衆院選に向けて、各政党がマニフェスト(政権公約)に盛り込んでいる地方分権の政策に関心が高まっている。全国知事会による点数評価に続いて、橋下徹大阪府知事らの「首長連合」、全国18の政令指定都市市長でつくる指定都市市長会、全国市長会が相次いで評価結果を発表した。
知事会と同じように点数評価をしたのは指定都市市長会だ。民主党がトップの54・5点で、公明党50・2点、自民党49・5点の順だった。知事会の採点が公明、自民、民主の順番だったのとは異なる結果となった。
首長連合は、自民、民主の二大政党の政策を霞が関の解体、ガバナンス(統治)など四つの観点から評価したうえで、民主党の分権政策の支持を打ち出した。一方、全国市長会は自民、公明、民主3党の公約を検証し、自民、公明の「国の出先機関廃止や税源移譲」、民主の「基礎自治体の重視」などをそれぞれ評価した。ただ、「優劣は単純に付けられない」として点数化はしなかった。
結果が分かれたのは、評価する側のポイントの置き方に違いがあるからだ。指定都市市長会の採点は、民主が分権の担い手として政令市を重視し、新たな大都市制度の検討を視野に入れた姿勢を評価し、自民、公明に差をつけた。
首長連合は、自民が道州制で早期基本法成立などを明示したことを「画期的」とする一方、民主が新設する「国家戦略局」に、地方の代表を起用する方針を示した点を「特筆に値する」とした。そのうえで、新たな統治の仕組みや改革を提唱する民主党に軍配を上げた。
これらの評価により、各党の分権政策の考え方が明らかになり、それぞれの特色や他党との違いが鮮明になったといえよう。民主党はマニフェストの確定版で、知事会などが強く求める「国と地方の協議機関」を「法律に基づいて設置する」と明記した。自民、公明両党は与党「共通公約」の中に、道州制基本法の早期制定などを入れた。各党が地方分権で政策を競い合うのは大歓迎だ。さらに政策を具体化し、数値目標や工程なども示してマニフェストの精度を高めてもらいたい。
地方にとっては、国の形を変えるチャンスだ。分権への道筋を確かなものにするためにも、党だけでなく、候補者一人一人の地方分権に対する主張に注目する必要がある。各政党の分権実現への本気度を、しっかり見極めなければならない。
政府は、消費者行政を一元的に担う消費者庁を9月1日に発足させるとともに、初代長官に内田俊一元内閣府事務次官を起用する人事を閣議決定した。消費者行政を監視する有識者による機関「消費者委員会」も同時に設立する。
今年5月に消費者庁設置関連法が全会一致で成立。政府は当初、10月ごろの消費者庁発足を目指して準備を進めていたが、麻生太郎首相の強い意向で前倒しされた。一方、民主党などは官僚OBを初代長官に充てる人事案に反発、政府に見直しと発足延期を申し入れていた。
正式決定を受け、民主党の岡田克也幹事長は「選挙結果によっては、政府の拙速な進め方をもう一度やり直すことは十分ある」と述べた。衆院選で政権を獲得すれば、人事や運営方法を見直す考えを示唆したといえ、9月発足に火種を抱えた形だ。
偽装表示や製品事故、悪徳商法など消費者を取り巻くトラブル解決の「司令塔」として消費者庁へ寄せる期待は大きい。関係する約30の法令を各省庁から移管・共管して問題に対処。規制法制が整っていない「すき間事案」では消費者庁自ら業者を指導したり、商品の回収命令を出すこともできる。
だが、課題も抱える。政府は消費者の直接の相談窓口となる消費生活センターを人口5万人以上の自治体(約560)に最低1カ所設置したい考えだが、まだ約350カ所にとどまっている。センターの新設・拡充や相談員の確保など相談窓口の機能強化が急務といえよう。
全国の消費生活センターや省庁からの情報を収集、分析し、縦割り行政を打破して迅速に対応できるかどうかも問われる。生産者重視から消費者に軸足を置いた行政の転換が実感できるような組織になってほしい。
(2009年8月13日掲載)