きょうの社説 2009年8月16日

◎緊急人材育成支援 なお重要なミスマッチ解消
 国の緊急人材育成支援事業で行われる職業訓練の実施機関として4事業者が石川県内で 認定された。この支援事業は失業手当をもらえない人が職業訓練を受けた場合、月最大12万円の生活費を支給する新しい制度であり、富山県では既に一部実施に移されている。新制度の周知徹底を図り、雇用の古くて新しい問題であるミスマッチ解消の一助にしてもらいたい。

 雇用情勢は厳しく、失業率や有効求人倍率は過去最悪の水準にまで悪化している。6月 の有効求人倍率は石川県内が0・48倍、富山県内は0・49倍であり、同月の就職率は石川33%、富山38%という状況である。一方、6月の新規求人数は石川、富山とも5月より増加しており、この点に限り改善の兆しが見えるが、6月の企業の求人充足率は石川が39%、富山は43%にとどまっている。

 全体として求人数より求職者数が多い状況が続いているにもかかわらず、企業側は希望 通りの人材を確保できない悩ましい事態に陥っているのであり、求人と求職がかみ合わないミスマッチの深刻さをうかがわせる。

 総務省の労働力調査によると、求職者側が挙げるミスマッチの主な理由は、希望する職 種がないことや、年齢・賃金などの条件が一致しないことに加えて「自分の技術・技能が求人要件に合わない」ということである。

 再就職の道を広げるため、スキルアップを図る求職者の努力とそれを支援する仕組みの 必要性はかねて指摘され、行政も力を入れてきている。今は特に、成長分野へ労働力を移し、経済構造の転換を図っていく上でも、そのことが重要である。

 一家を支える立場にある人が、雇用保険の給付期間が過ぎても就職できなければ、多く の場合、生活保護に頼らざるを得なくなる。今回の緊急人材育成支援事業は、そうした人たちを対象にしており、一定の条件を満たせば、生活費をもらいながら情報技術(IT)や医療、福祉などの職業訓練を受けられる制度である。石川県内での訓練は9月から行われる予定であり、従来型の職業訓練と併せ、積極的な利用を促したい。

◎韓国に登山発信 「反転」見据え種まきたい
 登山やトレッキングを楽しむことを目的に海外へ出向く韓国人旅行者を誘致するため、 富山県が山岳観光のPRに本腰を入れる。韓国では中高年を中心に登山ブームが続いているものの、国内には2千メートルを超える山がなく、わざわざ日本まで来る愛好家が少なくない。石川県も、昨年は白山登山のツアーを誘致することに成功しており、目のつけどころとしては悪くない。

 日本政府観光局(JNTO)のまとめでは、世界同時不況などの影響で、今年に入って から日本を訪れる外国人旅行者数は急激に減少している。中でも韓国人の減り幅は特に大きく、上半期は前年同期の半数程度まで落ち込んでいる。ただ、こんな逆風がいつまでも続くとは思えない。いずれ風向きは「反転」するだろう。それを見据え、石川、富山県もできる限り多くの種をまいておきたい。

 JNTOによると、韓国では毎年約1万人が登山目的で海外に出掛けている。日本には そのうち約3千人が訪れているが、まだ伸びしろがありそうだ。山岳観光が盛んな長野、岐阜県とも連携して積極的な誘客策を考えてほしい。小松空港と定期便で結ばれている静岡県と協力して「日本三名山」を売り込むのも一案だろう。もちろん、PRばかりではなく、日本語が分からない韓国人に安全、かつ快適に山の魅力を味わってもらうための受け入れ態勢整備も進める必要があろう。

 登山など特別な目的を持った旅行は「SIT(スペシャル・インタレスト・ツアー)」 と呼ばれている。登山以外にも、ゴルフやスキー、マリンスポーツ、バードウオッチング、スポーツ観戦、人気歌手のコンサート鑑賞などを目的として、日本を訪れる人がいるという。

 石川、富山県は、既にゴルフやスキーをテーマとしたツアーの発信にも力を入れており 、石川県では、台湾スキー協会関係者の提案を受けて、サイクリングツアーの商品化を目指す取り組みも進行中だ。ほかにもSITの素材はたくさんあるはずであり、大いに発掘に努めてほしい。