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【コラム】「kimuchi」発言チョン・ウソンに対する弁護(上)

  自宅近くに「カルビ家」という炭火焼肉店がある。「カルビ」は「ばら肉」という意味の韓国語に由来する単語だが、この店のメニューを見て開いた口がふさがらなかった。

 それは「ビビンバ」という表記だった。本来の韓国語をカタカナで表記すれば「ピビンパプ」(プははっきり発音しない)となるが、最後の「プ」さえも抜け落ちている。「クッパ」(韓国語では「クッパプ」)もそうだ。「ネギムンチュ」の「ネギ」は分かったが、「ムンチュ」は何かと思いきや、韓国語で「ムチム」(和え物)を指すものだった。「カットゥギ」(大根のキムチ)は「カクテキ」になっている。「チャンジャ」という不思議なメニューもあったが、これは韓国でいう「チャンナンジョッ」の発音が難しいため、材料(タラの内臓)を表わす韓国語を日本風に表記したものだった。

 韓国では「すし」を「チョバプ」(酢飯の意)という。日本でも「ビビンパプ」を「混ぜご飯」のような日本語に置き換えればいいものを、あえて韓国語のまま、日本風の表記や発音をしている。これは他国の言語に対する侮辱ではないか。そう思うと怒りさえもこみ上げてくる。

 日本人はいつからこのようなことをしているのだろうか。親交がある在日韓国人ジャーナリストのキム・ヒャンチョン氏(『クーリエ・ジャポン』誌編集者)に聞いてみたところ、意外な答えが返ってきた。

 「子どものころ、両親が焼肉店を経営していた。われわれは“ビビンパプ”と呼んでいたが、メニューには“ビビンバ”と書いていた。日本人のお客さんは“パプ”という発音が苦手なため、日本人に対する配慮だったと思う。“クッパ”や“キムチ”(韓国語では『ム』をはっきり発音しない)も同じだ」とキムさんは話した。また、「ムンチュ」については「母は“ムチム”を“ムンチ”と呼んでいた。慶尚道の方言だと思う。これが変化したのではないか」と説明した。「カクテキ」もまた、韓国語の方言(「カッテギ」)に由来するのではないか、という説明だった。

 かつて、焼肉屋はほとんど在日韓国人が経営していた。このため、「ビビンバ」や「クッパ」は彼らが商売の過程で広めていったものと考えられる。「いくら難しくても、正しく表記すべきではないか」と問い詰めたいところだが、飲食店は語学学校ではないため無駄だ。

東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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