません。

平成１６年３月期業績予想

（連結、単位：１００万円）
	売上高	経常利益	当期純利益	EPS（円）
中間期	４４，０００	１，１３０	３５０	２０．０３
通期	９０，０００	２，９９０	１，４３０	８１．８３

ICチップビジネスに参入

凸版印刷㈱、チャータード・セミコンダクター社（シンガポール。世界第３位の半導体受託メーカー）と共同で、非接触ICタグ生産のビジネスをスタートさせました。
凸版印刷が、RFIDチップ（※１）「T-Junction（仮称）」を、特許保有のパートナー企業と開発。チャータード・セミコンダクター社が量産を行います。（１２月生産開始予定）
マクニカは、製造管理、組み立て、品質保証のアウトソーシングを受け、設計、開発、製造企画、物流、サポートを総合的にコーディネートします。量産化により、チップの価格は従来品に比べ大幅な低価格化が実現できる見通しです。
凸版印刷㈱ではこのチップシステムで２００５年度に１００億円の売上を見込んでいます。

※1　RFID（Radio Frequency IDenitification System。無線利用による移動体識別、非接触ICタグ）とは無線通信を使う識別技術で、ICチップとアンテナで一つのユニットとなります。バーコードと違って読み取り機をかざす必要がなく、非接触でデータの読み出し＆書き換えが可能であり、無線が届く範囲にタグがあれば瞬時に読み取ることができます。カードと違って形状は制限されておらず、動物用、海上コンテナ用などが国際規格化されており、物流用においても標準化が進められています。将来、ありとあらゆるものにIDをつけるための有力なデバイスの一つです。
例えば、JR東海の「Suica」はその一例ですが、サービス開始後１年足らずで５００万枚を突破するほどです。「Suica」は現在では定期券とプリペイドカードのような役割ですが、近いうちに「駅の改札機にかざすと、朝は会社近辺のアフター5スポット情報が、金曜の帰宅時には週末のお出かけ情報が、手持ちの携帯電話に自動的に提供される」といったようなことも実現するといわれています。

RFIDの実際の利用シーンとしては以下のようなものがあり、様々な場面でキーデバイスとして事業化されつつあります。

荷物タグ
回転寿司や食堂精算システム
ロッカー管理・キャッシュレスシステム
車両入出管理、イモビライザー（車両盗難防止システム）
商品のトレーサビリティ（生産・流通履歴を追跡できるようにすること／そのための仕組み）保証
図書館の蔵書管理

SCMやCRMが注目されている昨今、応用範囲はさらに広がるといわれています。矢野経済研究所によれば、RFID市場は、2002年度1070万枚、2005年度3050万枚、2010年には11億3270万枚になるといわれています。

マクニカとしては、RFIDの出現で半導体市場のパラダイムが大きく変化し、半導体市場は従来の製品の部品というポジションに加えて、消費材としてのポジションが新たに形成されると見ています。そこで、このプロジェクトに従来の商社としての機能ではなく、「設計、開発、製造企画、物流、サポート」のトータルソリューションを提供するという新しいビジネスモデルで参画し、このプロジェクトを成功させ事業の拡大をはかりたいと考えています。

取材を終えて

市場環境は底を打ったようですが、顧客メーカーの短納期発注などから先行きを決して楽観的には見ていないということです。ただ、大手仕入先との取引を解消したにもかかわらず、新規商材でその穴をリカバリーするなど、「市場のニーズを的確に捉える」という同社の特徴・強みが発揮されているといえるでしょう。
RFIDの将来性、成長性は非常に注目すべきものがあります。これまでにこのレポートで紹介した他の新規商材とあわせ、今後の展開を見守っていきたいと思います。

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