10代から80代の男女に「口内炎ができたことがあるか」と尋ねたら、ほとんどの人が経験者でした。塗り薬または飲み薬を使うと答えた人の中では、「効き目あり」「まあまあ効く」と答えたのは半数以下でした。
実はこの「薬が効かない」という感想の背景には、口内炎に対する誤解がありました。口内炎を徹底研究したところ、予防にも治療にも効果抜群の「1分でできる秘策」が明らかになったのです。
さらに「口内炎だと思っていたら『がん』だった」ということもあります。専門家によると、ここ30年で口腔がんの患者は2倍に増えており、ほとんどの人が「最初は口内炎だと思っていた」といいます。
口内炎の防ぎ方から治し方、それに「がん」との見分け方まで、つぶさにご紹介します。
「口内炎を公演内(こうえんないに発見!」
宮崎県宮崎市のAさん(78歳)は、40代からおよそ40年、ほぼ毎月口内炎に悩まされています。Aさんは、口内炎の原因や期間を手帳に記録していました。去年(2008年)の手帳によると、口内炎の回数は33回、日数は248日間でした。
この記録をもとに、番組では、原因を次の2つに大きく分けました。
- 原因が傷であるもの
例:「めざし(魚)で傷つけた」「頬(ほほ)をかんだ」など - 原因不明のもの
「傷の治し方のおさらい」
まずは以前のガッテンで紹介した「皮膚の傷の治し方」を参考に、傷が原因のものから対策を考えていきました。
ガッテン流・ちょっとした傷治療の鉄則
- まず水洗い
- 消毒はしない
※消毒液は細胞にもダメージを与えてしまいます。ただし、ひどい傷で内部にまで細菌が入っている場合は消毒が必要です。 - グチュグチュに保つ
※傷口のグチュグチュは浸出液。これが傷を早く治します。
ここから口内炎を考えると、ほうっておいてよいようにも思えます。たしかに口の中は傷が治りやすいのですが、その一方で、皮膚と大きく違って炎症を起こしやすい別の要因もあります。
口内炎に悩むAさんの口の中を綿棒でぬぐい、体温と同じ37℃で培養すると、たくさんの細菌が出現しました。これは、誰の口の中にもある「常在菌(じょうざいきん)」と呼ばれる細菌です。その数は個人差がありますが、数十億匹と言われています。
口の中にできた傷に細菌が繁殖すると炎症を起こし、口内炎になります。多くの場合は、だ液によって細菌が洗い流され、口内炎になる前に傷が治ります。しかし、だ液が減ると口内炎になりやすくなります。
「ツバが×(バツ)! だ液が消えだ!」
25人の大学生に協力してもらい、頭上で巨大な風船がふくらむ中、利き手とは逆の手で写経をしてもらいました。こんなストレスいっぱいの状況で、だ液の量を測ると3割も減少していました。
一方、被験者にカラオケで6時間歌い続けてもらい、舌の表面を観察すると、白くなっていました。これは細菌が繁殖していたためでした。
傷が原因の口内炎ができる仕組み
- 魚の骨などが刺さる、誤ってかむ、などして口の中に傷ができる。
- この時、だ液の分泌が低下していると、細菌が洗い流せず傷で細菌が繁殖。
- 炎症=口内炎になる。
原因不明の口内炎ができる仕組み
- 口の粘膜は絶えず新陳代謝で再生しています。
- 疲労やストレスで新陳代謝が低下すると、表面が荒れます。さらに悪化すると潰瘍(かいよう)になります。これはつまり、口の中に「胃潰瘍(いかいよう)」ができているようなものです。
- 潰瘍は内側からできた傷のようなものです。あとは外傷が原因の場合と同様、細菌が繁殖すれば炎症=口内炎になります。
※潰瘍の場合は、できたときにすでに痛みが伴う場合もあります。
「口内炎に効果ないねん?」
口内炎になった時に使う塗り薬は、どのような働きをしているのでしょうか?
