先月30日、消費者金融大手3社が発表した6月末の時点の貸出残高は、「武富士」が前年同期比29%減、「プロミス」が同12%減、「アコム」も今年5月に合併した子会社の分を除くと実質10%程度の減少となった。過払い金返還請求に伴う業績悪化と、融資総額が年収の3分の1を超えている顧客に対する追加融資制限の自主規制が主な要因だ。
特に過払い金返還によるダメージは大きい。日本貸金業協会によると、2007年度に業界から返還された利息金は、利用者の元本返済に充当された約4200億円と現金で還元された約5200億円の計9400億円にも上り、08年度以降は1兆円を超えている。
過払い金返還請求が増えている背景には、弁護士や司法書士らの積極的な“PR活動”がある。最近、電車内の広告やテレビCMで「借金、返し過ぎていませんか?」などといった言葉を見聞きした人は多いだろう。法律事務所などが利用者に過払い金返還請求を促す広告だが、積極的に宣伝するのはそれだけうま味があるからだ。なにしろ、手数料を20%としても1兆円の過払い金の裏には2000億円もの“手数料市場”が生まれている計算になる。
だが、金が絡むと当然トラブルが起きる。日本弁護士連合会(日弁連)、日本司法書士会連合会(日司連)とも、統計はないが依頼者との間でトラブルが増えていることを認める。中には、「面会もなく勝手に手続きを進められた」「高い手数料を取られた」といった声もあるという。債務整理で稼いだ2億4000万円もの所得を隠していた司法書士の存在も明らかになり、日弁連は先月23日、債務整理を請け負う弁護士に向けて「指針」を打ち出した。
業界と法曹界の関係も悪化している。過払い金請求を起こす人は多重債務者の比率が高く、今後も貸し出しリスクが高いことから、これらの利用者に「コード71」という暗号を付けて業界全体で情報を共有してきた。だが、過払い金返還請求をビジネスにしている弁護士らの圧力で、この暗号制度は撤廃される見込みだという。
「弁護士たちは過払い金請求でひともうけした後、申立人が再び借金をして債務超過に陥った際、こんどは債務整理でもうけようと考えている。そのため、業界には“貸し渋り”をしてほしくない。表向きは消費者保護と言っていますが、自分たちの“おいしい”市場を守りたいだけです」(業界紙記者)
6月には中堅消費者金融のネオラインキャピタルが司法書士団体などに、「(安価な)手数料体系の統一を検討してほしい」との要望書を提出して“逆襲”に出るなど、3者のバトルは混迷の度合いを深めている。