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政治

こうして作ります「埋蔵金」−農水省補正予算

      補助金ばら撒きの新「政策」へ3,000億円で基金新設

成瀬裕史2009/08/03
■「予算の無駄」や「埋蔵金」はどこにあるのか?
 次期衆院選に向け、各党のマニフェストが出揃ったようだが、その中で、「財源論」が議論となっている。

 自民党は、民主党マニフェストの主要政策の財源を予算の無駄削減や「埋蔵金」で賄うとの主張に対し、「非現実的」と批判している。

 国民は、「政権選択選挙」と位置づけられる次期衆院選を前に、これまでになく各党のマニフェスト及びこれに関する議論に注目しているが、この判断の一助となるよう、現在、農水省の補正予算で行われている「埋蔵金秘蔵」の現場をご紹介したいと思う。

■補正予算は票田復活の「ばら撒き」か?
 平成21年度農林水産省補正予算は総額1兆302億円である。
 ・平成21年度農林水産関係補正予算の概要(農水省HP、pdfファイル)

 このうち、例えば一番最初に記載されている「農地集積加速化事業(新規) 2,979億円」を紐解いてみると、「農地の面的集積につながる貸出しを行った農地所有者へ交付金(最高15,000円/10a/年・最長5年間)」するとしている。

 10aとは約300坪で、田んぼ1枚分の面積に当たる。普通、これを貸すと年間数万円の賃貸収入が入るのだが、農水省は補助金により更に1万5千円を上乗せする、という。

 2年前の参院選で、大規模な農業経営を育成する現政策が「選別政策」と批判され、多くの農業票を失った自民党に配慮してか、「大規模な農業経営者」に農地を貸し出す「小規模農業者=農地の所有者」へも補助金を支払うこととした。

 これを「税金のばら撒き」と思わない人が、果たしているだろうか?

■2,979億円の「埋蔵金」秘蔵の現場
 さらに、この事業の「実施要綱」では、実施主体は農水省が公募から選定した団体とし、実施主体は国からの補助金により「基金」を設置し、その運用収入及び取崩しにより事業を実施するとされている。
 ・農地集積加速化事業実施要綱(農水省HP、pdfファイル)

 「国から団体」へ「補助金を交付」し「基金を造成」するという、「埋蔵金」づくりの典型例ではあるまいか?

 さらに、この事業の「公募要領」によると、基金の設置額として297,896,400千円(2,978億余円)とされ、また、応募団体の要件として、法人及び任意団体とし、公益法人は年間収入のうち国からの割合が3分の2以上は原則不可とされている。しかし、言い換えると、3分の2以下であれば、「公益法人=天下り先」でもいい、と言っているようなものである。
 ・農地集積加速化事業公募要領(農水省HP、pdfファイル)

 さらに加えて、審査は農水省内に設置する選定委員会で「非公開」で行われるという。ご丁寧に、委員はその職を退いた後も第3者に漏洩しないことの義務付けが謳われている。

 「埋蔵金秘蔵の現場は誰にも漏らさぬ」ということか…。

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[48674] 集積に反対する社民党支持者たち
名前:鈴木博
日時:2009/08/06 18:16
だいたい、一度、集積化した田んぼなどで、利用権設定のお金が出るからと言って、契約解除して、再度、利用権設定するのは、さほど多くはない。
というのも、平成16年度から始まっている、産地づくり助成金制度で、利用権設定した場合の助成金を設定した市町村も多い。実績はあるのだが、利用度が低く、さほど、集積は上がっていない。
だから、集積を進めるためにも、基金は必要と思う。
むしろ、社民党支持者たちが、しっかりとした小作契約結んでいるのに、小作人側の理由で、契約解除したくせに、地主側にみかじめ料を請求する者がいることが何よりの証左である。

また、情報漏洩を禁止する理由も明白である。
貸付を行う団体で有る以上、金融機関と同じように、個人情報が入ってくることが予想されるので、秘密漏洩を禁じるのは、当たり前である。
もっとも、個人情報を得た団体は、得たことによって、個人情報を財産として活用できるという考えであれば、秘密漏洩をしなくてもよいことにはなるかもしれないが。

一番の問題は、全国対応の組織でないと、この事業を実施することが不可能ということである。埋蔵金がどーのこーのよりも、この基金を実施できる団体というのは、かなり限定されてくるし、事務費を基金から使用できるとしていることから、事務費が高額にならないように監視することは必要だとは思う。

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[48601] 集積化事業の行く末
名前:伊吹春夫
日時:2009/08/04 12:01
成瀬裕史記者の引用した「四つのPDF」を読んで理解できる方はすばらしい。
農家向けのパンフレットも発行されています。
「農家の皆様へ」:
  http://www.maff.go.jp/j/kanbo/yosan/hosei_gaiyou/h_syunyu/pdf/n-ke-1.pdf
農地は、貸しても借りても「補助金」がもらえます。


 それでは既に生産調整に協力し、地域の「担い手」に農地を貸していた人はどうするのでしょう。
早速、「返して下さい。」となり、軌道に乗りつつあった農業生産法人や集落営農は混迷します。地主農家は「やっぱり早くから貸しては損だ。」となり、優良農地ほど「貸し渋り」が発生する。

 結果として、この事業は農地の集積を「進まない方向に誘導」することになり、基金は・・・。
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[48560] 眼から鱗が・・・
名前:風間勉
日時:2009/08/03 17:15
成瀬氏のご意見で、農水省追加予算のカラクリが良く分かりました。農業を大規模農業化するだけで、小規模農家にこれだけの税金が支払われるという。こうした金のバラマキで票を集める、正に代議士にとってこんな“美味しい”話は無いでしょう。こうした金が農協・その上部組織――一例を挙げるとホクレン――をバックに自民代議士が出るのは、美味しい蜜に集まる虫達と全く同じです。但し虫達には受粉という有益な仕事があります。そして政治家は、――いや政治屋と呼びましょう――自分の懐を肥やすためだけなのです。農業行政の「カラクリ」が、成瀬氏の一文で良く理解できました。
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8月3日〜8月8日 

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