街でインタビューすると、口内炎の塗り薬を使っているものの「効かない」という人が多くいました。口内炎に悩むAさんも病院で処方された口内炎の塗り薬を使っていましたが「効かない」という感想を抱いていました。
Aさんの薬は、口内炎の治療薬としては最も一般的なステロイド剤で、多くの病院で処方されています。そこで、この薬で細菌を退治できるか実験してみると、薬があっても細菌が繁殖することがわかりました。しかし実は、この薬の効果は、細菌を殺すことではないのです。
傷や潰瘍で細菌が繁殖すると、白血球など免疫細胞が戦いを始めます。この戦いで組織が破壊されることが炎症、すなわち痛みとなります。
ステロイド剤は、免疫細胞の働きを抑制し痛みを和らげます。つまり、原因をなくすのではなく、症状を緩和させる、対症療法です。そのため、使い方によっては長引くこともあります。
※薬の正しい使い方は後述します。
「ガッテンおすすめ、殺菌ブクブクうがい」
口内炎を根本から治すためには、口の中の細菌の繁殖を抑える必要があります。そのためには、殺菌成分入りのうがい薬や洗口液(せんこうえき)を使ったブクブクうがいが効果的です。実験によると、20秒のブクブクうがいを3回行った場合、口の中の細菌を10分の1程度に減らすことができました。しかも、その効果は3時間以上持続したのです。
実際、口内炎に悩むAさんにこの方法を試してもらったところ、口内炎ができても、すぐに治るようになりました。
うがい薬や洗口液は、殺菌成分入りのものなら、どれでも同等の効果があると考えられます。また、口の中に傷ができたとき、口内炎ができたと気づいたときなどにすれば、効果があると考えられます。Aさんの場合は、毎食後と寝る前の、1日合計4回してもらいました。
口内炎の塗り薬の種類と効果
口内炎の塗り薬には、大きく2種類あります。
※塗り薬の多くは軟膏タイプですが、貼るタイプ、スプレータイプも基本的には同様です。
[1] ステロイド系の塗り薬
免疫を抑制し、痛みを和らげる働きがあります。病院で処方される口内炎の塗り薬の大半がこれです。市販薬の一部にもあります。
口内炎が痛くて食事ができないような場合に、とりあえず痛みを抑えて、体力が低下することを防ぐために処方されます。細菌の繁殖を抑えることはできないので、まず殺菌成分入りのうがい薬や洗口液でうがいしてから使用するのがおすすめです。
[2] その他の殺菌・消炎成分入りの塗り薬
この種類の大半が市販薬です。殺菌効果は期待できますが、塗った場所だけの局所的な効果になりがちなので、やはり殺菌成分入りのうがい薬や洗口液でうがいしてから使用することをおすすめします。
口内炎の飲み薬とは? その効果とは?
口内炎の飲み薬は、大半がビタミンB2を中心としたビタミン製剤です。これは、ビタミンB2欠乏症で口内炎ができることが研究で知られているためです。よって「ビタミンB2を主としたビタミン不足で口内炎ができている人」には有効ですが、それ以外の理由で口内炎ができている人には有効ではありません。
専門家によると、患者の血液検査をすると、ビタミンB2不足が原因で口内炎になっている人は、10~20%程度とのことです。
うがい薬・洗口液(せんこうえき)を使う際のポイント
殺菌成分入りのうがい薬や洗口液でブクブクうがいをして細菌の繁殖を抑制することは、口内炎の予防にも治療にも有効です。うがいは、塗り薬の前に行うのがおすすめです。
ただし、傷がある場合、殺菌成分が細胞にダメージを与え、傷の修復を遅らせるので、うがい薬や洗口液でブクブクうがいした後に水でうがいすることをおすすめします。
「口内炎だと思っていたら ・ ・ ・」
漫談家のケーシー高峰さんは、2005年5月に舌がんと診断され、2度に渡る手術を受けました。その初期は口内炎のような症状で、白板症(はくばんしょう)という病変でした。執刀した医師は「口内炎だと思ってほうっておいたら『がん』だったという人も多い」と言います。
※注意:口内炎から「がん」に進行するわけではありません。前がん病変、あるいはがんの初期の状態を口内炎と間違える人が多いということです。
口腔がんとは
口腔がんに進行する病変には、おもに2つあります。
- 白板症(はくばんしょう)
口の中の粘膜が厚くなり、白く見える病変です。6~10%が「がん」に進行すると言われています。 - 紅板症(こうばんしょう)
口の中の粘膜が薄くなり、赤く見える病変です。50%が「がん」に進行すると言われています。
どちらも舌だけでなく、口の中の粘膜全てにできます。
1か月に1度は口の中をチェックしましょう。口内炎のような症状が2週間以上治らなければ口腔外科で診てもらうことをおすすめします。口腔がんは、早期発見すれば95%以上の確率で治ります。
まとめのガッテンタワー「間違いだらけ!? 口内炎対策」
- 薬を塗って治す → まずは殺菌ブクブクうがい
- 薬を飲んで治す → 飲み薬はビタミンB2不足の人だけ
- 治るまでほうっておく → 疑わしければ口腔外科へ!
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