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【コラム】「kimuchi」発言チョン・ウソンに対する弁護(下)

 

 だが結果的には、在日韓国人のやり方が正しかった。焼肉店が3世・4世へと引き継がれ、やがて日本の資本も参入するようになり、日本における韓国料理の味が違った方向へと変化していったからだ。

 それでも「ビビンバ」は原形を保っているほうだ。「クッパ」は韓国の中華料理店にある「ケランタン」(卵スープ)に似ており、韓国の冷麺をルーツとする盛岡冷麺は、韓国の大衆食堂にある「チョルミョン」にスープを加えたようなものだ。「ユッケジャン」は妙に甘いため食べられなかったが、それは韓国のユッケジャン(牛肉と野菜の激辛スープ)とは違うということに遅まきながら気が付いた。

 しかし、こうしたメニューも、韓国のキムチ(kimchi)と日本のキムチ(kimuchi)のような本質的な違いがあるわけではない。「kimuchi」は、日本人たちが徹底的ににおいを消そうとしたため、ただの「辛口の浅漬け」に変質してしまった。発酵食品である「kimchi」とは違い、「kimuchi」には乳酸菌が含まれていない。一種の清涼感が感じられる「kimchi」の酸味は乳酸菌が醸し出すものだが、「kimuchi」の舌にくっつくようなコクのある味は調味料によって作り出されたものだ。

 日本のキムチチゲ(キムチ鍋)もまた、韓国のそれとはまったく違う料理だ。「kimuchi」は発酵しておらず、単に漬け込んだだけなため、だしは出ない。そのため、日本のキムチチゲは「キムチ味」に加工されたスープを使っている。新鮮なキムチのだしを使った韓国のキムチチゲとは味も次元も違う。これを同じものと考えるのは、ヨーグルト風の炭酸飲料「ミルキス」を「ヨーグルト」だと言い張るようなものだ。

 先日、俳優のチョン・ウソンが日本のテレビ番組に出演し、「kimuchichige」と表記したフリップを見せたため、韓国で反省文まで書かされる羽目になった。なぜ韓国人が「kimchi」を「kimuchi」と書いたのか、と批判されたのだ。だが、共演した日本の女優が示した選択肢は、日本式に表記された「キムチチゲ」だった。このことについて執拗に問いただすのであれば、いっそのこと、チョン氏が日本の「kimuchi」を「kimchi」と言い続けたことを責めるべきではないだろうか。しかし現実は、単なるバラエティー番組での出来事であり、このように杓子定規な批判をすること自体が馬鹿馬鹿しいことだ。

 問題の番組を見た一視聴者として、全体的な感想を述べるとすれば、それは「韓国男児」チョン・ウソンは本当にかっこよかった、というものだ。俳優に対する評価は本来、そういうものであるべきだ。

東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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