『グローカル』675号より

今なぜ郵政民営化なのか
民営化は腐った銀行の要求

講演 佐高信


 なぜ郵政改革か。まず敵は誰か見えてますか? 国民は郵政改革をそんなに望んでない。誰が郵政民営化を望んでいるのか。
 銀行です。なぜか。小泉の親分は元大蔵官僚の福田赳夫。小泉は大蔵族銀行族でずっと育ってきた。勉強する人ではないから、自分の育ってきた大蔵・銀行族の考えが染みついている。だから、銀行にとって一番邪魔な郵便局は分割民営化しなければならない。持論なんて立派なものじゃない。
 小泉が首相になった時、全銀協会長(当時)は「若い頃から郵政事業の民営化を提言され、これは全銀協の主張と同じであり、この姿勢で進んでほしい」
 二月二十八日に金融・保険業界が「公正な郵政改革」を求める意見広告を出したが、自民党の抵抗で分割されないと困るからだ。「改革」を望んでいるのは銀行だ。銀行はバブルの張本人で全然反省してない。郵貯・簡保がほしくてしかたがない。その後ろにアメリカがいる。今の段階の郵政民営化には反対だ。いまのまま、民営化すると腐った銀行にそのまま流れる。
 昨年イラク人質事件で自己責任を果たしていない小泉のような二世政治家たちが盛んに自己責任を言った。
 自己責任を一番感じていないのは、税金で救済されている銀行だ。そこからいかないと小泉の土俵に乗ってしまう。腐った銀行をどうするかをあくまで追及していく。銀行は本当にデタラメだ。その銀行がやっていけなくなって郵便の金がほしい。そこを押さえておかないと、竹中の口に騙されてしまう。
 銀行合併は市町村合併と同じ。どうにもならないところ同士が合併してもどうにもならない。ちゃんとしている町村は合併しない。
 銀行の腐敗は直っていない。税金は投入されたままだ。この構図を忘れないでほしい。
 対立は、野中・郵政族対小泉・銀行の利権争いだ。小泉は非常にうまく、向こうだけが利権派だとやってくる。小泉には利権がないかのようにやってくるが、とんでもない。両方利権派だ。また、クリーンなタカ派の小泉に対して、野中・加藤などはダーティーなハト派。自己責任論と小さな政府が結びつく。

 背後には米国

 そして、米国債を一番買わされている国が日本。三、四割になる。石原慎太郎によると、金額は三百兆円にもなる。これが日本経済の最大のガン=不良債権。米国債は売るに売れない。ある銀行が米国債を売ろうとしたら、当局からいくらでも貸すから売らないでくれと言われた。経営者からしたら売らせてくれたら大丈夫という話。そこが全然出てこない。他の国が購入を減らしている中、日本だけ米国債の比率を上げている。
 だから、郵政民営化をして米国債を買うという筋書きじゃないかと疑いたくなる。
 いまびっくりするほどのごり押しが行われている。郵政民営化はサッカーで言えばもうロスタイムに入っている。
 竹中は住民税を逃れるために、八回にわたって、米国との間で住所を移している。森内閣の閣僚だったら、一発で首が飛んでいる。私はサンデー毎日で、「人間の品格で野村サチヨ以下である」と書いた。竹中は報じた週刊誌を訴えたが、執筆した私たちは訴えられていない。媒体を訴えれば、執筆を頼まなくなると見込んでだ。
 竹中は日本マクドナルドの藤田田に取り入り、藤田未来経営研究所理事長におさまり、未公開株を譲り受けた。その株は公開で価値が上がった。リクルート事件と同じ。竹中は「みんなの経済学」を書いているが、自分の経済学しか考えてない。
 大手町にプロミス本社がある。前は長銀だった。長銀は四兆円の税金できれいにして、十億でリップルウッド売り渡し、新生銀行になった。これを見たら、郵政民営化を公正にやるなど、誰も信じられない。銀行とその後ろの資本に明け渡すのが、郵政民営化の狙いだ。
 昔から庶民が権力を闘う時の武器は、疑う、嘘をつく、逃げるの三つ。これは公の教育で潰されてきた。小泉なんかを信じてはいけない。
 公共サービスとは何かを組合が考えてこなかった。その反省は必要。公共サービスを考えていなかったことで足元をすくわれている。
 民営化がいいというのは企業を知らない人。私は企業のいやらしいところをたくさん見てきた。
 今日の朝日に郵政民営化による過疎地切捨てをを危惧する投書が載っていた。過疎の問題は小泉の頭には全くない。大学の同窓なので、首相になる前は一緒に食事したが、奥行きゼロで印象の薄いベニヤ板のような人だ。クリーンなタカ派、小さな政府は弱者にとって敵。
 効率、小さな政府という言い方に騙されてはいけない。郵政民営化を一番望み、尻を叩いているのは腐った銀行。それを絶対に忘れないことが必要。    (文責編集局)
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