2009年8月13日19時0分
豪雨の犠牲になった広岡武治さんが運転していた軽トラック。妻の絹恵さんが見つけた=12日午後、兵庫県佐用町佐用、川田写す
10日午前3時前。病院から数百メートル離れた道路沿いの水路で、荷台部分から縦に落ち込んだ軽トラックを見つけた。水路脇の斜面をつたって下り、運転席部分に近づいた。「お父さん、お父さん」。座ったままの武治さんに何度も声をかけた。冷たくなった夫の唇は動いてくれなかった。
連れ添って26年。使命感の強い人だった。激しい雨の中、文句も言わずに職場へ向かった夫を誇りに思う。
「冷たかっただろうし、苦しかっただろうけど、私が見つけることができただけでも良かったかもしれない」。気丈に見えた絹恵さんの目に、うっすらと涙が浮かんだ。(川田惇史)