民主党が圧勝しない理由 輝きを保つには…
8月9日18時10分配信 産経新聞
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有権者にマニフェストの説明を行う民主党の鳩山由紀夫代表。政権を獲得した場合は「村山談話」と「河野談話」を継承するのか=3日午後、神戸市中央区(彦野公太朗撮影)(写真:産経新聞) |
本当に民主党の勢いは止まったのか? 答えはまだ出ていない。自民党に対する嫌悪感は相変わらず強いようで、各党の今後の情勢調査や、マスコミの世論調査を積み重ねていかないと実像は見えない。産経新聞でも調査を重ね、読者に情報を提供していきたい。
気になるのは、民主党の勢いに陰りがあるかないかではなく「民主党の勢いに陰りが生じた理由」として語られる、ある「現実」のことだ。
ある人が指摘した。
「別に民主党政権になっても、ウチは何もいいことがないし」
民主党が掲げる最大政策の子育て支援策。「でもウチは子供が大きくなってしまって関係ない」
次なる大きな公約の高速道路料金の無料化。「ウチには車がないからねえ」
そして、当然農家ではないこの人は、農業者戸別所得補償も関係がない。
そこでこの人は「ウチには何もいいことがない」と言い始めたというわけだ。
これは、民主党の支持拡大策が、あまりに有権者の一部にピンポイントで光を当てているせいかもしれない。
個別政策は、瞬間は光を放つが広がりがないため、時間が経過すると色あせるのも早い。飽きられるのも早いという分析がある。
昔から語られてきたが、少子化対策と高齢者対策の違いがある。
高齢者はいつまでも高齢者であり、高齢者である期間が長い。高齢者の世話をする側にとっても長い年月だ。必然的に関心のある有権者は多く、主要な政治テーマになる。
ところが、少子化や子育て問題は「のど元過ぎれば」になりやすい。
子供が生まれたばかりの親と、10歳の子供を抱えた親では、わずか10年の差だが、かなり社会的なニーズの違いが大きい。
保育園問題がそうだ。保育園を卒業するまでは、保育園の「質と量」の問題は、きわめて深刻な問題として語られるが、子供がそれ以上に大きくなってしまうと、保育園がいっぱいで入れないという問題への関心が急速に薄れていくという傾向があるからだ。
少子化対策は、日本社会の将来像という重いテーマを背負っているが、時間が最大の壁になるという難しい側面を持つ。
消費税問題でもこうした傾向が当てはまる。年金問題で消費税を財源とすることは理解が得られやすいが、少子化対策や教育問題で消費税増税を語りにくいのもそのためだろう。
こうした弊害を除去して、民主党が世論の支持という輝きを保つには、「夢を語る」しかない。
「いくらあげます」ではなく、こういう社会にしたいという夢だ。
まだ投票日まで3週間もある。
自民党攻撃ではなく、戸別所得補償でもなく、大きな夢を語ることこそが、後半の選挙戦を乗り切るのに必要なことになるだろう。(金子聡)
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最終更新:8月9日18時10分